『月刊公民館』
発行=全国公民館連合会、発売=第一法規 B5版 月刊 定価600円(ブログ掲載時)
そういえば、もうずいぶん長いこと、公民館という場所に行ってないなあ、と思う。子どもの時分に何かのレクリエーションで集まった記憶がうっすらとある程度で、今では近くの公民館でどんなことが行われているのか、気にすることもないという日々を過ごすオトナとなってしまっていたりするのである。
現に、公民館といえば子どもたちのレクリエーションの場であったり、主婦やお年寄りが趣味の講座やなんかで集まるような場所というのが通り相場ではないだろうか。
で、エネルギー持て余し気味のワカモノあたりは公民館に対して、
「は?コーミンカン?そんなシケたところなんか知らねーし、へっ。そんなとこよかイ○ン行こーぜイ○ン」
といったような態度をとりがちであるし、低成長ニッポンを青息吐息で支えているサラリーマン諸氏などは、
「はあ、公民館、ですか。ですがワタクシ仕事で忙しいですし、それに大事な大事なお得意さまの接待にも使えませんしねえ。あ、それではこれからお得意さまと馴染みのクラブに行ってまいりますので。さあガーコちゃんが待ってるぞお」
というわけで、やはり公民館にはつれない姿勢をとり続けているわけなのである。
そんな、なかなか厳しい状況にある公民館を、日々支え続けている人たちに向けた唯一の専門誌が、この『月刊公民館』というわけなのである。
手元にある2月号の特集は「音楽が地域をむすぶ」。公民館での音楽活動といえば、主に主婦やお年寄りによる合唱に民謡に太鼓に大正琴•••といったイメージがあるが、実践事例で紹介されている岡山県津山市の公民館では、地元の伝説をもとにしたオリジナルのミュージカル上演に取り組んだという。これが総勢数百人の市民スタッフによる本格的かつ大がかりなもので、公民館での活動がこういうものも生み出せるのだなあ、と感心した。
また、鳥取県倉吉市の公民館では、小中学生を集めて某アニメばりの軽音楽部をつくってバンド講座を開講、成果を披露するライブも公民館で開催したとか。公民館での音楽活動にも、いろいろな取り組みがあるんだなあ。
文部科学省優良公民館に選ばれた公民館の紹介というのもあった。このうち福島県西白河郡西郷村の中央公民館は、村民の可能性と生きがいをもとにした人づくりをするために村民大学を設立。これが単位制で、短大・大学・大学院まであるという本格的なもの。
いまやっている大河ドラマ『八重の桜』でも、会津藩が教育に力を入れていたことが描かれていたが、会津藩から続く福島の人づくりの伝統が、こういう形でも生きているのかなあ、と勝手に思ったりした。
また、近松門左衛門が幼少期を過ごした場所という福井県鯖江での、地域住民による「近松の里」づくり活動を公民館がサポートする、という事例も興味を引かれた。
やはり優良公民館に選ばれたという、宮城県石巻市虻田の公民館の利用者代表ともいえる、利用団体連絡協議会会長の女性のお話もなかなかに印象的であった。
農家の仕事をするかたわら、大家族の世話や育児にも励んでいたその女性、あるとき娘さんを不慮の事故で亡くしてしまったという。すべてのことにやる気をなくし、ふさぎ込む日々が続く中、近所の友人から声をかけられて始めてみた大正琴サークルがきっかけとなり、音楽を演奏して人に聞いてもらう喜びを知るとともに、素敵な仲間たちとも出会ったことで、公民館での活動に生きがいを感じるようになった、という話であった。
東日本大震災で大きな被害を受けた地域でもある石巻で、公民館から人と人とのつながりや、生きる息吹を与えられたという方がいる、という話には、なんだかしみじみと感銘を受けた。もしかしたら、公民館という場所には意外とまだまだ実力と可能性が秘められているのかもしれないな、と思ったことであった。
他には、NHKのニュース番組などで気象予報士をつとめている平井信行さんのエッセイもあった。大学受験にあたって悩み苦しんだ経験を語っておられるのだが、個人的には平井さんに大学受験に臨む息子さんがいる、というのに軽いショーゲキを受けてしまった。あんなに若々しく見える平井さんにそんな大きなムスコがいるとは•••。
そして最終ページには、「公民館総合補償制度」の広告が、見開き2ページにわたってドドーンと載っていた。公民館の利用者や行事・サークル活動の参加者、ボランティアや講師、同伴の同居未就学児までを幅広く対象とする「行事傷害補償制度」や、施設の欠陥や業務運営のミスによる公民館の賠償責任負担に対応する「賠償責任補償制度」などがあるとか。そうかあ、こういうカタチで公民館の利用者などを保護するような制度があるのか。財政の厳しい折りでもありましょうが、利用者が安心して利用できるためにも、ぜひとも多くの公民館のご加入をオススメしたいですねえ。と保険会社のまわし者のようなことを揉み手しながら言っておるわけであるが。
長いことつれない態度で疎遠にしていた公民館であったが、実は地道に地域の中で頑張っているのだ、ということを伝えてくれる雑誌であった。今度の週末あたり、ちょっと近所の公民館でも覗いてみたい気になってきたぞ。