時事解説「ディストピア」

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ザ・コーブでは何が訴えられているのか?その8

2015-02-24 00:31:06 | ザ・コーブ
今回の記事でとりあえず最後にしたいが、
『ザ・コーブ』に関して言えば、大変厳しい検閲がされていることが目につく。


例えば、映画ではイルカ肉がクジラ肉と表記して売られていること、
イルカ肉の中に含まれている水銀の濃度が濃いことが指摘されているが、
これはエンディングのほうで「諸説あります」との但し書きがされている。

他にも、特典には保守派で有名な御用学者のコメントがあって、
映画の内容を否定するような発言が多くされている。


これは『アンネの日記』の巻末に
ホロコースト否定論が記述されているようなものだ。



このように、映画の内容を逐一否定するコメントを付記しない限り、
DVDの発売すら危うかったという事情は、大いに問題があるのではないだろうか。


大体、この映画自体、ほとんどの映画館が「自粛」して
事実上、公開が禁じられたようなものであり、彼ら活動家が述べるように
国民がイルカビジネスの問題点や負の歴史を知る機会は著しく制限されている。


『ザ・コーブ』は単に生物保護運動の知識だけでなく、
 日本の学者や記者、役人が自発的にプロパガンダに協力していること、
 発売者側が相当、空気を読まない限り販売することすら出来ないことを
 露わにした、非常に重大な問題提起がされている作品なのである。


私は真の独裁とは国民の協力があって初めて成り立つものであり、
その独裁の度合いは途上国のそれよりも先進国のそれのほうが高いと思っている。


この映画にしても、反日映画とレッテルを貼って無視する視聴者が大半ではないだろうか?
そういうレビューが出回ることで、問題の本質がますます見えてこなくなってしまう。


これは捕鯨やイルカ漁に限らず、沖縄基地問題や歴史問題、
その他諸々の時事問題に通じることだ。

右翼を中心とした大衆が情報規制に自分から進んで参加している。
関東大震災の際には、有志が自警団を結成して、朝鮮人を殺しまわったが、
それと同じことが、今の日本では起きている。


つまり、真の独裁は民主的に行われる。


民主主義がー民主化がーと小うるさい連中もいるが、本当の問題は
真の民主主義は各人が相当な努力をして確かな知識と判断力をつけることで初めて成立する
という命題をすっ飛ばして話を進めることではないだろうか?


現代民主主義が真の民主主義とは程遠いことは感覚的にわかるはずだ。

この現代民主主義社会では大衆がプロパガンダを再生産することで、
権力者と結託しながら自らの手で自らの足を縛るような真似をする。

監視されるのではなく、監視しあう社会になっている。

都合の悪い意見や情報は禁止されることも時にあるが、それよりも重要なのは
全員によって無視と非難を行うことでそれら情報を歪め、無力化することにある。


『ザ・コーブ』を巡る言論状況をよく見てほしい。
 水族館ビジネスの問題を指摘した人間は何人いるだろうか?
 捕獲数が文字通りケタ違いに増えていることを指摘した人間は?
 政府が小国を買収している実態は?

 これら問題をガン無視して「日本人にむけた環境テロの文化破壊行動」という
 お決まりの言説がゲラ刷りされて目に入っているのが現状ではないだろうか?

『ザ・コーブ』は、そういう意味でも視聴をぜひ勧めたい映画だ。
 日本のメディアコントロールに関心がある方はぜひ観てほしい。

ザ・コーブでは何が訴えられているのか?その7

2015-02-24 00:20:49 | ザ・コーブ
鯨類保護運動が水族館ビジネスへの反対運動であることが各識者からされていない。

以下の英文は『ザ・コーブ』を撮影した市民団体のホームページに掲載されたもので、
閲覧者に向けてのテイクアクション(各々ができる抵抗運動)について述べたものだが、
そこにはイルカショーのチケットを買わないようにとの呼びかけがされている。


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Take the Pledge Not to Buy a Ticket to a Dolphin Show
イルカショーのチケットを買わないよう誓ってください。

Dolphins have evolved over millions of years,
イルカは数100万年以上をかけて進化してきました。
adapting perfectly to life in the ocean.
海の生活に完全に適合してきたのです。
They are intelligent, social and self-aware,
イルカは賢く、社会的で自己認識ができます、
exhibiting evidence of a highly developed emotional sense.
高度に発展した感情があることを示す証拠があります。
Here are just a few of the issues with captivity:
これこそが監禁で問題が起きる原因になっているのです。

Captures of dolphins are traumatic and stressful
イルカを捕獲することでイルカはトラウマを植え付けられ、ストレスを感じ、
and can result in injury and death of dolphins.
結果として負傷したり死亡したりします。

The number of dolphins that die during capture operations
捕獲の最中あるいはその後まもなく死亡するイルカの数を
or shortly thereafter are never revealed in dolphinariums or
イルカ水族館やイルカと遊泳する企画を立てる者たちが公表することは決してありません。
swim-with-dolphins programs. Some facilities even claim their dolphins were
施設によっては自分たちはイルカを海から救助したのであり、
"rescued" from the ocean and cannot be released. This claim is almost invariably false.
現状では解放できないのだと主張する所さえあります。この主張はほぼいつも間違いです。

Training of dolphins is often deliberately misrepresented
しばしば、イルカの調教に関して間違った説明が、
by the captive dolphin industry to make it look
イルカを捕獲する産業によって故意に行われています。
as if dolphins perform because they like it. This isn't the case.
まるでイルカが演技が好きであるかのように説明しますが、それは間違いです。
They are performing because they have been deprived of food.
イルカが演技をするのは食べ物を取り上げられているからです。

Most captive dolphins are confined in minuscule tanks
大抵、捕らわれたイルカは小さな水槽の中に閉じ込められています。
containing chemically treated artificial seawater.
(その水槽は化学的に処理された人工の海水が注水されています)

Dolphins in a tank are severely restricted in using their highly developed sonar,
水槽の中にいるイルカは高度に発展したソナーを使う機会がかなり限定されていますが、
which is one of the most damaging aspects of captivity.
それはイルカを閉じ込めることでイルカにダメージを与える最も大きな一因になっています。

It is much like forcing a person to live in a hall of mirrors
それは、あたかも人間を無理やり鏡だらけのホールに閉じ込めて
for the rest of their life
残りの人生を生活させるようなものです。

(http://dolphinproject.org/take-action/dolphins-in-captivity)

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いつものように直訳ではなく、意訳だが、大体の意味は合っていると思う。



水族館ビジネスというのは、絶対に日本の文化ではないはずだ。

にも関わらず、農水省も生物学者もこの件については一切触れずに
日本人に対する環境テロリストの凶行だと説明する。


それは鯨類研究所が農水省の天下り先だとか、
研究費のほとんどが企業や政府からの援助金で賄われているとか、
そういうレベルを超えた一種のパラノイアを感じる。


もちろん、完全に自分の保身や経済的利益を考えて動いている人間もいるだろうが、
日本人がおかしな外国人に攻撃されていると思う人間も相当数いるのではないだろうか?


被害妄想に囚われた学者や記者がそれなりにいるような気がするのである。


そういう今だからこそ、彼らのホームページを見て、
とりあえず、どういう動機で活動しているのかを理解することが求められている。
そう私は思うのである。