NHKスペシャル『命と向きあう教室 ~被災地の15歳・1年の記録~』
初回放送=2015年3月29日(日)午後9時00分~9時49分
語り=高畑充希
製作=NHK仙台放送局
これまで誰にも話すことができなかった、震災の辛い体験。それを月1回、作文に綴って発表して皆と共有し、感想を伝え合うことで命の意味を考えよう、という “命の授業” を受けてきた、宮城県東松島市の中学3年生82人の1年間の記録でした。
津波により1,000人以上もの方々が亡くなっている東松島市。生徒たちの多くも身近な人が亡くなっていたり、人びとの死を目のあたりにしたりしていて、心に深い傷を負っていました。教師たちにとっても手探りだった“命の授業”は、心理学や教育学の専門家のサポートを受けつつ進められたといいます。
まず最初に皆の前で作文を発表することに同意したのが、津波で失った母と姉を、なぜ自分の手で救うことができなかったのかと深い後悔の念を抱き続けてきた男の子でした。「発表することでみんなの考えを聞きたい」というのが、その理由でした。
その後1年、命について様々に考えを深めた彼でしたが、やはり簡単に理解してまとめられることではない、との結論に達します。しかし、あえてまとめるなら、と記した言葉は、とても印象的なものでした•••。
「命とは、強くて弱い、美しい輝き」
普段は生徒会長として明るく振る舞いながら、気持ちの奥で両親を失った悲しみを秘め続けていた女の子。夢の中に出てくる亡くなった両親へ手を伸ばそうとしても届かない•••そんな苦しい胸の内を作文に綴りました。
そんな胸の内を受け止めた教師から、「誰かを頼ってもいいんじゃないか?」と言われながらも、彼女は「頼りっぱなしになって相手に負担がかかっては」などと言い、やはり気丈に振る舞おうとしていました。
しかし、1年にわたる“命の授業”で、「自分の知らない、本当の自分を知ることができた」という彼女は、やはり誰かを頼ってもいいんだ、という結論に達しました。中学を卒業した彼女は、人を助ける仕事がしたい、と看護師を目指すことに•••。
震災での体験にとどまらず、心に抱え続けた生きづらさを作文に綴った生徒もいました。両親の離婚を経験し、新しい母との関係にも悩み、自死したいという思いを持っているという女の子。その思いを作文に綴って発表し、秋の文化祭では神楽のまとめ役となる太鼓の演奏をやりきった彼女に、級友たちから「頑張ったね」との感謝の言葉が寄せられます。こんなふうに感謝されるなんて初めてのこと、と嬉しそうに語った彼女。
卒業の日。彼女のそばには、その成長に涙する新しい母、そして父の姿がありました•••。
なるべく、冷静に、冷静に•••と思いつつ観たのですが、やはりダメでした。観ながら何度も涙していました。
震災での辛く悲しい経験もさることながら、それを誰にも話せずにずっと耐え続けているということは、とてつもなく苦しいものだったことでしょう。
それを大切な仲間たちと分かち合い、思いを共有することが、少しずつでも前へと進んでいくきっかけとなることを、願わずにはいられませんでした。
1年間の“命の授業”のまとめとして書かれた作文の中に、やはり印象的な言葉がありました。
「辛い体験をしているのに、それでもこの場にいるということは、みんなにはその問題を乗り越える力があると思う」(大意)
82人の生徒たちが切り拓くこれからの人生が、幸多きものとなるよう、切に、切に願いたいと思います。
(フェイスブックに投稿した内容に、一部手を加えて掲載いたしました)
初回放送=2015年3月29日(日)午後9時00分~9時49分
語り=高畑充希
製作=NHK仙台放送局
これまで誰にも話すことができなかった、震災の辛い体験。それを月1回、作文に綴って発表して皆と共有し、感想を伝え合うことで命の意味を考えよう、という “命の授業” を受けてきた、宮城県東松島市の中学3年生82人の1年間の記録でした。
津波により1,000人以上もの方々が亡くなっている東松島市。生徒たちの多くも身近な人が亡くなっていたり、人びとの死を目のあたりにしたりしていて、心に深い傷を負っていました。教師たちにとっても手探りだった“命の授業”は、心理学や教育学の専門家のサポートを受けつつ進められたといいます。
まず最初に皆の前で作文を発表することに同意したのが、津波で失った母と姉を、なぜ自分の手で救うことができなかったのかと深い後悔の念を抱き続けてきた男の子でした。「発表することでみんなの考えを聞きたい」というのが、その理由でした。
その後1年、命について様々に考えを深めた彼でしたが、やはり簡単に理解してまとめられることではない、との結論に達します。しかし、あえてまとめるなら、と記した言葉は、とても印象的なものでした•••。
「命とは、強くて弱い、美しい輝き」
普段は生徒会長として明るく振る舞いながら、気持ちの奥で両親を失った悲しみを秘め続けていた女の子。夢の中に出てくる亡くなった両親へ手を伸ばそうとしても届かない•••そんな苦しい胸の内を作文に綴りました。
そんな胸の内を受け止めた教師から、「誰かを頼ってもいいんじゃないか?」と言われながらも、彼女は「頼りっぱなしになって相手に負担がかかっては」などと言い、やはり気丈に振る舞おうとしていました。
しかし、1年にわたる“命の授業”で、「自分の知らない、本当の自分を知ることができた」という彼女は、やはり誰かを頼ってもいいんだ、という結論に達しました。中学を卒業した彼女は、人を助ける仕事がしたい、と看護師を目指すことに•••。
震災での体験にとどまらず、心に抱え続けた生きづらさを作文に綴った生徒もいました。両親の離婚を経験し、新しい母との関係にも悩み、自死したいという思いを持っているという女の子。その思いを作文に綴って発表し、秋の文化祭では神楽のまとめ役となる太鼓の演奏をやりきった彼女に、級友たちから「頑張ったね」との感謝の言葉が寄せられます。こんなふうに感謝されるなんて初めてのこと、と嬉しそうに語った彼女。
卒業の日。彼女のそばには、その成長に涙する新しい母、そして父の姿がありました•••。
なるべく、冷静に、冷静に•••と思いつつ観たのですが、やはりダメでした。観ながら何度も涙していました。
震災での辛く悲しい経験もさることながら、それを誰にも話せずにずっと耐え続けているということは、とてつもなく苦しいものだったことでしょう。
それを大切な仲間たちと分かち合い、思いを共有することが、少しずつでも前へと進んでいくきっかけとなることを、願わずにはいられませんでした。
1年間の“命の授業”のまとめとして書かれた作文の中に、やはり印象的な言葉がありました。
「辛い体験をしているのに、それでもこの場にいるということは、みんなにはその問題を乗り越える力があると思う」(大意)
82人の生徒たちが切り拓くこれからの人生が、幸多きものとなるよう、切に、切に願いたいと思います。
(フェイスブックに投稿した内容に、一部手を加えて掲載いたしました)