日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

引くに引けない黒田総裁の金融政策

2018年01月03日 09時49分36秒 | 日々雑感
 昨年暮れの金融政策決定会合において、現行の金融政策の続行を8対1の賛成多数で決定したそうだ。すなわち長期国債買い入れの目途である”約80兆円/年”を維持し、指数連動型上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(J-REIT)の買い入れ方針にも変更は無かったとのことだ。

 新任の民間エコノミスト片岡剛士審議委員は、更なる金融緩和の拡大を主張して、現状維持にただ一人反対したとのことである。金融緩和の副作用が懸念される現在、なお金融緩和の拡大を主張するとは驚きだ。審議委員の選考基準を知らないが、恐らく異次元緩和に固執する安倍首相の意向が反映された人事か、安倍首相の意向を忖度した人事であろう。

 黒田総裁は就任直後の2013年4月に、2年で物価上昇率2%を実現すると自信たっぷりに宣言したが、2017年7月には2018年ごろの実現予定から2019年ごろと6度目の先送りをした。これほど約束違反をしているのに、総裁を続けられるとは余程面の皮が厚いとしか思えない。あるいは、経済とは予想が外れるのが当たり前の世界であろうか。

 黒田総裁の金融緩和政策の成果として、現在日経平均株価は約26年ぶりの高水準であり、有効求人倍率はバブル期を上回り空前の人手不足状態となっていることが挙げられる。世の中に何百兆円のお金をばらまけば当然と思えるが、後始末はちゃんとやって貰えるだろうか気になるところである。

 異次元緩和を4年半続けても、物価上昇率は目標の2%には程遠い。市場に出回った資金は企業の将来への投資に回る筈であったが、企業の400兆円を超える内部留保や不動産投資に回ってしまった。地方の不動産が多量に放棄されるのに、東京銀座の土地だけはバブル期以上に高騰するとのいびつな状態が起こっている。

 日銀は、物価上昇率2%に向けて年間80兆円の国債購入をしてきた。日銀が保有する国債などの総資産が昨年5月末時点で500兆円を超え、長期国債の保有額は390兆円だそうだ。2016年の日本のGDPは537兆円とのことであるので、GDPに匹敵する資産を抱え込んでいるのだ。この金を資産と表現すればまだ安心出来るが、私には借金と表現した方がふさわしように思える。通常国債を買えば利子が付いてくるが、利子を払うのは日銀自身であろう。蛸が自身の足を食べて食をつなぐと言われるが、これを彷彿とさせる。大量の金を市場に投入して何事も無かったかのようにこのまますまし顔でおられる筈が無い。

 国債の買い増し量も今年も年80兆円を目途としているが、最近は年40~60兆円程度に縮小しているそうだ。先日の金融政策決定会合でも現状維持と言いながらも、実質的には出口に向かっているのだろう。副作用の怖さを認識し始めたのでないかと、逆に恐ろしくもなる。

 本心は購入を中止したいが、そうすると一気に国債の価値が暴落するので、追加購入の可能性を残しつつ、出口に向かい購入ペースを80兆円/年以下となるよう調整しているに違いない。

 一方、日銀は上場投資信託(ETF)も年6兆円規模で購入し、株価を押し上げる管制相場を作っている。政府が某社の株を保持している限り、その会社はつぶれる筈が無いとの安心感より株を購入する人も多くいるに違いない。逆に、政府がその某社の株を手放せば、一気に株価が下落する可能性は大いにある。国債購入をゼロにするより、こちらの方が恐ろしい結果が待っている感がする。
金融緩和の後始末は日本ではもたついているが、欧米各国は着実に出口に向かって計画を実行している。

 米連邦準備制度理事会(FRB)は12月13日の連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利を0.15%幅引き上げることを決めた。FRBは9月の資産縮小決定に続く追加利上げを市場予想通りに決定し、順調に金融緩和の出口に向かっているとのことだ。

 欧州中央銀行(ECB)は11月26日の理事会で量的金融緩和の規模を縮小することを決めた。国債などの購入規模を来年1月から、月600億ユーロ(約8兆円)から半分にするそうだ。

 黒田総裁は、当初インフレになると皆が思えば経済はインフレ化すると、経済は気持ちの問題でもあると主張していた。逆に異次元緩和が中止となれば一気に景気が悪くなると思い込み、引くに引けない状態に陥っているのではないか。手をこまねいている間に副作用はどんどん大きくなる。2018.01.03(犬賀 大好-404)

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