先週の23日。朝日新聞の「耕論」というページに、編集工学者の松岡正剛さんと、ブックコーディネーターの内沼晋太郎さんのインタビューが出ていました。テーマは「本屋サバイバル」。
出版不況にネット書店や電子書籍の台頭•••と苦境にある既存の書店に、再生の道はあるのか、という趣旨の企画でありました。
松岡さんは、これまでの書店は本を種類別やジャンルごとに「機械的に並べるだけ」であり、「本の魅力は十分に伝わらない」として、ファッション業界のようなセレクトショップ的な発想により、2009年からの3年間にわたって、東京丸の内にある丸善の店内にて、書店内書店「松丸本舗」を開設しました。
そこでは従来の分類を廃して、本を一つの「文脈」に沿って「編集」し、組み合わせていくことで、それぞれの本が持つ新たな魅力をお客さんに提示していきました。また店舗には、お客さんの好みに合う本を提案できるような「本の目利き」を置きました。
その3年にわたる試みは、松岡さんの著書『松丸本舗主義 奇蹟の本屋、3年間の挑戦。』(青幻舎)にまとめられています。
そのときの経験を踏まえつつ、松岡さんは言います。
「ネット書店と電子書籍があれば、紙の本や町の書店は不要になる、との極論も聞きます。だが、本と人との間をつなぐには、人の存在が不可欠です。(中略)読書を苦手に思っている人々も、本の選択や読み方について書店側がちょっとした提案をするだけで、読書の快楽に引き込めるはず。(中略)本と人をつなぐことに貪欲になれば、書店はまだまだいける。そう確信しています。」
そして内沼さんは、書店や出版社のコンサルティングを務めるかたわら、昨年7月に「B&B」という書店を世田谷区にオープン。
「本の売り上げだけで経営が成り立つとは考えていません」という内沼さん。「B&B」では本だけではなく、ビールやソフトドリンクを販売して、それを店内で飲みながら本選びができるようにしています。また、中古家具店とのタイアップで本棚や椅子なども販売。さらには、著者や編集者を招いてのトークイベントを開催し、チケット+1ドリンクによる売り上げを確保したり。
内沼さんは、「ネットの世界に本が解き放たれ」、テキストデータとなった本を巡るコミュニケーションの可能性に言及しつつも、「書店や紙の本に存在価値はあります」と言います。
「紙の本には雑貨のような『モノ』としての魅力がある。(中略)手にとって本を選びたい人、好きな本に囲まれて過ごす喜びを求める人々は、これからも決して絶えないでしょう。もう一つの存在意義は、本を好きになるきっかけをつくること。」
これまでの書店のあり方からの脱却を目指した、松岡さんと内沼さんの取り組み。
それぞれの方法論こそ違うものの、「本と人をつなぐ」ことを模索しようとする意味では同じように思います。
ただ本や雑誌を並べただけで売れていくような時代は過ぎているのではないか、ということは、わたくしも書店づとめを重ねる中で痛感しておりました。
それだけに、松岡さんや内沼さんの試みは大変意義深いと思いますし、魅力的にも映ります。ことに松岡さんがいう「編集」によって新たな本の魅力を提示していく考え方には共鳴するところ大です。
一方で、最近こういう書店の存在を知りました。
大阪にある「隆祥館書店」。創業60年、15坪の小さなお店です。
多くの書店と同様に、隆祥館も売り上げが下がり苦境にありました。
そんな中で、経営者である二村知子さんは、お客さんとのコミュニケーションを大切にしながら、相手のニーズにきめ細かく応えるようにしたといいます。
お客さんの顔と購入した本や雑誌を覚えては、次に来店した時に同じ雑誌の最新号を勧めたり、その人の好みに合いそうな本を仕入れてお勧めしたり。
それを地道に積み重ねていったことで、お客さんとの繋がりを強めていった、と。
(以上については、隆祥館書店について触れた、アナウンサーの村上信夫さんのブログ記事を参照しました。「村上信夫オフィシャルブログ『ことばの種まき』」当該記事「大阪にある嬉しい本屋さん」→ http://s.ameblo.jp/nobu630/entry-11452162062.html )
奇をてらうようなこともなく、「街の小さな本屋さん」の原点を再確認しているかのような、隆祥館書店の取り組み。これもまた、「本と人をつなぐ」ための大切な取り組みだと感じます。
「本と人をつなぐ」ための取り組みに、「これが正解」といえるような万能な解決策はないのでしょう。それぞれの書店と、そこに勤める人たちが、それぞれに合わせた模索を続けていくしかありません。
しかし、そうやって地道に「本と人をつなぐ」ための取り組みを続けていく限り、書店の存在価値が失われることは絶対にない、と、わたくしは思います。
翻って、わたくし自身はどうなのか。
現在、外商の仕事をする中で、「本と人をつなぐ」ための取り組みをどれだけやれているのか。存在価値のある仕事ができているのだろうか。
残念ながら、まだまだ自分の取り組みは不十分に過ぎると感じています。
外商の仕事をする中で、「本と人をつなぐ」ために何をすべきなのか。これもまた、すぐに答えが出すことができません。
そのことを「宿題」として抱え込みながら、自分なりの模索をしていかねば、と思っております。
出版不況にネット書店や電子書籍の台頭•••と苦境にある既存の書店に、再生の道はあるのか、という趣旨の企画でありました。
松岡さんは、これまでの書店は本を種類別やジャンルごとに「機械的に並べるだけ」であり、「本の魅力は十分に伝わらない」として、ファッション業界のようなセレクトショップ的な発想により、2009年からの3年間にわたって、東京丸の内にある丸善の店内にて、書店内書店「松丸本舗」を開設しました。
そこでは従来の分類を廃して、本を一つの「文脈」に沿って「編集」し、組み合わせていくことで、それぞれの本が持つ新たな魅力をお客さんに提示していきました。また店舗には、お客さんの好みに合う本を提案できるような「本の目利き」を置きました。
その3年にわたる試みは、松岡さんの著書『松丸本舗主義 奇蹟の本屋、3年間の挑戦。』(青幻舎)にまとめられています。
そのときの経験を踏まえつつ、松岡さんは言います。
「ネット書店と電子書籍があれば、紙の本や町の書店は不要になる、との極論も聞きます。だが、本と人との間をつなぐには、人の存在が不可欠です。(中略)読書を苦手に思っている人々も、本の選択や読み方について書店側がちょっとした提案をするだけで、読書の快楽に引き込めるはず。(中略)本と人をつなぐことに貪欲になれば、書店はまだまだいける。そう確信しています。」
そして内沼さんは、書店や出版社のコンサルティングを務めるかたわら、昨年7月に「B&B」という書店を世田谷区にオープン。
「本の売り上げだけで経営が成り立つとは考えていません」という内沼さん。「B&B」では本だけではなく、ビールやソフトドリンクを販売して、それを店内で飲みながら本選びができるようにしています。また、中古家具店とのタイアップで本棚や椅子なども販売。さらには、著者や編集者を招いてのトークイベントを開催し、チケット+1ドリンクによる売り上げを確保したり。
内沼さんは、「ネットの世界に本が解き放たれ」、テキストデータとなった本を巡るコミュニケーションの可能性に言及しつつも、「書店や紙の本に存在価値はあります」と言います。
「紙の本には雑貨のような『モノ』としての魅力がある。(中略)手にとって本を選びたい人、好きな本に囲まれて過ごす喜びを求める人々は、これからも決して絶えないでしょう。もう一つの存在意義は、本を好きになるきっかけをつくること。」
これまでの書店のあり方からの脱却を目指した、松岡さんと内沼さんの取り組み。
それぞれの方法論こそ違うものの、「本と人をつなぐ」ことを模索しようとする意味では同じように思います。
ただ本や雑誌を並べただけで売れていくような時代は過ぎているのではないか、ということは、わたくしも書店づとめを重ねる中で痛感しておりました。
それだけに、松岡さんや内沼さんの試みは大変意義深いと思いますし、魅力的にも映ります。ことに松岡さんがいう「編集」によって新たな本の魅力を提示していく考え方には共鳴するところ大です。
一方で、最近こういう書店の存在を知りました。
大阪にある「隆祥館書店」。創業60年、15坪の小さなお店です。
多くの書店と同様に、隆祥館も売り上げが下がり苦境にありました。
そんな中で、経営者である二村知子さんは、お客さんとのコミュニケーションを大切にしながら、相手のニーズにきめ細かく応えるようにしたといいます。
お客さんの顔と購入した本や雑誌を覚えては、次に来店した時に同じ雑誌の最新号を勧めたり、その人の好みに合いそうな本を仕入れてお勧めしたり。
それを地道に積み重ねていったことで、お客さんとの繋がりを強めていった、と。
(以上については、隆祥館書店について触れた、アナウンサーの村上信夫さんのブログ記事を参照しました。「村上信夫オフィシャルブログ『ことばの種まき』」当該記事「大阪にある嬉しい本屋さん」→ http://s.ameblo.jp/nobu630/entry-11452162062.html )
奇をてらうようなこともなく、「街の小さな本屋さん」の原点を再確認しているかのような、隆祥館書店の取り組み。これもまた、「本と人をつなぐ」ための大切な取り組みだと感じます。
「本と人をつなぐ」ための取り組みに、「これが正解」といえるような万能な解決策はないのでしょう。それぞれの書店と、そこに勤める人たちが、それぞれに合わせた模索を続けていくしかありません。
しかし、そうやって地道に「本と人をつなぐ」ための取り組みを続けていく限り、書店の存在価値が失われることは絶対にない、と、わたくしは思います。
翻って、わたくし自身はどうなのか。
現在、外商の仕事をする中で、「本と人をつなぐ」ための取り組みをどれだけやれているのか。存在価値のある仕事ができているのだろうか。
残念ながら、まだまだ自分の取り組みは不十分に過ぎると感じています。
外商の仕事をする中で、「本と人をつなぐ」ために何をすべきなのか。これもまた、すぐに答えが出すことができません。
そのことを「宿題」として抱え込みながら、自分なりの模索をしていかねば、と思っております。