読んで、観て、呑む。 ~閑古堂雑記~

宮崎の某書店に勤める閑古堂が、本と雑誌、映画やドキュメンタリー、お酒の話などを、つらつらと綴ってまいります。

10月刊行予定文庫新刊、超個人的注目本6冊+気になる8月刊行予定の単行本7冊

2014-09-07 09:40:59 | 本のお噂
まだ日中は蒸し暑さが残るものの、日一日と秋に移り変わっていくのを感じる昨今。10月に刊行予定の文庫新刊ラインナップが出揃ってきましたので、個人的に気になる書目をノンフィクション中心に6冊ピックアップしてご紹介したいと思います。
それに加えて、9月刊行予定の単行本からも、気になる本を5冊選んでみました。何か参考になるようなところがあれば幸いであります。
刊行データについては、書店向けに取次会社が発行している情報誌『日販速報』の9月8日号の付録である、10月刊行の文庫新刊ラインナップ一覧に準拠いたしました。発売日は首都圏基準ですので、地方では1~2日程度のタイムラグがあります。また、書名や発売予定は変更になることもあります。内容紹介については『日販速報』のほか、「『BOOK』データベース」などを参考にさせていただきました。


『猫の古典文学誌 鈴の音が聞こえる』 (田中貴子著、講談社学術文庫、10日発売)
「日本の古典文学に登場する猫に焦点をあて、その扱われ方、人との関わりなどを楽しく気どらない口調で紹介。数多くの書物や絵画から語りかけて来る猫たちの声に、そっと耳を傾けてみませんか」
という本書。なんだか猫好きとしては気になりますねえ。「猫」というキーワードから眺める古典文学の世界はどのようなものになるのか、楽しみな一冊です。

『読書の腕前』 (岡崎武志著、光文社知恵の森文庫、9日発売)
「ツン読」を恐れてまともな読書はありえない、ベストセラーは十年後二十年後に読むとおもしろい、国語の教科書で味わう文学•••などなど、“空気のように本を吸う男”が存分に語る体験的読書論。
2007年に刊行された光文社新書版の文庫化です。情報収集のツールではなく、楽しむために本を読みたいと思う人たちににとっては大いに参考になり、かつ琴線に触れるような考え方も多いであろうオススメの一冊であります。

『人類が知っていることすべての短い歴史』上・下 (ビル・ブライソン著、楡井浩一訳、新潮文庫、29日発売)
「宇宙のはじまり、DNA、プレートテクトニクス、10-43秒という時間の長さ。テストのために丸暗記しただけの用語や数字の奥には、驚くべき物語が隠されていた。科学と無縁だったベストセラー作家が一大奮起し、三年かけて多数の専門家に取材、世界の成り立ちの解明に挑む。科学を退屈から救い出した大傑作」
という、「『BOOK』データベース」の内容紹介を読むだけでも、なんだかワクワクしてくるものがある、10月刊行予定の文庫のなかでは個人的に一番楽しみな一冊であります。面白そうな本が多い、新潮文庫の「サイエンス&ヒストリーコレクション」の一冊としての文庫化のようですね。

『70年代日本SFベスト集成(1)』 (筒井康隆編、ちくま文庫、8日発売)
筒井康隆さんが編んだ、60年代から70年代前半までの日本SF傑作アンソロジーシリーズ。日本SFの基礎がつくられた60年代に続き70年代に突入です。70年代初頭に発表された小松左京、星新一、光瀬龍、半村良といった大御所の作品から、藤子不二雄、永井豪の傑作短篇マンガまで。日本SFが発展へと向かう中で生み出された作品群が楽しめる一冊です。

『モサド・ファイル イスラエル最強スパイ列伝』 (マイケル・バー=ゾウハー、ニシム・ミシャル著、上野元美訳、ハヤカワ文庫NF、10日発売)
対外諜報活動と特務工作を担当するイスラエルの組織「モサド」。その知られざる実態と、緊張する中東情勢の中で暗躍したスパイたちの姿を、イスラエル出身のスパイ小説の巨匠とイスラエル人ジャーナリストが迫ります。いまも火種を抱えているイスラエルと中東諸国の「これまで」と「これから」が見えてきそうなノンフィクションであります。

『理系の子 高校生科学オリンピックの青春』 (ジュディ・ダットン著、横山啓明訳、文春文庫、10日発売)
日本を含めた世界各国の高校生たちが集い、科学の自由研究で競い合う「科学のオリンピック」、インテル国際学生科学フェア。そこに参加した少年少女たちはいかにして育ち、科学に興味を持ったのか。そしてどんな研究をやってのけたのか•••。科学研究に青春をかけた少年少女たちの姿が大きな感動を呼び、話題となった傑作ノンフィクションがついに文庫化です。読みたいと思いながらも未読のままだったので、ぜひともこの文庫版で読むつもりです。


これ以降は、今月9月に刊行される予定の単行本からピックアップした7冊であります。

『サンリオSF文庫総解説』 (大森望・牧眞司監修、本の雑誌社、9月17日発売)
「伝説の文庫『サンリオSF文庫』全197点を書影、書誌データつきで一点ずつレビューした本邦初の解説書。コラムも多数収録」
いまでは入手が難しい書目も多いSFファン垂涎のレーベル、サンリオSF文庫。その全貌を明らかにした本書は資料としても価値が高そうで、SFファンならずとも押さえておいていい一冊かもしれませんね。

『失われた感覚を求めて』 (三島邦弘著、朝日新聞出版、9月19日発売)
「2006年単身で出版社『ミシマ社』を立ち上げ、活動拠点を京都に移した著者による現在進行形の書。『地方で出版は可能か』ほか」
地味ながらもコンスタントに良書を刊行し続けていることで、本好きからの評価も高い注目の出版社、ミシマ社。その創業者である三島さんのお言葉には、出版のありかたを考える上でも見逃せないものがありそうです。

『石巻 2011.3.27~2014.5.29』 (橋本照嵩撮影、春風社、9月下旬発売)
「石巻出身の写真家が3年にわたり震災後の故郷を撮影。被災地に住む家族、仮設住宅、現地の行事など白黒写真170点と撮影日誌」
東日本大震災で最も大きな被害を受けた宮城県石巻市。そこで生まれ育った写真家が捉えた震災後の風景と人びとはどのようなものなのか。見てみたい写真集です。

『文明の盛衰と環境変動 マヤ・アステカ・ナスカ・琉球の新しい歴史像』 (青山和夫・米延仁志ほか編、岩波書店、25日発売)
「精度の高い環境史を軸とし、文明の実態を通時的に比較研究。環境文明史という新しい学問領域をわかりやすく紹介」
これまでの定説にとらわれない、文明と歴史の姿を見せてくれる「環境文明史」は、最近気になる分野であります。本書もなんだか、興味深い文明の実像が見えてきそうで面白そうです。

『〈報道写真〉と戦争 1930-1960』 (白山眞理著、吉川弘文館、中旬発売)
「日本の報道写真はいかに生まれ、戦争と関わったのか。知られざる報道写真家たちの実像を、原爆をめぐる戦後の活動などから読み解く」
報道写真という分野の重要性が増したのが、まさしく戦争の報道においてでした。それだけに、報道写真と戦争との関わりを追った本書には興味が湧くものがあります。予価が5184円とちょっと高いのですが、読んでみたい一冊です。

『バーカウンターは人生の勉強机である』 (島地勝彦著、阪急コミュニケーションズ、10日発売)
「penの人気連載が待望の書籍化!お酒を愛するすべての老若男女のための『バーで読む本』です」という本書。居酒屋はもちろんバーも大好きなわたくしとしては、どうにも外せないものがある本ですねえ。そう、バーって学校や仕事場では得られないような、大切な人生勉強ができる場でもあるんですよね。これ実感。

『怪獣の描き方教室』 (小松崎茂監修、復刊ドットコム、下旬発売)
「ゴジラなどの人気怪獣の描き方を、小松崎茂が監修。また、怪獣デザインの第一人者・成田亨監修の【怪獣はこうして考える】も収録!」
空想イラストの巨匠にして、さまざまな特撮映画にもデザインを提供した小松崎茂さん監修による怪獣の描き方と、初期ウルトラシリーズのデザイナーとして秀逸な仕事を残した成田亨さんによる怪獣発想論をまとめた本ということで、実際に怪獣を描くわけではなくとも(絵がヘタだしなあ、オレは)読んでみたい気が大いにしてくる一冊であります。