植田日銀総裁が3月19日の金融政策決定会合でマイナス金利政策を解除の決定をした。これに伴いイールドカーブ・コントロール(YCC)に基づく金融政策は中止したとのことだ。YCCの内容をよく理解していないが、これを基に債券の金利水準と返還期間の関係を比較検討しながら国債の金利をある一定の枠内に置くように管理するのだそうだ。
金利と景気は密接に関わっており、これまでの日銀のゼロ金利政策は金利をほぼ零、あるいはマイナスに設定することにより金を借りやすくして景気を良くしようとした政策であったが、一般的に、消費が活発に行われて景気が良い時期は資金需要が高まるため金利が上昇し、一方、モノが売れず企業が経済活動を抑制する時期は資金需要が低くなり、金利は低下する傾向にあるのだそうだ。ゼロ金利状態は景気が悪くて自然になる場合と景気を良くしようとして人為的に設定する場合の両方があるのだから、経済はややっこしい。
マイナス金利政策の解除による利上げの為日米の金利格差が和らぎ円安に歯止めがかかるとの期待もあったが、日銀総裁は記者会見で「当面、緩和的な金融環境が継続する」と強調した為、急激な金融引き締めを警戒していた市場に安心感が広がり、逆に円売りが勢いを増す結果を招き円安が進んだ。
27日、外国為替市場で円安の動きが加速し、対ドルの円相場は一時、2022年10月につけた1ドル=152円を更に下回り、1990年7月以来、約34年ぶりの安値を更新してしまった。 国内投資家は、「低金利が当面維持される」との日本銀行の説明を概ね素直に受け入れてしまった。日銀総裁はそのように説明しても、実際には警戒感から円安が止まると期待していたのではないかと推察するが、どうであろうか。
米国では歴史的な物価上昇を抑制するため米連邦準備制度理事会(FRB)が急ピッチで利上げをした結果、日米の金利差が拡大し、これが円安・ドル高の要因になった。しかし、日本ではなかなかデフレ状態から抜け出せなかったが、最近諸物価の上昇があり、日銀の目標2%を越えているが、賃上げの伴わない物価上昇は一時的な現象として金融緩和解除に二の足を踏んでいた。今年の春闘でこれまでにない大手企業の賃上げが実現されようやく日銀は解除に踏み切った。中小企業の賃上げはよく知らないが、全体として見た場合、賃上げ率は物価上昇率を上回ったであろうか。恐らく相変わらず物価上昇率の方が上であろう。
異次元金融緩和により日本はGDPの2.6倍の借金を抱える国となった。10年前この緩和を始めた当初インフレが発生すると危惧していたが幸いなことに発生しなかった。なぜインフレにならなかったのであろうか。国がばらまいた金は企業を潤したが、一般庶民には関係が無かった為ではないだろうか。しかし、インフレになる下地は十分にある。今後賃金上昇が続いたとしても、それ以上の物価上昇は確実にあると思われる。2024.04.06(犬賀 大好ー997)