今年は暖冬のお蔭で桜の開花時期が記録的に早そうで、本来であれば気分的に浮かれる季節であるが、最近の新型コロナウイルス騒動でお祭り騒ぎの自粛が要請され日本人は従順に従っている。この異常な状況も互いに無関係と思われるウイルス問題と地球温暖化問題がたまたま同時に現れたと理解するのが普通であろうが、果たしてどうであろうか。
インフルエンザ等の風邪の原因になる菌は暑さや湿気には弱く、冬が終わるころには終焉するのが常であり、トランプ大統領もう少し待てば収まると楽観的な見通しを演説したが、米国のアメリカ疾病管理予防センター(CDC)は新型コロナウイルスはどうもそうとは言い切れないと言っている。このウイルスは地球環境の変化に適応して変化してきたと想像すると自然の不思議さを感ずる。
コロナ騒ぎでこのところ地球温暖化の話題は影を潜めている。しかし、今年11月開催予定の第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)に向けて、この2月末までに削減目標を見直し再提出する必要があった筈であるが、日本政府の見直し論議に関しては全然聞こえてこない。目下新型コロナウイルス騒動でそれどころでは無いと言ったところか。
しかし新型コロナウイルス感染症対策本部の閣僚会議(2/16)に小泉進次郎環境大臣が欠席したとマスコミで批判されたが、削減目標見直し検討のためならまだしも、地元横須賀での後援会の新年会に出席していたためだと分かり大いに失望した。
小泉環境相は昨年12月11日、COP25の閣僚級会合に出席し、日本では石炭などの化石燃料発電が大半を占め、大量の炭酸ガスを排出していると各国から批判されていることに対し、日本なりに努力をしていることをアピールをしたが、単なる言い訳にしか聞こえなかったであろう。しかも、石炭火力発電の廃止など脱炭素に向けた具体策や現状の温暖化ガス削減目標の上積みも見送り、いつもの大臣の前向き姿勢はすっかり影を潜めた。
さて各国が現時点での削減目標を達成できたとしても産業革命以降の気温上昇は今世紀末に3℃となるとの予想で、出来れば1.5℃に抑えたいため各国に一層の努力と、削減目標の見直しを求められていた。これを受けて欧州連合(EU)は1990年比で40%削減という現在の目標を50%に高め、できれば55%に増やそうとの努力を示した。
ところで日本は2015年には2020年度の温室ガス排出量を「13年度比26%減」とする削減目標に掲げ、「50年には80%減らす」という長期目標も閣議決定しているが、それすら出来ず削減目標の修正も迫られている。
前述の26%削減目標では、総電力量の2割強を原発で賄う電源構成が必要となるが、現在の総電力に占める割合は約5%で遠く及ばない。原発は福島第1原発事故依頼国民のアレルギー反応が強く、自然エネルギー利用に切り替えるべきであるが、現状自然エネルギー17.4%で、炭酸ガスを排出する石炭や天然ガス発電が78%と大半を占め、多くの国から批判を受けている。
政府の取り組みは多くの識者を集めて検討はしているようだが一貫したビジョンがなかなか出て来ない。2016年に環境省主催の「気候変動長期戦略懇談会」で長中期的な地球温暖化対策を、2018年には内閣総理大臣から、パリ協定に基づく長期戦略策定に向け有識者会議を設置するよう指示があったそうだが、何が話し合われたのだろうか。2020.03.11(犬賀 大好-581)