9月21日、中国の習近平国家主席が第76回国連総会でビデオ演説をした。地球温暖化対策では、発展途上国の温室効果ガスの排出量削減に力を入れ、海外での石炭火力発電所の新たなプロジェクトを行わない、と述べ、国際社会への協調を強調した。
世界最大の二酸化炭素(CO2)排出国である中国が、国内で深刻な大気汚染を引き起こしていることは有名であるが、石炭火力発電所をアジア・アフリカ・中東諸国へ積極的に輸出していることも周知の事実である。中国はこれまで一帯一路の戦略の下、経済力を背景に力ずくで世界進出を目論んできたが、その限界を感じたのか、国際協調路線へと舵を切ってきたように思われる。
しかし、中国には欧米とは異なる中国独自の判断基準があり、言い分をそのまま信ずることは出来ない。例えば、中国による鉱物資源の輸出制限について、米国や欧州連合(EU)は中国をWTO協定違反と訴えていたが、中国は違反にはあたらないと主張を繰り返していた。
また、先日中国は環太平洋パートナーシップ協定(TPP)に加入を申請したが、台湾も続いて申請した。中国の参加は国営企業の支援等で難しいとのことであり、台湾の参加の方が可能性が高いと思われる。中国側は参加もしていないのに台湾参加に断固反対すると主張しているが、そもそも反対する権利があるのか不思議に思う。
さて、新型コロナウイルス対策では、先進国では3回目の接種が始まろうとしているのに、アフリカ大陸の発展途上国では第1回目の接種も数%以下とその格差は大きい。欧米が新型コロナウイルスのワクチンの買い占めで批判される中、新興国や途上国に自国製ワクチンを積極的に提供してきたのが中国だ。
先述の国連での習氏の演説で、中国は年末までに新型コロナウイルスワクチン20億回分を世界に供給すると目指していると改めて表明した。中国製ワクチンの効果を疑問視する声も広がっているが、多少効果が低くても、コロナ感染が少しでも防げれば大歓迎されるであろう。
これに対し、バイデン米大統領は9月22日、米ファイザー製ワクチン5億回分を追加購入し、途上国に無償で提供すると正式表明した。米国は6月に5億回分の購入を発表しており、それ以外の分を含め計11億回分以上を外国へ提供することになるそうだ。
日本の菅首相も、9月23日、日本が開発途上国を中心とした国際社会に新型コロナのワクチンを当初の目標を2倍に引き上げ計6000万回分を無償で提供すると発表した。世界各国・地域でワクチン接種の進展が、経済回復に向けた重要な鍵となる中で、開発途上国へのワクチン供給競争が激しくなっている。
中国が国際社会の仲間入りを目指すのであれば、中国製ワクチンを無償で提供する以前の問題として、その効果と結果等を欧米の基準に併せて公表することであろう。2021.09.25(犬賀 大好ー749)