MAG2ニュース国際2023.04.20 by 『きっこのメルマガ』
日本に議長国の資格なし。G7環境相会合でも露呈した自民政権のガラバゴスぶり
5月19日から3日間の予定で開催される「G7広島サミット」をメインディッシュとすれば、そのオードブルに当たるのが札幌で開催された「G7環境相会合」(4月15日~16日)、スープに当たるのが軽井沢で開催された「G7外相会合」(4月16日~18日)でした。毎度のことながら「G7外相会合」もツッコミどころが満載でしたが、昨日の今日で原稿が間に合わないので、今回はオードブルの「G7環境相会合」を取り上げたいと思います。
今回、札幌で開催された「G7環境相会合」ですが、議長国である日本からは、西村康稔経産相と西村明宏環境相という「ダブル西村」が出席しました。そして、G7で唯一の「化石燃料依存国」として、他国の前向きな「石炭火力発電の廃止」に関する提案に反対しました。そして、欧米各国の「廃止時期を明記すべき」との主張を跳ねのけて、期限を明記しない「段階的廃止」という曖昧で無責任な文言を採択させたのです。
しかし、これは今に始まった話ではありません。昨年5月、ドイツで開催された「G7環境相会合」でも、議長国であるドイツが「2030年までの段階的廃止」を提案し、欧米各国が賛成したのにも関わらず、日本から出席した「統一教会の飼犬」こと萩生田光一経産相が猛反発したことで、期限の明記は見送られたのです。
また、今回の会合では、自動車部門の脱炭素化について、欧米の国々が「完全EV化の目標を定めるべき」と主張しました。しかし、この前向きな提案も、EV開発に出遅れている日本の反対によって合意されませんでした。他の6カ国が温暖化対策に前向きなのに、議長国である日本がその足を引っ張る。本当に恥ずかしいことです。
「完全EV化」を目指す他の国々に対して、「ハイブリッド車」を良しとする日本。「石炭火力発電の廃止」を目指す他の国々に対して、「石炭火力発電のアンモニア混焼によるCO2排出量の低減」を良しとする日本。白黒をハッキリつけたがる欧米人と、白でも黒でもない「曖昧なグレー」でお茶を濁したがる日本人との文化の差でしょうか?…なんてノンキなことは言っていられません。
期限を決めない「段階的廃止」という文言は、自転車のヘルメット着用の「努力義務」と同じく、何の意味もない「絵に描いた餅」であり、単に「やってます感」をアピールするためのゴマカシだからです。そもそも「努力義務」とは、一票の格差問題で無責任な裁判長が繰り返す「違憲状態」と同じく、日本語を根底から覆す「デタラメで矛盾した造語」なのです。
自転車のヘルメット着用が「義務」だと言うなら違反者を罰するべきだし、一票の格差が「違憲」だと言うなら選挙をやり直すべきなのです。こうした曖昧なグレーな造語でお茶を濁すな!…と、あたしは言いたいです。
西村康稔経産相がやらかした「恥の上塗り」
ま、それはそれとして、完全に崖っぷちに立たされていて、今すぐに全廃しても間に合うかどうか分からないのが「石炭火力発電」なのに、議長国である日本が「アンモニア混焼によるCO2排出量の低減」などと「ぬるま湯」のようなファンタジーに終始しているのですからお話になりません。
ちなみに日本は、地球温暖化対策に後ろ向きな国、他国の対策の足を引っ張る国に与えられる不名誉な「化石賞」を2019年から2022年まで3連続で受賞していますが、その選定理由の1つが「アンモニア利用によって火力発電の延命を図ろうとしており、しかも海外へ輸出しようとしている」というものなのです。
そして、これだけでも呆れ返るのに、さらに開いた口が塞がらないのが、日本の原発依存度です。世界最悪レベルの原発事故を起こし、12年経った今も収束の目途も立っていないのに、いつの間にか「段階的廃止」だった計画が「原発の有効利用」の名のもとに「再稼働と新設」へと方向転換されてしまったのです。それも、国会の審議を経ずに、自民党政権の伝統芸の「閣議決定」だけで。
今回の会合でも、日本は恥も外聞も原発事故の反省もなく、「原発はエネルギー安保に重要」と主張しました。しかし、福島第1原発事故を受けて、会合当日の15日に「脱原発」を完了したドイツを始め、「脱原発」を進めているイタリアなどが強く反対したため、共同声明では主語を「私たち」でなく「原発を利用する国」に変更されました。
また、福島第1原発に溜まり続ける大量の処理水の海洋放出についても、日本はIAEA(国際原子力機関)による安全性の検証を「歓迎する」という文言を盛り込もうとしました。しかし、これもドイツなどが強く反対したため、共同声明では「支持する」という文言に変更されました。
皆さん、これ、どう思います?ドイツは福島第1原発事故を受けて「脱原発」を完了したと言うのに、その事故を起こした国の政権が「原発推進」だなんて…。世界の多くの国々が、唯一の戦争被爆国である日本の広島と長崎の悲劇を見て「核兵器禁止条約」に参加しているのに、肝心の日本は不参加、これと同じで、本当に恥ずかしいことです。
それなのに今回、さらに恥の上塗りをしてしまったのが、西村康稔経産相だったのです。西村経産相は会合後の会見で、採択された共同声明の内容について、「処理水の海洋放出を含む廃炉の着実な進展、科学的根拠に基づくわが国の透明性のある取り組みが歓迎された」と説明したのです。
そして、これに驚いたのが、西村経産相の隣りに座っていたドイツのレムケ環境相でした。先ほども書いたように、「処理水の海洋放出」については、日本が用意した「IAEAによる安全性の検証を歓迎する」という文言にドイツなどが強く反対したため、「歓迎する」は「支持する」に変更されていたからです。
今回、レムケ環境相は、会合前の13日に、福島県の浪江町や双葉町など、原発事故の被災地を視察しました。双葉町の「東日本大震災・原子力災害伝承館」を訪問し、原発事故の詳細や今も多くの住民が避難していることなど説明されたレムケ環境相は、「原発事故が地域の人々にいかに苦しみを与えたか明確に知ることができた」と述べました。
レムケ環境相は会見で、ドイツでは15日に「脱原発」が完了したことを報告してから、福島第1原発事故に言及しました。そして、「処理水の海洋放出」を「歓迎する」と述べた西村経産相の発言について、「東電や日本政府の努力には非常に敬意を払う」と前置きしつつも、「処理水の放出に関しては、歓迎するということはできない」と明言しました。これは、被災地や「伝承館」を視察して来て、今も苦しむ多くの人たちの思いを知っているレムケ環境相だからこその言葉だと思います。
G7外相会合でも説得力ゼロの茶番劇を炸裂させた岸田政権
会見後、西村経産相は報道陣に「私の言い間違い」と釈明しましたが、手もとの原稿を見ながらの会見なのに「言い間違い」などありえません。今回の「歓迎する」という文言は、地元の強い反対を押し切って海洋放出を強行するために「G7がお墨付きを与えた」というシナリオ作りの一環でした。そのため、是が非でも「歓迎する」と明記された共同声明を採択させたかった経産省の官僚が、西村経産相に「採択前の草稿」を間違って渡してしまったのでしょう。
それにしても、この自民党政権の周回遅れぶり、時代錯誤ぶり、ガラパゴスぶりには溜息も出ません。人権問題ひとつを見ても、G7の日本以外の6カ国は「同性婚」を認めているのに、日本だけは「同性婚」どころか「LGBT差別禁止法案」も自民党が頑なに拒否し続けて俎上にも上げさせません。その上、差別の解決には何の意味も持たない「LGBT理解増進法案」ですら棚上げして先送りです。
今回の「G7環境相会合」でも、多くの問題で「日本 vs. 日本以外の6カ国」という構図になり、日本のガラパゴスぶりが際立ちました。スープに当たる「G7外相会合」でも、「核兵器禁止条約」にすら参加していない日本が「核兵器廃絶」を主張するという説得力ゼロの茶番劇が炸裂したようですし、このデタラメ政権には、まったく「やれやれ…」です。
(『きっこのメルマガ』2023年4月19日号より一部抜粋・文中敬称略
本当にやれやれ恥ずかしぃ―!
北海道を除く地域では夏の氣温だったようですが、こちら薄日が差すくらいで風も強く寒さを感じます。
こんなんだから、「日本丸」という泥舟はフラフラしながら、行き当たりばったりで
航行しているんですね。
クルー全員を、総取り替えしないとダメですね。
(・・;)