読んで、観て、呑む。 ~閑古堂雑記~

宮崎の某書店に勤める閑古堂が、本と雑誌、映画やドキュメンタリー、お酒の話などを、つらつらと綴ってまいります。

2022年7月8日に起こった、恐ろしく痛ましい出来事について。

2022-07-08 20:20:00 | よもやまのお噂
2022年7月8日。
きょうの日に起こった恐ろしく痛ましい出来事を、的確にどうこう論じるようなことばが見つかりません。

わたし自身は、安倍晋三さんとは多くの点で考え方は異なっておりましたが、だからといってその人格や存在を否定するようなことはあってはならない、と考えておりました。ましてや、その命を問答無用で奪うような卑劣で残酷な行為は、絶対に許されてはならないでしょう。
いまはただ、安倍さんのご冥福を心よりお祈り申し上げたいと思います・・・。

そして、この出来事がさらなる恐ろしいことに繋がる「パンドラの箱」とならないよう、心から願いたいと思います。この2年で国中がガタガタとなってしまった今の日本には、そういう恐ろしいことに繋がるような「火種」がたくさんくすぶっているように、思えてなりませんので・・・。

いま一番大事にしなければならないことは、ただひとつ。

「なにものにも煽られることなく、気持ちを落ち着けて、地に足をつけて生きること」

つくづく、そう思います。

かつて作った個人雑誌を久しぶりに見て「原点に戻ってみよう」と思った話

2020-09-02 21:22:00 | よもやまのお噂
探しものがあったのでクローゼットを引っ掻き回していると、懐かしさとともに、ちょっと恥ずかしい感じもする物件が出てきました。
いまから十数年前に作っていた個人雑誌、であります。ああそういえば、こういうモノ好きなことやってたなあ・・・という感慨とともに、読み返してみました。


これらの個人雑誌は、本と出版のことをメインにしつつ、広い意味での文化とその周辺についてあれこれ語ろうという目的で作っていたものでした。
自分が読んだ本の中からオススメしたいものを紹介したり、ひとつのテーマに沿っていろいろな本を取り上げる特集を組んだりしたほか、地元宮崎で毎年開催されている「宮崎映画祭」のレポートを書いたりもしました。また、地元サッカーチームの栄枯盛衰を綴った連載や、ハワイに1年間ステイした経験談を語った連載も載せました。できあがると、それを友人知人に配ったりしていたものです。
書く道具こそパソコンでしたが、それをプリントアウトしたやつをもとにして誌面を構成し、「版下」ができあがるとそれをコピーして、コピーしたものをページ順に積み重ねてホチキスで綴じ、表紙と裏表紙をくっつけて完成させる・・・という、まことに原始的かつ稚拙な作り方でありました。そりゃもう「ZINE」などと呼ぶのも憚られるようなシロモノで(笑)。コンスタントに作って出すつもりでしたが、稚拙ながらも手間だけはやたらかかったこともあり、1年に1冊ずつ、全部で4号出しただけで終わってしまいました。
ですが、親しい友人や知人から寄稿してもらったりもして、それらを(稚拙なカタチとはいえ)雑誌という形でまとめるという作業は実に楽しいものでした。当時のことを思い返しても、一冊作り上げるごとに大きな充実感を覚えていたものです(当時、寄稿してくださった方々には、この場をお借りしてあらためて感謝の意を表したいと思います)。

かなり久しぶりにこれらの個人雑誌を読み返して思ったのは・・・自分で言うのもなんなのですが、
「この頃のオレ、いまのオレよりずっと面白い文章書いてたじゃん」
ということでありました。
個人雑誌を作っていた当時のわたしは、思いのほか自由に、のびのびと文章を書いているように見えました。不特定多数に対してではなく、ごくごく限られた方々に向けて出していたという気易さもあってか、けっこう辛口の物言いや皮肉を飛ばしていたりします(とはいえ、現在の視点でそういう部分を見ると、オノレの独断と偏見ぶりに冷や汗が出る思いもするのですが)。
それ以上に、取り上げる題材によって語り口や書き方に変化をつけたりしているところに、乏しいながらも自分なりに面白く読んでもらうための工夫というものをしていたなあ、という感じがします。ひとつの題材についてじっくりと熱をこめて語る、力の入った長めの文章もあれば、気楽に読んでもらうための短めのコラム記事があったり。
中には、自分とは別の架空の人物を想定し、その人物の語り口を借りて本の紹介をする、などという「奇策」を弄したりもしています(というわけで、以下の2枚の画像にある人物はいずれも実在せず、書いたのはわたし自身であります)。



まあ、こういう「奇策」が功を奏していたかどうかとなると微妙ではございますが・・・少なくとも自分なりの「遊びごころ」というものだけは感じられるように思いました。
「遊びごころ」といえば、これら個人雑誌には身近な人をネタにした冗談記事もあれば、お遊びで入れた「広告」が随所にあったりもいたします。それら「広告」の多くは架空の出版物のもので、例えばこんな感じ(一部画像を加工)。


ちなみに、上に掲げたオピニオン誌「精論」(もし似たような雑誌があったとしても、それは単なる偶然にすぎませぬ・・・笑)の広告は、個人的にはわりとお気に入りだったりもするのですが・・・こうしてあらためて見ると、時代の流れというものをいろいろと感じざるを得ませんな(苦笑)。

ひるがえって、いまのわたしが書くもの(とりわけ、当ブログにおける文章)を見ると、どうものびのびとした遊びごころが欠けていて、自分でも一本調子だなあと思うような書き方のものが多くなっている感じがいたします。
限られた人たちしか見ない個人雑誌とは違い、不特定多数の人たちから見られる可能性がある、このようなブログという場においては、良くも悪くも書き方に気を遣わざるを得ないということが、ひとつの理由でしょう。ですが、それ以上に「ちゃんとした文章を書かなくっちゃ」と思うあまりに、書くときに必要以上に力が入りすぎて文章が長めなものとなったり、語り口も一本調子なものになってしまっているように思えるのです。
もちろん、不特定多数に向けて発信する以上、行き過ぎが生じないように書き方に気を遣うのは当然のことでしょう。また、力の入った長めのレビューを熱をこめて書くことも大事だとは思います。ですが、あまり肩に力を入れて書こうとすることで書くことを楽しめなくなってしまい、ヘタをすると書くことが億劫に感じられてしまうようになるというのも、また事実なのであります。当ブログの更新ペースが、開設当初に比べるとかなり減ってしまっている原因は、そういうところにもあるように思えるのです。

2013年の1月に当ブログを開設したときの最初の記事で、わたしは当ブログの基本コンセプトを「読んでくださる皆さまに、いろんなことをシェアできるようなブログ」とした上で、こんなことを申し上げています。

時には重い話題を取り上げることがあっても、全体としては気軽に楽しく読んでいただけるような、雑誌のようなブログにしていきたい」

これを記したとき、わたしの念頭にあったのが、ほかならぬかつての個人雑誌のことでした。そう、当ブログ自体が、かつてやっていた個人雑誌の延長線上にあった、というわけなのです。
されば、書物や出版に関する記事をメインに据えるという方向性は堅持しつつも、もっと自分の多様な関心事を盛り込んでいくようにしてもいいではないか。力の入った長めのレビューを時々は書きながらも、気楽に書けてサッと読んでいただけるような短めの記事もちょこちょこと書きようにしてもいいではないか。そして、不特定多数に向けての発信ということをわきまえつつ、ときには毒やお遊びを盛りこむことがあってもいいのではないか・・・。
というわけで、かつて個人雑誌をつくっていた頃の原点に戻って、あまり肩に力を入れすぎずに、書くことを楽しみながらのびのびとブログをやっていくことにしたいと思います。・・・てなことを申し上げているこの文章じたい、やはりどこか力が入り気味なのは否めないのですが(苦笑)。

でも、気が向いたらまたいつか、手作りの個人雑誌のほうもつくってみたいなあ・・・。

大地震に見舞われた同じ九州の仲間である熊本や大分を、自分のできることで支援したい

2016-04-17 11:18:24 | よもやまのお噂
4月14日の夜9時半前。
自宅で夕食を食べていたとき、突然スマートフォンがけたたましく鳴り出しました。気持ちをざわつかせるような甲高いブザー音。九州で強い地震が発生したことを知らせる警報でした。
そのすぐあとに、自宅であるアパートがグラグラと揺れ始めました。宮崎市では長らく感じることのなかった大きな揺れ。気持ちは動揺しました。
揺れが収まったあと、NHKのニュースが伝えていた地震の情報に目と耳を疑いました。
「熊本で震度7」
一瞬、伝えられていることの意味を理解しかね、混乱しました。えっ!それってどういうこと?一体何が起こってるの?
自分の住んでいる宮崎の隣である、同じ九州の熊本でそんな大地震が起きたということを、容易に信じることができませんでした。宮崎市での震度は3でしたが、熊本に近い県の山間部にある椎葉村では震度5弱を観測したとのことで、それにも驚かされました。
その夜のうちにテレビのニュースでは、熊本における被害の状況を断片的に伝えはじめました。震度7を観測した益城町では住宅が倒壊し、火災も発生していました。また、九州新幹線は脱線し、車両にズレが生じていました。
余震が幾度か続けて起こりました。就寝しようとした0時過ぎにも大きめの揺れが。新たな揺れへの不安と、熊本がどうなっているのかという心配から容易に眠りにつくことができず、横になってからも枕元のラジオから伝えられる地震関連のニュースにずっと耳を傾け続けました。

翌日。熊本における被害の実態が明らかになってきました。益城町を中心に、倒壊した家屋の下敷きになって亡くなった方がおられました。熊本城の石垣や瓦は崩れ、道路にもひび割れが。これは大変なことになったと、胸の痛む思いがいたしました。
その夜。眠りについてしばらくたっていた未明の1時半ごろに、またもスマホの地震警報がけたたましく鳴り出しました。そのすぐあとに大きな揺れが。熊本で震度6強を観測し、のちにこちらが「本震」だと認定されることになるマグニチュード7.3の大地震でした。
真夜中に襲ってきた地震に気持ちは大きく動揺し、またも眠れない夜を過ごすことになりました。

そして朝。ニュースでは、さらに信じがたい被害の実態が報じられていました。
益城町や熊本市では、さらに多くの建物が倒壊。南阿蘇村では大規模な土砂崩れが発生してアパートが倒壊し、阿蘇大橋も崩落していました。加えて、大分県を震源とする地震も発生して、別府市や由布市でも大きな揺れがあった、と。毎年出かけている大好きな場所である別府がどうなっているのかも、すごく気掛かりになりました。
余震も異常なほどに頻発し続けました。宮崎県でも、高千穂町や美郷町、椎葉村といった山間部の町村で、県内では初めてとなった震度5強を観測し、重軽傷を負った方がおられました。
このブログを綴っている4月17日現在、一連の地震で亡くなった方が41人。そして熊本と大分を中心に19万人近い方々が、不自由で不安な避難生活を余儀なくされておられます。本当にひどいことになってしまったと、胸が締め付けられる思いがいたします。
亡くなられた方々のご冥福と、そのご家族にお悔やみを申し上げます。そして、現在避難生活を強いられている方々が、一日も早く元の暮らしに戻ることができるよう、強く願っております。

熊本地震の甚大な被害の実態を知ってのショックに、宮崎市をも襲った深夜の揺れに直面しての寝不足が重なり、昨日(16日)のわたしは精神的な心労で神経が参ってしまい、気持ちは安定せず塞ぎがちでした。
大きな被害があったわけでもない宮崎市に住むわたしですらそうなのですから、甚大な被害に直面した熊本や、大きな揺れに襲われた大分の方々のつらさはどれほど大きなものなのか。そして、5年前の東日本大震災とそれに続く余震にさらされ続けた東北の方々の心痛がどれほど大きかったのか。想像せずにはいられません。
ここでちょっと、美味しいものを食べて気分を変えなければと、昨日はお昼に仕事を終えたあと帰りがけにお寿司を買い(とはいっても、スーパーのパック入りのものでしたが)、昼食かたがた明るいうちから一杯飲みました。


飲んだのはお寿司といっしょに買ってきた熊本県人吉市の米焼酎「白岳」。そう、本当にささやかではありますが、熊本への応援の意味を込めたつもりです。

いま、九州が大きな試練にさらされています。ここは九州人が一体となって、仲間である熊本(さらに、やはり地震に見舞われた大分)を、力を合わせて支えなければ、と強く思います。
すでに各自治体をはじめ、日本赤十字社や共同募金会などによる義援金の受け付けも始まりました。物資やボランティアの受け付けも、地震が落ち着いた段階から順次始まっていくことでしょう。自分のできることで、可能な限りの協力と支援をさせていただきたいと考えております。

宮崎県によるお知らせ「県民の皆様からの被災者支援について(義援金・救援物資・ボランティア等)」
http://www.pref.miyazaki.lg.jp/kiki-kikikanri/kurashi/bosai/20160416191744.html
(下のほうには義援金や、社会福祉協議会によるボランティア関連のリンク集もあります)

全国共同募金会「平成28年熊本地震 災害義援金の募集について」
http://www.akaihane.or.jp/topics/detail/id/399/


日本赤十字社「平成28年熊本地震災害義援金」
http://www.jrc.or.jp/contribute/help/28/


また、多くの方々が困難に直面している中で、悪質なデマを流したり拡散したりするような手合いがまたぞろ出てきております。こんな連中は一切相手にせず、しっかりした信頼できる情報の発信やシェアをしていだだくことを願います。あと、余計なことでしかない政治的主張(左右問わず)も控えていただけたらと思います。

熊本はほんの一時期ですが、住んでいたことのある場所でもあります。それだけに少しでもお役に立てることで、熊本の応援や支援をしたいという気持ちが強くあります。
これからは、熊本の産品をいろいろと買って、食べて、飲んでいこうと思っております。そして、秋に予定していた東京行きを変更して、熊本を訪ねることに決めました。かなり久しぶりに熊本へ行くことができる日を、今から待ち遠しく思っております。
そのときに、熊本がいくらかでも、地震から立ち直っていることを、ただただ願うばかりです。

仕切り直して、ブログ再開いたします。

2015-10-14 13:48:02 | よもやまのお噂
しばらく前、ツイッターにてシェアされていた一つの記事がありました。小野美由紀さんというコラムニストがお書きになっているブログの中から紹介されていたものでした。
「病んでないとモノなんか書けないというのは嘘だし、病んでるだけではモノは書けない」と題されたそのブログ記事、読んでみると実に頷けるものがありました。とりわけ強く頷けたのは、以下のくだりでした。


「個人的な経験から言うと、これはもう、病んでいない時の方が確実に文章は書ける。
モノを書くという行為は半分以上が技術だ。配管工事とか、プログラミングと同じだ。
病んでる配管工が上手にペンチを使えるとも思えないし、プログラマが病んでたら頭がぼうっとして正確にプログラムを書けないだろう。
だから、モノを書いているときはできるだけ心が安定しているほうがいい。気分が良く、朗らかなときのほうが、あきらかに筆が進む」



ああ、確かにその通りだよなあ。ツイッターやフェイスブックにおける短いつぶやきくらいのことならともかく、しっかりとまとまった長めの文章を書くということは一つの技術だし、心身が安定していなければ書くことなんてできないものなんだよなあ・・・。
小野さんのブログ記事を読んでそのように思ったわたくし自身、ここしばらくは当ブログに記事を書くことがままならない日々が続いておりました。・・・実のところ、このブログにログインしたのも、けっこう久しぶりのことであります。
先月(9月)の後半から今月にかけては公私ともに忙しく、心身ともに余裕がなかった上、いくつかの事情で気持ちも浮わついたりしていて、なかなかまとまった文章を書こうという気になれませんでした。
書きたいこと、書かねばならないと思っていたことはたくさんありました。読んだ本の紹介。先月開催された宮崎映画祭の観覧記。図書館シンポジウムのご報告の続き。旅の記録・・・。
書こうとしてタイトルをつけ、出だしの部分を書くには書くのですが、そこから先が一向に進みません。そうやって出だしの部分だけ書いたまま保存した下書きがいくつか溜まっていて、早いとこなんとかしなければ・・・と気ばかり焦っているというありさまがずっと続いていたのです。

今週に入り、気持ちに余裕が出てきたあたりで、ちょっと考えました。
わたくしにとってこのブログは、やはり発信手段として大きな位置を占めている大切なものです。とはいえ、ブログを書くこと自体が本業というわけではございませんし、時間的な余裕がたっぷりあるというわけでもありません。
であれば、ことさら「書かなければならない」などという不必要な義務感で書くことは、重荷にしかならないのではないのか。自分がその時々に書きたいと思えるようなことを、もっと気楽に書くようにすればいいのではないか。しょせんは、自分が好きで始めた個人ブログに過ぎないのだから。
そのような考えに至ったわたくしは、書きかけのまま下書きに保存していた記事を、続きものも含めてすべてリセットし、新たな気持ちでブログを再開することにいたしました。続きものとして書いた記事の続きを期待しておられた皆さま(どれだけおられるのかはわからないのですが・・・)には誠に申し訳なく思います。
今後はなるべくコンスタントに記事をアップできるよう、自分にとって無理のないペースの中で好きなようにやっていこうと思っております。

ほとんど開店休業状態だったといってもいいこんなブログにも、訪問してくださる方が一定数おられたということはしみじみ嬉しいですし、大いに励みにもなりました。本当にありがとうございます。
当ブログにお付き合いいただいている皆さま、ブログが途切れっぱなしだったことをあらためてお詫び申し上げます。そして、今後ともお付き合いのほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。

23年ぶりに観たアニメ『笑ゥせぇるすまん』の面白さに「ドーン!!」とシビれる

2015-05-23 20:56:38 | よもやまのお噂
いや~、超懐かしかったわ~~!

昨夜(22日)、TBS系で放送されていたテレビ番組『中居正広の金曜日のスマたちへ』スペシャル。普段はまず観ることはない番組なのですが、昨夜はぜひ観ておきたい企画が2つあったこともあり、チャンネルを合わせておりました。
1つは、大橋巨泉さんが司会を務めていた『クイズダービー』の「完全復活版」。かつてと同じようにように巨泉さんが司会進行を務めたのはもちろん、解答者も「三択の女王」こと竹下景子さんや、やはり名物レギュラーだった北野大さんと井森美幸さんが登場(ただし、亡きはらたいらさんが座っていた3枠には、同じく漫画家であるやくみつるさんが起用されていました)。BGMやスタジオセット、30分という放送時間など、当時の番組フォーマットを極力忠実に再現した、まさしく「完全復活版」でありました。観ていて、土曜夜7時半のワクワク感が蘇ってくるような懐かしさを覚えました。
この『クイズダービー』の「完全復活」、巨泉さんが4度目となるガンの手術を受ける直前の「覚悟の収録」という触れ込みでありました。いろいろと毀誉褒貶のあるお方ではありますが、『クイズダービー』や『世界まるごとHOWマッチ』など、わたくしも夢中で観ていた数々の名番組を送り出してこられた巨泉さんは、テレビマンとしては大いに評価に値するお方なのではないか、と今でも思うのです。とはいえ、昨夜の放送で見た巨泉さんは、明らかにげっそりと痩せてはいたのですが••••••。
何はともあれ、手術が無事に成功することを願うばかりであります。

『クイズダービー』の完全復活も良かったのですが、それに続くもう1つの企画はさらに嬉しいものでした。藤子不二雄Ⓐさん原作のアニメ『笑ゥせぇるすまん』(原作の漫画は現在も、中公文庫コミック版の全5巻が発売中)が、23年ぶりにゴールデンタイムで再放送されたのです。
かつて、やはり大橋巨泉さんをはじめとする「巨泉ファミリー」が総出演していたバラエティ番組『ギミア・ぶれいく』の1コーナーとして、1989年から1992年にかけて放送されていた『笑ゥせぇるすまん』。わたくしも大好きだったアニメで、毎週楽しみに視聴しておりました。それだけに、 “笑ゥせぇるすまん” こと喪黒福造とのゴールデン枠での再会は、まことに嬉しい限りでした。
ちなみに、喪黒福造のモデルとなったのは、他ならぬ巨泉さん。『金スマ』でも、古くからの友人でもある巨泉さんをモデルに喪黒のキャラクターが確立していった過程を、藤子Ⓐさんが自筆の絵とともにお話になっていました。

再放送されたのは「シルバーバンク」というエピソードでした。
息子を映したホームビデオ撮影を趣味にしているサラリーマン。テレビで知った「おじいちゃんと子どもとの触れ合いを撮ったビデオコンテスト」に応募したいと思っていた彼は、喪黒福造に一人のおじいちゃんを紹介される。共に撮影を繰り返すうち、すっかり打ち解けあっていく息子とおじいちゃん。満足するサラリーマンだったが、再び会った喪黒に「あのおじいちゃんは結局は他人、あまり深入りはしないよう」忠告を受ける。しかし、息子がおじいちゃんと離れたがらない、ということを理由に、ずるずると関係が続く中、おじいちゃんの態度は馴れ馴れしいものへとエスカレートしていく。そしてついには••••••。

そうそう!これこれ!このブラックな展開と結末に「ドーン!!」とシビれてたんだよなあ。いやー、久しぶりに観ても充分面白く感じられました。
単にブラックユーモアが売りというだけではなく、高齢化社会の進展や、過度なマイホーム志向に潜む落とし穴など、社会と人間のありようを見据えたお話づくりも巧みで、23年経っていてもまったく、古さを感じさせませんでした。
もっとも、ブラックなテイストかつ、救いのない結末も多い作品であるがゆえに、観る人によって好き嫌いが分かれるのは否めないのかもしれません。放送当時、わたくしが勤務していた会社で後輩だった、どちらかといえば楽しく夢のあるアニメが好みだった女性社員が「あんなのアニメじゃない!」なんて言っていたのを思い出したり。でも、少なくともわたくしはこういうテイスト、けっこう好きなのであります。
喪黒の声を演じた大ベテラン声優、大平透さんはこれ以上ないくらいハマり役です。救いのない結末の多い作品でありながら、過剰な嫌悪感が残らないというのは、大平さんの声による喪黒のキャラクターが醸し出す、飄々としたユーモアによるところが大きいように思います。あと、喪黒が客と "商談" している「Bar魔の巣」の、黙りこくってグラスをキュッキュッと磨いてるだけのマスター氏もかなり好きです(笑)。
『金スマ』の視聴者にはお若い方も多いことでしょうが、それらの方々は、この23年前に作られたブラックなテイストのアニメを観て、どんなふうに感じたことでありましょうか。
昨夜の再放送で、23年経っていても古びることのない『笑ゥせぇるすまん』の面白さを「ドーン!!」と再認識することができました。


久々の再放送を観て、またひと通りシリーズを観直してみたくなってきました。確かDVD-BOXが出てたよなあ、と思い出し、確認してみました(発売元はTBS、販売元はポニーキャニオン)。



スペシャル版も含め、テレビ放送された全126話(うち14話分は初ソフト化)を完全収録した18枚組のDVD-BOX。しかも、スタッフのインタビューや対談、藤子不二雄Ⓐさん書き下ろしイラストなどを掲載した、104ページのオールカラー特典ブックレットもなかなか充実しているようで、実にありがたいのですが••••••値段は約38,500円。消費税が入ると40,000円を少々越えてしまうということで、やはりちょいとばかり高いのでありまして••••••。これは即購入!というわけにはいきませんね(泣)。少しずつお金を貯めてから購入することにしようかなあ。

『笑ゥせぇるすまん』がらみで昨日知って、ちょっと驚いたことが。
シリーズを通じて脚本を手がけていた「梅野かおる」という方、実は加山雄三さん主演の映画『若大将』シリーズや、『ニッポン無責任時代』をはじめとするクレージーキャッツ主演の一連の映画、はたまた松田聖子さんやたのきんトリオ(コレも懐かしいなー)主演の青春アイドル映画などの脚本家でもあった、田波靖男さんの別名義だったんですね。
最初は上記の映画作品群と、アニメ『笑ゥせぇるすまん』とがなかなか結びつかなったのですが、田波さんは『パタリロ!』の劇場版『スターダスト計画』や、『ふしぎの海のナディア』など、アニメーション作品の脚本も多かったとか。けっこう、幅広く手がけておられたんだなあ。



蛇足ながらオマケ写真を。コチラは鹿児島の繁華街にある、リアル「Bar魔の巣」であります。黙ってグラスをキュッキュッと磨くマスターでもいるのかと思い、一度入ってみようかなと思っていたのですが、先般の連休の間は残念ながら、ずっとお休みでありました。



今度鹿児島に行くときには、ぜひとも勇気を出して(笑)立ち寄ってみようと思っております。



(Facebookへの投稿と、勤務先である書店のスタッフブログに書いた内容に手を加えた上で、アップいたしました)