日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

国債卓越研究大学制度で日本の科学技術レベルは上がるか

2023年04月23日 09時53分59秒 | 日々雑感
 財務省は、昨年度、原油などエネルギー価格の上昇や記録的な円安の影響で貿易赤字は20兆円を超えて過去最大となると発表した。ロシアのウクライナ侵攻が主な原因とのことであり、一過性のものであれば良いが、技術立国の名のもとに高度な工業製品の輸出で外貨を稼いできた日本の将来が心配になる。

 と言うのは、近年日本の技術レベルの低下が指摘されているからである。科学技術・学術政策研究所の2021年の報告によると、日本発の世界的に注目度の高い論文数は昨年の9位から10位に順位を落とし、これが日本の研究活動の国際的地位低下を示しているとしている。一方、中国は1年当たり論文数、注目度が高い論文数ともに世界1位だったそうで中国の躍進が注目されている。

 技術レベルは論文数のみで決まる訳ではないが、かって世界を制した半導体や太陽電池の生産量は今や台湾や中国に抜かれて逆に輸入する程にもなっており、論文数の順位の低下は将来を示唆していると心配になる訳である。

 政府も同様な心配があるのだろう。文科省は大学ファンドを通じて世界最高水準の研究大学の実現を目指す ”国際卓越研究大学制度”を検討し始めている。この制度は、大学が国際的に研究力を向上させるため、世界トップクラスの研究者の獲得や、次代を担う若手研究者を育成するための制度であり、認定大学を数校に絞り、1校当たり年間数100億円の分配を見込むそうだ。助成開始は2024年度以降を予定している。

 今年4月4日、文科省は公募した大学は10校と結果を公表した。昨年秋には相当数の大学が申請を検討していたが、補正予算で ”地域中核・特色ある研究大学強化促進事業”が決定し、応募をどちらか一方に絞る必要があり、こちらに方向転換した大学が多かったようだ。国際卓越研究大学への申請は、理系学部を持つ指定国立大学が中心となった。

 審査のため、文部科学省内には有識者会議を設置した。選定にあたっては、これまでの実績や蓄積のみではなく、世界最高水準の研究大学の実現に向けた変革へのビジョンと将来構想に基づき判断するとのことだ。

 国が補助金を出す支援事業は数多あるが、そこで採用される大学はこれまで圧倒的に東大が多い。東大は実績や蓄積があるため当然のような気がする反面、文科省は東大に決めておけば結果がどうであれ、言い訳が出来るとの安易な気持ちから東大を優先させている気がする。有識者会議のメンバーの詳細を知らないが、世界最高水準とするための方策は容易でない。研究者には自由な発想で自由に研究してもらわなくてはならないが、独りよがりでは困る。しかし、独自な発想も当初は他人に見向きもされないこともあり、そこの判断が難しくそれが出来る人はめったにいない。

 そもそも国立大学の独立法人化移行後に大学の衰退が目立つ。国が必要な財政措置を行いながら、法人化した各大学に実際の運営を任せることで、大学の活性化を図るのが本来の目的であるが、実状は大学の衰退だ。国際卓越研究大学制度も財源を国が握っており使い方を細かくチェックするに違いない。結果も独立行政法人制度と同じになることを危惧する。2023.04.23(犬賀 大好ー908)