日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

大阪万博、IR事業で維新の会は政権に歩み寄る

2023年09月09日 09時28分56秒 | 日々雑感
 日本最初の統合型レゾート(IR)誘致を目指し国に区域認定申請を行った大阪府・市と長崎県の2か所の内、今年4月、大阪府・市の整備計画が正式に認定された。大阪は2029年の開業を目指して整備計画を進めていく予定で、このまま順調に計画が進んだ場合、日本で最初のカジノは大阪に誕生する筈だ。

 なお、長崎IRの認定は見送られ、継続審査となった。国は、その理由を公表していないが、有力な理由と考えられているのが、開業に必要な資金調達に不安があることと推察されるようだ。

 また、横浜市は2019年にIR誘致を正式に発表したが、地元経済界や市民等からの反対が強く、また2021年8月の横浜市長選では、IR誘致を推進してきた林前市長を破り、カジノ反対派である山中氏が当選し、2021年9月に正式に撤退を表明した。

 大阪と横浜を比較した場合、東京に近い横浜の方が集客には特にカジノにはがぜん有利であろう。そのためか、当初大阪IRへの参入意思を示していた総合リゾート関連事業者の7事業者中6者が横浜への参入に転向していたが、横浜市民の反対に押し切られた。

 さて、大阪はIRと万博のセット誘致を掲げ大運動した結果、2025年の万博候補地にも選出された。当初は万博と同時期にIRを開業させたいと考えていたが、新型コロナウイルスの影響や国のスケジュール遅延により、2025年の同時開業を断念し、2020年代後半に部分開業と方針を変更していたが、更に遅れ2030年秋頃となる見込みのようである。更に開業時期の遅れと共に建設費用の増加も問題となっている。

 さて、当面差し迫っているのは万博の方だ。今年の初め頃より万博会場の建設遅れが話題となっているが、9月4日現在、参加国が自ら費用を負担して自由に設計・建設するパビリオンについて、基本計画書を大阪市に提出したのは50か国中韓国等4カ国しかないそうだ。この遅れが開催当事国か日本にあるのか分からないが、建設材料の高騰、人材不足や工期の短さから、日本のゼネコンはどこもやりたがっていないのだそうだ。

 インターネットが普及している現在、万博の本来の開催意義が問われている一方、開催地元における開催目的は税金の投入によるインフラ整備であることは一貫している。特にIRは、万博との相乗効果を狙って同時開業が目標とされたが、早くも頓挫した。IRはカジノで儲ける仕組みであることから批判も大きいが、国としても開業に責任あることから、万博の開催遅れが心配になり支援に乗り出したが、後れを取り戻せるであろうか。

 政治団体維新の会は大阪経済の起爆剤として万博やIRの誘致に力を注いだが、これらの開催は地方自治体単独では負担が大き過ぎるため国に頼らざるを得ない。この点で維新の会は政権に頼らざるを得ず、大きな借りを作ったことになる。この秋にでもあると言われる衆議院議員総選挙で大阪地区は、自民、公明や維新の会の争いが激しいと言われているが、選挙でこの借りを返さざるを得なくなるだろう。2023.09.09(犬賀 大好ー945)

国際卓越大学は日本の技術力低下を防げるか

2023年09月06日 10時53分53秒 | 日々雑感
 昨年5月に国会で成立した「国際卓越研究大学法」は、12月から今年3月まで対象校を募集し10校が応募した。審査は国内外の大学や企業の関係者10人でつくる文科省の有識者会議で4月から始まった。審査の主なポイントは、〇国際的に卓越した研究成果を出せる研究力〇実効性が高く意欲的な事業・財務戦略〇自律と責任のあるガバナンス体制の三つだそうで、5カ月間で12回の会合を重ね、書類審査や面接のほか、審査の最終段階の7月、東北大と東京大、京都大については現地視察もしたそうだ。

 その結果として、文科省は、最初の国際卓越研究大学に東北大学を選定したと発表した。選定されると、10兆円規模の大学ファンドの運用益から東北大学には年間100億円前後が最大25年間助成される予定で、世界トップクラスの研究環境の整備等が期待されるとのことだ。

 選定から漏れた京都大学は、研究組織改革と人材・研究環境への投資、研究成果の活用、新しいガバナンス体制の確立等を推進するとの方針を説明したが、有識者会議は、執行部の変革への強い意志は高く評価できるが、他方、国際標準の新たな体制に移行するには責任と権限の所在の明確化が必要である等の意見を付したそうだ。これらの説明だけでは何が欠けているのかよく分からない。

 そもそも国際卓越大学法は、近年の日本の技術力や研究力の低下を懸念し、技術立国日本の再生を図ろうとするのが目的である。かって大学の活性化を図るために大学の独立法人化等を始めとして各種の支援を行ってきたが、芳しい成果を得られなかった。

 例えば、研究内容が注目され多く引用される論文の数で、日本がイランに抜かれて前回の12位から過去最低の13位にさらに順位を下げたことを今年8月、文部科学省の科学技術・学術政策研究所が公表した。論文数だけで判断するのは早計であるが、研究開発分野における日本の国際的地位の低下が進んでいることは間違いないだろう。

 日本の研究力低下の一因として指摘されるのが若手の人材不足だそうだ。実際、日本の博士号取得者は2006年度をピークに減少しているようだ。博士号を取得してもその後の研究活動の環境の確保等が困難であるからだ。この一点を捉えてみても、数校の特定大学に多額の資金を提供したところで何の役にも立たない。

 また、選考基準にガバナンスとの言葉がたびたび登場するのが気になる。膨大な資金を運用するため当然ガバナンスは必要であるが、学問研究の場への政府の過度な介入は、言論の自由の圧迫につながり、民主主義の土台を危うくすることに注意する必要がある。政府は日本学術会議の数名の推薦候補者の任命を拒否し続けている。ガバナンスを強調するのは学術会議が政府の言いなりにならないことが背景にあると勘繰ってしまう。

 独創的な研究は自由な発想の下に生まれる。最近の研究は実験施設の建設等で莫大な資金が必要なことは確かであるが、金があるほど施設の運用管理に気を取れら、頭を使わなくなることも確かである。
2023.09.06(犬賀 大好ー944)

日本からの水産物輸入規制と中国経済

2023年09月02日 10時09分48秒 | 日々雑感
 今月24日午後1時ごろから東京電力が原発の処理水放出を開始したことを受けて、中国政府は日本からの水産物の輸入を停止すると発表した。多核種除去設備(ALPS)処理水から海に放出されるトリチウムを毎年22兆ベクレル放出すると予想されているが、この量は中国浙江省の秦山原子力発電所の年間排出量の約10分の1程度であるのに、このことを棚に上げておいて日本水産物の全面的輸入の一時禁止にまで踏み切ったのは他に理由があると思わざるを得ない。

 一つには、現在中国は経済悪化に喘いでおり、庶民の不満を外に向けさせる為ではないかと思われる。SNS上では日本からの水産物の不買や果ては化粧品の不買まで拡がっているとのことだ。しかし、これに対する日本を擁護するような投稿は即座に排除されるとのことで、背後では政府が糸を引いていることに間違いない。

 さて、2023年の中国の成長率見通しを+5%以下に下方修正する動きが広がってきているようだ。昨年の中国の成長率も+3%と政府見通しを下回ったが、今年も2年連続で政府見通しを下回る異例の事態となっている。更に来年の成長率も+5%を下回るとの見通しも出ており、習近平総書記の焦りの一つが、水産物輸入禁止であろう。

 中国では、ゼロコロナ政策解除後の景気回復に急ブレーキがかかり、更に、デフレ、就職氷河期、不動産不況といったバブル崩壊後の日本と非常によく似た経済現象が見られ、中国経済がバブル崩壊後の日本経済と同様に、長期的な低迷に陥るリスクも見られ始めたとのことだ。

 中国経済が長期停滞を回避するための処方箋は、例え景気が悪化しようとも、安易な景気対策としての不動産規制の緩和やインフラ投資の拡大等の従来構造を温存しないことのようであるが、足元では不動産企業の破綻で不動産危機に陥るリスクの可能性が高まっているようだ。

 しかし、不動産業に代わって今後の経済成長を牽引するはずだったハイテク分野も米国政府による規制強化で成長が難しくなっている。すなわち米国バイデン政権が次々に打ち出す対中包囲網に日本が従っていることも背景にある。

 米国は、2022年10月に、スーパー・コンピュータや人工知能(AI)に使う先端半導体やその製造に必要な装置、技術について、中国への輸出を事実上禁じている。その際、半導体製造装置に強みをもつ日本にも同調するよう求めていた。日本政府はこれに応えて今年7月23日、先端半導体の製造装置等23品目を輸出管理の規制対象に加え、事実上の中国向け輸出規制措置に踏み切った。

 中国政府の日本からの水産物の輸入規制は、半導体関係の日本の規制を緩める為の交換材料では無いかとの観測もある。日本の中国との水産物資源の取引額の絶対額は余り大きくないため、日本経済への影響は少ない見通しであるが、これから中国は何かにつけて日本へのイチャモンを付けてくるだろう。2023.09.02(犬賀 大好ー943)