日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

老後資金2000万円問題は解消されたのか

2020年08月08日 09時15分35秒 | 日々雑感
 6月17日閉幕した第201通常国会では年金問題はほとんど話題とならなかった。新型コロナウイルス騒動に紛れたせいもあるのかも知れないが、この問題は根が深く八方塞りで与野党とも手が付けられない状態に陥ってしまったのではないだろうか。

 事の始まりは、昨年6月に金融庁の報告書”高齢社会における資産形成・管理”が公表されたことであった。この資料の試算によると老後に必要な資金は2000万円だと言うのだから、世間が大騒ぎをしたのだった。政府は、この報告書が年金の将来に対し不安を煽る誤解を招くとして、報告書を無視する作戦に出た。理由は2004年に成立した”100年安心プラン”は老後を年金だけで安心して暮らせるとの謳い文句であったが、それを否定した報告書であったからだ。

 100年安心プランは、当時崩壊すると言われてきた年金を、100年間持続可能な年金改革として、年金財政の収支バランスをマクロ経済スライドと呼ばれる仕組みを取り入れて年金が支給され続ける年金システムであった。しかし、少子高齢化が格段に進んだ上、年金不払いが3割以上になり、破綻の崖っぷちにあることが明らかとなった。麻生財務相もこの状況を充分認識しており、当初先の報告書が良く纏められていると評価していたが、世間の非難を浴びると一転し無視作戦に出たのだ。

 厚生労働省の発表によると、2018年度の国民年金保険料の納付率は68.1%で、未納率は約32%であったそうだが、この原因は単に納付金が無いと言うより、将来国の年金を当てに出来ないと見限った人が多くなったからであろう。テレビのCMでも個人年金積立を推奨しており、麻生氏もこの認識は世の中の常識とでも思ったのであろう。

 実際、崖っぷちの年金システムを維持するために様々な苦労をしているが、抜本的解決にはなっていない。例えば国民年金も厚生年金もいずれも原則的には満65歳から支給が開始されるが、満60歳から受け取りたい場合は受給予定額の30%減額となり、満70歳からと遅めに受け取る場合は受給予定額の30%増額した額を受け取ることができるようにした。これは当面の支払額を少なくするような仕組みであろうが、当面の逃げ切り策でしかない。

 現在、国家予算の歳出の1/3は社会保障費、一方国の歳入の1/3は国債発行による借金となっている。しかも、国の借金の累積は既に1千兆円を越え、更に今年も新型コロナウイルス騒動、九州集中豪雨災害、東京五輪延期等で出費は加速的に膨張している。

 国は年金の財源を増やそうとで、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)を作り、年金の積立金を管理して運用している。7月4日、コロナ騒動のあおりを受けて年金資金運用は8.2兆円の赤字であったが、これまでの累積では黒字だから問題無しとの気休めの釈明であった。GPIFの日本の株式に対する莫大な投資は、日本の社会主義国家化を思わせ、かっての社会主義国家の没落を思い出させる。

 さて今国会での公的年金に関する主な改正事項は、国民年金保険料の申請全額免除基準に未婚のひとり親や寡夫を追加する、等であり、年金システム全体に影響する大きな変更点はない。これは現在の年金システムが安定維持されているからではなく、八方塞で身動きが取れない状態に陥っているためでは無いかと危惧する。2020.08.08(犬賀 大好-624)


コメントを投稿