日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

日本の赤字財政と現代貨幣理論

2019年04月17日 09時28分34秒 | 日々雑感
 米国で現代貨幣理論(Modern Monetary Theory略してMMT)と呼ばれる理論が話題となっているそうだ。民主党左派が財政支出拡大を求める際の理論的根拠として支持しているらしい。

 現代貨幣理論は、現在主流派の経済学とでは貨幣の理解からして真逆で、まさに地動説と天動説の相違と比肩できるほど、異なっているのだそうだ。

 その内容を簡単に言えば、政府は紙幣を印刷すれば借金を返せるのだから、政府が破産することはありえない。したがって、財政赤字を気にすることはない、とのことだそうだ。

 我が国は、GDPの2倍の借金を抱えているのに、相変わらず借金主体の国家予算を組み借金を増やし続けているが、円暴落の話は一向に無い。現代貨幣理論は日本の財政状勢を考察して出来上がった理論ではないかとさえ思う。

 独自の通貨を保有する国の政府は通貨を限度なく発行できることから、債務不履行に陥ることはなく、政府債務残高がどれだけ増加しても問題ない、という理論で、日本政府はどんなに意を強くしていることだだろ。

 従来の経済学の主流派からは通貨をやたら増やしたらインフレになると批判されるが、異次元金融緩和を始める際にもハイパーインフレが懸念され、筆者も信じた。しかし、今もってインフレ現象は起こっていない。

 この現象は色々説明される。例えば、従来の経済学では資金を大量に供給すれば物価が上昇するが、資金の供給を2倍にしてもモノの供給を2倍にすれば物価の上昇は起こらない、である。なるほどグローバル経済が広く行き渡り、モノの供給が容易になったので、需要と供給の関係から考えるとその通りである。

 また、異次元緩和ではお金は企業には行き渡ったが消費者にまでは回らなったため、消費が盛んにならずインフレが起きなかった、との説明もある。

 このように、通貨を増やしてもインフレが生じない原因は様々な要因が重なっているのだろう。現代貨幣理論が何処まで深く考察しているかは知らないが、自国通貨をいくら増しても国家財政は破綻しないとの理論は現在の日本では正しいように思えるが、どう考えても怪しい。

 さて先日国会で承認された国家予算約100兆円の内新規国債発行による収入はその約1/3である。昨年度に比べ好景気で税収が多いため、国債発行は減少はしているが、それでも1/3は借金に頼っているのだ。

 一方、国家予算における歳出部門で国債費に関する歳出は全体の1/4もあり、利払い費や債務償還費に充てられるようだ。すなわち、過去のつけを払うために必要な金である。

 従って、1/3-1/4=1/12の計算より、新規国債発行してもほとんど借金の返済で消え、全体の1/12しか社会保障費等の他の歳出に回せないのだ。しかも、この金は増える一方であり、その内借金返済のために借金する自転車操業状態になるのではないかと心配するが、現代貨幣理論ではどう説明するのだろうか。

 また現代貨幣理論では、例えインフレが生じてもこれを抑制するためには増税と言う手があるとのことだ。ところで日本政府はこの秋に消費増税を予定しており、その目的を社会保障費等の財源確保のためと言っているが、現代貨幣理論によるインフレ対策の一環でもあるのかも知れない。

 政府・日銀は物価上昇率2%を目標に異次元金融緩和を続けている。スーパーマーケット等での生活用品の値上げラッシュは続いているが、物価上昇率2%は未達のようだ。政府の統計そのものが疑問視されており、既にインフレの兆候が表れ始めているのではないだろうか。2019.04.17(犬賀 大好ー538)