現行の運転免許証制度では、75歳以上の高齢者に対して更新時に認知機能検査が課せられている。この試験での結果点数により3段階に区別され、第1分類では認知症のおそれがあると判断される。しかし第1分類と判定されても、即免許停止にはならず、医者との面談等により更新可能になる。
警察庁は、2018年1年間の第1分類者の約4万人の処分結果を報告した。それによると、0.2万人が取り消し・停止となり、1.8万人が自主返納、0.6万人が失効させ、残り1.4万人、つまり35%の人々が免許を更新したと言う話だ。
免許を更新しても、そのすべてが運転するとは限らないが、認知症の恐れがあっても約1/3の人々が運転する可能性があるのだ。
筆者もこの5月に免許更新のため認知機能検査を行い無事更新できた。しかし、更に9月には道交法違反をしたため再度認知機能検査を行う羽目になった。半年経たない内の検査のためか学習機能が残っており10点も良い成績を収めた。
このような検査に意味があるのか検査会場で質問した。この検査は直前に指示したことも記憶に留めないような認知症患者を発見するための検査であり、学習機能が残っておれば問題無いとの返事であった。
2018年に死亡事故を起こした75歳以上のドライバーは460人で、うち事故前に認知機能検査を受けた414人の検査結果を調べたところ、20人(5%)が第1分類の認知症の恐れあり、184人(44%)が第2分類の認知機能低下の恐れありだったそうだ。残りの半数がこの検査では問題無しとされたのだ。
こ の統計結果をみると、高齢者の運転事故と認知症の関係は思ったほど高くはない。最近、アクセルとブレーキを踏み間違え暴走したとの報道をよく耳にするが、半分は認知症と関係ないのだ。
高齢者の事故は認知機能低下ばかりでなく、運動機能や能力の低下が影響しているのだ。頭がしっかりしているつもりでも体がついて行かなのだ。
運動能力は年齢と共に徐々に低下するため、自分ではなかなか気が付かない。認知症の特徴はすぐに忘れることであるが、運動能力の衰えを自覚できないことや、若い頃の記憶がなかなか抜けないのも認知症の一種かも知れない。
高齢者の自動車運転は禁止すべきかも知れないが、運転は認知症を防止する役目もあるそうで、一概に断定できない。運転は、見る、聞く、判断する、操作するなど、脳の様々な機能を発揮しなければならない作業で、更に出かける、人と会って話をする、外食するなど、生きる意欲や楽しみにつなげてくれるものでもあり、運転をすることで、認知機能の低下を防ぐ意味もあるのだそうだ。
警察庁は自動ブレーキの搭載車に限った限定免許や、免許の取り消しを判断する実車試験の導入の可否について検討しているそうだが、急いでやって欲しいものだ。
2019.09.25(犬賀 大好-534)