経験で学ぶ尊さ!
清水谷から東海自然歩道の尾根をまたぎ、自然4号路に入ると、
杉木立の梢が大きく揺れています。
上空は相当強い風が吹いているようです。
時々、ギーギーギー~ と、恐竜の叫び声かと思うほどに、
木立の擦れ合う音が無気味です。
そんな薄暗い谷間にひと筋のこもれ陽が差し込むと、
それまでの森から一転し、一気に明るい森に変身です。
落葉した広葉樹が多くなり、冬木立が美しい季節になりました。
この詩的な荒涼感のある森の風景は、私の好きな光景です。
冬の淋しさを漂わせているかと思うと、早や固い蕾に生命感を
覚え、未来を感じさせてくれたり・・・
ヤブツバキが真っ赤な花を咲かせていたり・・・
寒暖冷温を共に味わえる今の森の様相です。
冬枯れの森で元気なのはシダ類です。
落葉して明るくなった森に太陽が差し込み、林床のコケ類や
シダ類も生き生きとし、葉もキラキラと輝いています。
箕面のシダ類は、鎌田 計三さんの資料によると・・・
「 ~52年振りに箕面で確認された絶滅種のナチシダを含め、
21科141種もある~ 」
とのことです。
日本の生物学者が、必ず一度は調査に訪れると言う事も
うなずけますね。
箕面ビジターセンターに到着すると、いつになく静かで
なぜか人一人見当りません?
少し前まで、もみじ狩りに訪れる沢山の人々で賑わっていたのが、
まるでウソのようです。
私は開いていた「森の博物館」をのぞいてみました。
そこでこんな一文を見つけました・・・
「 ~少年時代「ファーブル昆虫記」を愛読し、熱中していた
福井少年はたびたび近くの箕面を訪れていた・・・ 」
日本初のノーベル化学賞を受賞した福井謙一博士の著書
「学問の創造」から抜粋・・・
「 ~いろいろな山に登った。
~特に箕面は近いこともあって何度となく足を運び、
どういう木にどういうクワガタムシが棲みついているかと
言う事まで、頭に入るまで精通していた~
私はこの事を見出すたびに経験で学ぶことの尊さを
痛感しないではいられない~ 」
あの手塚 治少年もそうでしたが、箕面の森で少年時代を過ごした
人々の想いとその影響は、とても大きなものがあることを
改めて知りました。
「 経験で学ぶ事の尊さ! 」
それは現代のNet社会やPCでの生活に慣れた子供たちには、
特に大切な事のように思います。
私も自分の孫たちに、このことを伝えていきたいものです。
帰路のこと・・・
才が原林道を下っていると、一人の中年男性が落ち葉をかき集め
大きなビニール袋に入れ、それを沢山積み上げていました。
私は最初 山の中で何をしているのか不思議に思いながらも、
ボランテイアの清掃活動をされているのだと思い・・・
「ごくろうさまです。 ありがとうございます!」
と挨拶すると・・・
「 いやいや! これは畑の堆肥用に集めてますねん!
これで腐葉土つくりましてな、畑に撒くとええ野菜が
採れまんねん!」
ここにも山の恵みがありました・・・
森の落ち葉は沢山の微生物によって分解され、
やがて豊かな恵みの野菜を育ててくれるのですね。
自然の循環作用・・・
それは人間も自然の経験から学び、その尊さを知った人から
次の人、次の世代へといい自然循環が行われていくと
もっといい社会ができていきそうですね。
早くも谷間に夕陽がゆっくりと沈みかけています・・・
日暮れが早くなりました・・・