日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

原発事故の処理水の放出作業完了にあと何年必要か

2024年03月13日 10時43分58秒 | 日々雑感
 東京電力は、福島第1原発にたまる処理水を2023年度は4回で計3万1200 トンを、2024年度は7回に分けて5万4600トンほどを放出する等、1年で10万~12万トンの処理水を放出する予定とのことだ。

 福島第一原発では、東日本大震災で原子炉核容器内に溶け落ちた核燃料を冷却するため、あるいは雨水や地下水の流入で恒常的に高放射能の汚染水が1日140トンのペースで発生しているとのことだ。2011年に事故を起こし、2014年には1日540トンの汚染水を発生していたが、地下水の流入防止等の対策により現時点では減っているが、この状態は廃炉が完了するまで変わらないと思われる。この汚染水は敷地内の専用の「多核種除去設備(ALPS)」に送られ複数の吸着剤を使って多くの放射性物質が取り除かれるが、トリチウムという放射性物質は取り除くことが難しく処理後の水の中に残ってしまうため、海水で薄めて海洋に放出するとの面倒な後始末が必要になるのだ。

 汚染水あるいは処理された水はこれまで敷地内のタンクに保存されてきたが、タンクの敷設場所も第1原発の敷地内には無くなり、海洋放出せざるを得なくなった。ALPSからの処理水の年間発生量を3万トンとし、1年で10万~12万トンの処理水を海洋放出するとした場合、タンク内の処理水は1年で7万~9万トンが減ることになる。構内のタンクには現在約132万トンを保管しているため、単純計算では今後15~19年で全ての放出が終わることになるが、廃炉が完了しない限り汚染水が発生する為、海洋放出は続けざるを得ない。

 海洋放出する処理水は国際原子力機関(IAEA)の定める基準に則り放射性セシウムなど29種類の放射性物質をすべて除去し、トリチウムは人体や自然界に影響が残らないように十分薄めて海洋放出する。IAEAの安全基準がどのように決まったか分からないが、放射能が遺伝子に及ぼす影響は何世代も経た後に表れることも考えられるが、そこまでは考慮されていないだろう。現時点で、処理水の海洋放出を年に数回に分けて行われる理由は、ALPSの処理が追い付かない為か、あるいは海洋の汚染を少しでも少なくしようとの配慮もあるのかも知れないが、詳しくは分からない。

 さて、肝心の廃炉作業の進捗であるが、今もって見通しの立たない最大の理由は溶け落ちた核燃料(デブリ)の取り出し難航だ。今年1月ロボットアームで取り出す試みをしたが、精度不足等の理由で失敗に終わった。アーム改造には時間がかかることから、今年10月までに釣り竿方式に方針変更するようだが、この方針では取り出し量に限界があり、全量取り出しが何時になるか全く見通しが立っていない現状だ。デブリがある限り水で冷やす必要があり、この為汚染水が発生する。従って、処理水の海洋放出の完了は何時になるか分からない。2024.03.13(犬賀 大好ー991)

日本と韓国の少子化対策の違い

2024年03月09日 10時45分41秒 | 日々雑感
 厚労省が公表した統計では2023年の出生数が大きく落ち込み、今年6月ごろにまとめる「合計特殊出生率」でも過去最低タイとなった前年の1.26を下回る可能性があるとのことだ。日本出生率低下の主な原因としては、・未婚化や晩婚化の進展、・育児に対する経済的負担が大きいこと、・育児や家事に対する女性の負担が大きいこと等、が挙げられている。

 岸田首相は異次元と称する少子化対策の必要性を就任当初から訴えており、昨年6月に閣議決定した「こども未来戦略方針」において、2024年度から2026年度までの3年間で年3兆円台半ばの予算を投入し、児童手当の拡充等に充てることを明記した。しかし日本の財政難の折り財源の確保に苦労しており、紆余曲折がありそうだ。

 日本は少子高齢化がじわじわと進んでおり対策の本気度が今一見えないが、隣の国韓国は日本以上に深刻な様子だ。韓国では去年、出生率が0.72と過去最低を更新し、少子化に歯止めがかからない状況が続いているとの報道があった。

 韓国の人口は2022年の夏の時点で5167万人で、試算によると出生率が0.6から0.8程度で推移した場合でも、2072年には人口が3017万人となり、4割以上減少するとしている。また、平均寿命は今後も伸びて高齢化率も増加していくとみられ、先述の出生率が続いた場合、65歳以上の高齢者の割合は2072年に51.2%となり、国民の半数以上が高齢者になると試算している。すなわち、50年後には3千万人の人口となり、その内半数が高齢者となる予想だそうだ。韓国の超少子化は、国の安全保障を脅かす事態にもなっている。2040年には20歳の男性の人口が半減するとされる中、成人以上の男性に兵役義務がある韓国では、国防に当たる兵士が不足すると見られているのだから、深刻な状況だ。

 韓国で出生率が低下している要因の1つとして、日本と同様に結婚をしない人の増加や晩婚化が進んでいることが指摘されているが、その理由として韓国特有の事情もあるようだ。すなわち結婚に伴って住宅の購入が必要という考え方が根強くあるそうで、この背景には男尊女卑の考えがまだ強く残っているからだそうだ。また、賃貸住宅も、日本円にして数百万円から数千万円をまとめて支払う韓国特有の保証金の制度があり、結婚を考える若い世代には大きな負担となっているようだ。住宅の購入や保証金制度の問題は政治で何とかなりそうであるが、結婚に対する若者の考え方の変化は日本と同様に政治だけでは如何ともし難いであろう。

 少子高齢化は先進国の一般的傾向であるが、ドイツは1994年には1.24まで落ち込んだ出生率が、その後は上昇傾向に転じ2021年は1.58に回復したそうだ。ただ、上昇の背景は近年のシリア難民受け入れなど、移民政策が要因とされ、手放しで喜べない状況だ。

 韓国では、ドイツを見習ってか外国人労働者の誘致に熱心であるが、最近日本でも技能実習制度の改善等、積極的な姿勢に変化しつつある。日本と韓国は世界的に見れば同質であり外国人労働者はどちらの国を選択するであろうか。2024.03.09(犬賀 大好ー990)

先のことをあまり考えなかった原発政策

2024年03月06日 11時10分44秒 | 日々雑感
  原発の運転期間は、法令によって1回に限り20年を超えない範囲で延長が認められているが原則40年が上限と決められており、廃炉そのものは全ての原発がいずれ迎える共通の課題である。原発事故が原因で廃炉となった福島第1原発における廃炉作業の困難さが時折ニュースで報道される。しかし通常の寿命を迎えて廃炉となった原発の報道は少ないが、その廃炉作業も簡単ではなさそうだ。

 2021年2月時点で、全国の電力会社は建設中も含めて合計60基の原子炉を抱えており、このうち、廃炉が決まっているのは24基もあり、福島第一原発の6基や中部電力浜岡原発1、2号機等24基だ。日本でこれまでに廃炉が無事終了したのは国内に1基だけある。現在の日本原子力研究開発機構(JAEA)の動力試験炉である。1976年に運転を終え20年の廃炉作業後1996年に更地になり、現在に至っている。この原子炉は試験炉であり、定格出力は1.25万kWで、これは現在の商用原発(1基あたり100万kW程度)と比べるとかなり小規模であるが、それでも20年要した。

 この他、米スリーマイル島の原発があるが、2号機が1979年に炉心溶融事故を起こした後、溶けた燃料はほとんど取り出されているようだが、建屋や冷却塔は残っており、2041年に解体を始め、2053年に終えるとしている。採算の悪化で閉鎖を余儀なくされた1号機は2019年営業運転を終了し、今後60年をかけて廃炉にしていく予定のようだ。つまり、世界的に見ても商用の原子炉で廃炉作業が完全に無事終了した前例はなく、廃炉作業の過程で予想外の問題が発生することも覚悟しておかなくてならない。

 さて、浜岡原発1号機(54万Kw)、2号機(84万Kw)の廃止措置計画は、2030年代後半までに約30年間にわたり実施する予定とのことだ。同計画では期間全体を第1段階「解体工事準備期間」から第4段階「建屋等解体撤去期間」までの4段階に区分し段階的に進め、2023~2029年度は原子炉領域解体撤去期間となっており、現在特にニュースになっていないところを見ると、順調に進んでいるものと思われる。

 福島第1原発の1~4号機は東日本大震災で原子炉が破損し核燃料が流れ出しているためその取り出し作業が難儀を極めているニュースが時々報道される。当初廃炉作業を始めてからすべての作業を終えるまでに最長で40年かかるとしていだが、現時点では何時終了するか見通せない状態だ。

 5号機(78.4万kW),6号機(110.0万kW)は、事故当時、定期検査のため運転を停止していたため、津波が襲来した後も大きな損傷には至なかった。しかし、2014年に廃炉が決定し、今後は、研究開発等の実証試験で活用することを検討しているそうで、当面廃炉作業は無いようだが、問題先送りの一つだろう。  

 日本は将来原発の廃炉作業に膨大な費用とマンパワーを抱えており、また廃炉作業で生ずる核廃棄物の処分場が決まっていないことも含め、先のことを考えずに良いとこ取りを先にしてしまった反省を大いにするべきであろう。2024.03.06(犬賀 大好ー989)

大阪万博のリングはレガシーとして生きるか

2024年03月02日 10時40分18秒 | 日々雑感
 大阪万博会場中心部を取り囲む木製のリングは建設費が約344億円、幅30メートル、高さ12~20メートル、1周2キロで来場者は屋根の上と下を回遊でき、完成すれば「世界最大級の木造建築物」となることが売りだそうだ。この木造建築物は、日本の伝統工法である「貫工法」と呼ばれる柱と柱の間に「ヌキ」と呼ばれる木材を入れて組み上げられておるのだそうだが、本来は木と木の間の固定用には金属類は一切使わずすべて木だそうだが、ここではクギや金属板やボルトも使われており、またリング本体はフィンランドのアカマツ材による集成材を用いていることから日本伝統工法による建築物と宣伝するにはちょっと無理があるようだ。

 万博を訪れた人はこのリング上を散策しながら、万博の理念である「多様でありながら、ひとつ」を噛みしめる為のシンボルだそうだが、ロシアによるウクライナ侵攻やイスラエルによるパレスチナのガザへの侵攻等、世界は争いが絶えない現状を考えると空しく感ずるのではないだろうか。また、万博へイスラエルは参加するのことだが、来年4月の開幕までにパレスチナとの間に戦争が終結し和平が進み、世界はひとつと胸を張ることが出来るのであろうか。また、ロシアは、「ホスト国との意思疎通が不十分だ」と訳の分からぬ理由を付けて万博からの撤退を表明しているが、ウクライナとの戦争で万博参加の余裕が無いのだろう。万博からの撤退ではなく、ウクライナからの撤退であれば、世界は大歓迎だし、リングの理念は輝いたことだろう。

 このリングも184日間の会期が終わると撤去する予定であったが、税金の無駄遣いとの声も大きく、日本国際博覧会協会は、大阪万博の取り組みを一過性のイベントで終わらせることなく、後世に引き継ぐレガシーとして残していけるよう、有効に活用する可能性を検討しているそうだ。しかし、再利用するにしても「世界最大級の木造建築物」の特徴が逆に仇となりそうだ。世界はひとつのコンセプトを重んずれば、バラバラにする等は以ての外であろう。纏めて移すとなれば、莫大な費用と広い空き地を探さねばならず住民の少ない地方にならざるを得ない。従って万博跡地を公園にしてそのまま残すことが一番の経済的な方法であろうが、木造なだけに維持費が高くなりそうだ。この維持費を賄う為に集客効果がある公園としなければならないが、大阪人の好みの”ごちゃごちゃ”感を出すためには広すぎる感じもする。

 持続可能な社会やインクルーシブ社会の実現が世界的な課題になっている現代、一方では地域紛争が激化する現代、「多様でありながら、ひとつ」を理念とするリングが万博が終わってもレガシーとして残ることを祈るばかりである。2024.03.02(犬賀 大好ー988)