日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

異次元金融緩和の出口とは

2018年01月20日 09時40分43秒 | 日々雑感
 政府・日銀が進める異次元金融緩和の副作用の論議が活発化し始めた。異次元緩和の一環として行われている日銀の上場投資信託(ETF)購入による株式市場のゆがみは、その副作用の一つであり、経済素人の目からもはっきりしている。すなわち日銀が株を購入する限り、その会社の信用は高まり、客は安心して株を購入出来るからである。その逆も真であり、副作用は明確である。

 しかし、国債買い取りによる副作用はその道の専門家により色々指摘はされているが、今一はっきりしない。曰く、日銀が銀行などから買った国債などの資産が巨額になり、将来の金利上昇局面で日銀の財務が悪化する可能性がある。しかし、金利上昇面での財務悪化とは、いかなる状況か等、素人にはよく分からない。

 また曰く、今の国債買い入れペースを続けると、本年半ばにも日銀が国債を買えなくなる限界を迎える。市場に出回る国債が極端に減り、金利が乱高下するなど、金融市場の大混乱を引き起こす恐れさえある、と。

 これらの副作用説も、素人にはよく理解できない。日銀が買えなくなる限界とは? しかし、日銀が国債購入が出来なくなることは、財務の悪化であり、市場の大混乱になるとの両者の主張は同じことを別の表現で言っているに違いない。しかし、漠然としており、余り危機感が感じられない。

 さて、通常、政府は政権運営の為国債を発行し、銀行や保険会社等がそれを買い取り、政府が運営資金を入手する。一方銀行は買い取った国債の利子で儲ける仕組みである。異次元金融緩和においては、銀行が保有する国債を日銀が買い取り、銀行は手に入れた現金を市場に投資し経済を活性化する仕組みとなる筈であった。

 さて個人が保有する国債は資産となることは理解できる。しかし、日銀の保有する国債を資産と考えてよいのだろうか。資産であれば多ければ多いほど結構となるが、そうであるならば国は無限に国債を発行し、日銀はどんどん購入すればよい。しかし、そんな都合の良い話にならないことは明白だ。そもそも、日銀が銀行に支払った金の出処は何処であろうか。日銀はお金を印刷する権利を有しているため、勝手に印刷して支払っただけではないか。

 日銀が保有する国債などの総資産が昨年5月末時点で500兆円を超えたそうだ。2016年の日本のGDPは537兆円とのことであるので、GDPに匹敵する資産を日銀が保有していると思えば、安心出来るが、私には借金のようにしか見えない。

 GDPは1年間に生み出された付加価値の総額で通常定義されるが、日銀は単にお金を印刷したに過ぎない。資産が増えないのに、お金の量が増えると言うことは、これまでの資産の価値を下げることに他ならない。そう考えると、異次元金融緩和の副作用は、インフレによる物価の上昇と思われる。緩和の開始時には物価上昇率2%の目標は簡単に達成され、その後物価上昇の歯止めが効かず、物価上昇は果てしなく続くと懸念された。

 また更に勘繰れば、日本が抱える1千兆円を超える借金もインフレによる解消が真の目的であると。

 しかし、500兆円のバラマキがあっても、2017年内には物価上昇は生じ無かった。これは黒田日銀総裁の誤算であったが、当然経済素人の予想からも外れた。原因は色々指摘されているが、バラマキが国民に平等になされず、大企業に偏ったことが大きな原因であろう。

 前述の専門家の副作用に関するもっと分かり易い説明が欲しいが、逆に誰にでも理解できる説明がなされると、異次元金融緩和は一気に吹き飛ぶ恐れがあるかもしれない。このため、漠然とした説明しか出来ないと考えると、空恐ろしくなる。

 日銀も国債買い取り量を維持すると言いながら、実際には減らしており、そろそろ緩和縮小だと市場が気が付いてくれるのを待っているようだ。

 某財務省幹部も、日銀が路線変更に動き始めたと市場が感じた時に、市場がどう反応するかが読めないし、その際に混乱するリスクを怖れていると発言している。

 しかし異次元緩和による副作用は終了宣言直後の混乱ではなく、これまでに市場に投入されたお金が引き起こす災いであろう。この金が回収されて初めて副作用が解消された、無事出口にたどり着いたと宣言できるのではないか。異次元緩和は簡単に始められたが、無事出口にまでたどり着くのは容易でない。2018.01.20(犬賀 大好-409)