日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

美容整形は仁術にあらず

2017年05月06日 09時47分56秒 | 日々雑感
 美容整形と言えば韓国と思っていたが、日本でも結構盛んなようだ。江戸時代の儒学者、貝原益軒もその著書「養生訓」の中で、”理由も無しに毛髪を切ることや、肌を傷つける行為などは、もっとも親不孝な行為である”、と述べているが、この儒教精神の影響があるため美容整形はまだ日陰の存在だと思っていたが、最近では違ってきたようだ。

 最近、美容整形に関するテレビコマーシャル(TV CM)が目に付く。高須クリニックの高須克弥氏は、メディアを使って美容整形を一般に認知させた先駆者であるそうだ。最近では、若手の先生に”好きな言葉は情熱です”等と言わせ、美容整形が一般化したようなイメージを植え付けている病院もあり、親不孝をどんどん勧めている。

 一般に病院は、腹痛等の為仕方なく行く所であり、せいぜい駅の看板で近隣の人に宣伝する位で、TV CMなど必要が無かったであろう。美容整形は少なくともお金に余裕がある人が行く所であろうので、TV CMが有効となるのであろう。

 国際美容外科学会(ISAPS)が発表した統計によると、2014年に最も多くの美容外科および美容非外科処置を行った国の一位は米国、日本は韓国を抜いて第3位であるそうだ。美容外科とは、見た目の良さ、見た目の若さの実現を目的として、メスを用いた手術によって行う治療だそうだ。一重まぶたを二重まぶたにするとか、鼻を高くする等が相当するようである。

 非外科処理とは、注射や薬などによる治療で、しわ、しみ、たるみ、毛穴の開き、ニキビなど、老化や肌荒れを改善するために行う治療で高齢者に多そうな治療である。

 ”美容目的”である美容整形の治療には、保険が効かないのは当然であろう。保険は、健康を守るために作られているため、受けなくても健康には影響のない美容整形は対象外なのだ。そのため美容外科での治療は、一般的に高額な治療費になるようだが、女性の美に対する執着は激しく、美の前には高額の出費も大した問題にならないようだ。

 これを反映しているのか、美容整形外科の医師は他の科の医師よりも年収がよいといわれている。外科や内科など他の科に勤める勤務医の平均年収は、大体1200万円から1500万円ほどだそうだ。最近の調査によれば美容整形外科医の平均年収は4000万円から5000万円だそうだ。医者は、一般サラリーマンの年収に比べると高給取りと言われているが、その中でも美容整形の医者は断トツであることになる。

 医者と言えば、一般的に人命を左右する、精神的にも肉体的にも大変なストレスを伴う職業である。人は病気や怪我にいつ遭遇するか分からない。このため医者は24時間待機状態となる。病気の種類は無数であるが、その中から選択して何らかの処理をしなくてはならない。このような大変過酷な労働条件の下での仕事であることを考えれば、当然高い報酬は納得できる。

 これに対し、美容整形の医者は、人命には直接関係が無く、また深夜に対応を要するといった緊急性は無い。この点精神的にも肉体的にも気楽な商売だ。高齢化社会の進行と共に、社会が安定し金銭的に余裕のある人が増加している今日大いに儲かる商売となっているのだろう。

 医者は、昔から人の命を扱う高尚な仕事と尊敬されてきた。貝原益軒も ”養生訓” のなかで「醫は仁術なり。人を救ふを以て志とすべし」と記し、医は人命を救う博愛の道であると説いている。しかし、美容整形に関する医者には当てはまらない。

 膨大な学費を学費を回収しようとしているのか、現在でも医学部に進む学生の一部は仁術より、算術を目的にしている。逆に、美容整形で学費の回収が簡単に可能と分かれば、医学部入学のために無理をしてでも資金の投入を行う者も出てくるであろう。何とも嘆かわしいが、これも時代の流れであろうか。2017.05.06(犬賀 大好-335)

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