日銀が2021年11月に発表した資金循環統計によると、2021年6月末時点の個人の金融資産残高は1992兆円となり、過去最高となったそうだ。 個人の金融資産とは預貯金、株式、投資信託等だ。一方、国の借金が、2020年12月末時点で初めて1200兆円を突破したとのことだ。国の借金とは国債と借入金、政府短期証券の残高を合計したものであるが、大部分は国債のようだ。日本政府が発行する国債は、銀行・保険会社・公的年金・日本銀行だけで約8割買っているが、これらの組織は、国民の預金や保険・年金の掛け金で買っていることを考えると、日本の借金は間接的に国民が負担しており、国の借金を支えているのは個人の金融資産と言うことになるだろう。
国の借金がGDPの倍以上となるのに国の財政が破綻しない理由は、借金と資産がほぼ均衡しており、日本を一つの家族と考えると、家族の中での貸し借りであり、外の世界には迷惑をかけていないので何ら問題ないからだそうだ。この論法に従えば、まだ個人の金融資産の方が多いので安心して借金できることになる。
しかし、この裏には国内の経済格差の拡大問題がある。個人金融資産の内訳は、現金・預金が1072兆円、株式等は210兆円、投資信託は89兆円等だそうで、現金・預金が大半を占めるが、これらは高齢者が多くを占める一方、貯蓄がゼロの若者も多いようだ。
貯蓄が全く無い割合は20代単身者の45.2%、30代で36.5%、40代で40.5%となっており、若いほど貯蓄しておらず、年代間の格差が大きいようだ。
しかし、より問題が大きいのは同世代間の経済格差だ。岸田首相の”成長と分配”において、この格差を縮めるための分配と位置づけている。しかしコロナ対策として分配された一昨年前の特別給付金一人10万円支給も貯蓄に回す人が多く、格差を縮めたとは言い難い。
安倍元首相が始めた異次元金融緩和は現在も続行中であるが、この政策は格差を縮めるよりは拡大する方向だろう。岸田首相も経済格差を問題とするならば、まず金融緩和の見直しから手を付けるべきだろう。
首相は分配のための原資を成長により得ようとしている。もっともであるが歴代の政権はいずれも失敗しており生易しいものではない。手っ取り早いのは税金であるが、消費増税は選挙での大敗を覚悟せねばならず、法人税に関しては国際競争力との関係、所得税に関しては累進課税の見直し等が必要になるが、首相は思い切った決断が出来るであろうか。
個人の資産と国の借金が均衡しているためか、日本の財政破綻は免れているが、最近円安が急激に進んでいるとの話だ。円の価値が低下していることを意味するが、これも異次元金融緩和の負の遺産だ。今年はインフレが一気に進みそうな嫌な予感がする。2022.01.05(犬賀 大好ー778)