土曜日は古寺を歩こう。

寺勢華やかな大寺も、健気に法灯を守り続ける山寺もいにしえ人の執念と心の響きが時空を越え伝わる。その鼓動を見つけに…。

教林坊、かくれ里、石の寺です。

2015年08月07日 | 滋賀の古寺巡り




(2015.08.01訪問)


お庭の緑と巨石の中に埋もれたお寺とでも申しましょうか、繖山裾の山内一帯が緑に包まれ、聖徳太子の霊窟伝承が色
濃く残り、巨岩巨石を山内一帯に配した様はまさに「石の寺」、教林坊は天台宗のお寺です。
白洲正子さんの「かくれ里」石の寺の章でこの教林坊の紀行が書かれています。このエッセイが書かれた昭和四十四年
当時と今とでは、相当な様変わりがあるでしょうが、植栽や回遊路の整備は変われども、巨岩や石を配したお庭の姿は、
殆ど変わってはないのでは。そんな安土町石寺、かくれ里に相応しい教林坊を訪ねました。


▼駐車場から少々山道参道を上ると総門が見えてきます。





[ 教林坊 ]
●山号 繖山(きぬがささん)
●院号 正覚院(しょうがくいん)
●寺号 教林坊(きょうりんぼう)
●宗派 天台宗
●開基 伝 聖徳太子(しょうとくたいし)
●開創 伝 推古天皇十三年(605年)
●本尊 赤川観音(石仏)
▲拝観料 500円 御朱印300円 土・日・祝日のみ拝観可。(11月1日~12月10日は秋の特別公開で毎日拝観可能) 
▲拝観時間 9:30~16:30
▲滋賀県近江八幡市安土町石寺1145 電話 0748-46-5400
▲http://www.d1.dion.ne.jp/~marche/kyourinbou/
▲ JR東海道本線「安土駅」下車、タクシー10分 または徒歩50分
  名神高速竜王ICから国道8号線で20分


▼茅葺きの瀟洒な総門。
 森閑な静寂と凛とした空気感の中で茅葺きの山門が佇んでいます。





教林坊縁起 (教林坊HPから抄出)
推古十三年(605年)聖徳太子によって創建されました。寺名の「教林」とは太子が林の中で教えを説かれたことに由来
し、境内には「太子の説法岩」と呼ばれる大きな岩と、ご本尊を祀る霊窟が残され「石の寺」と呼ばれています。ご本
尊は太子自作の石仏で、難産を帝王切開によって助けたという安産守護の言い伝えがあります(これを「我朝、帝王切
開の濫觴なり」といいます) 子授け安産のほか、ご詠歌に「九十九折れたずねいるらん石の寺ふたたび詣らな法の仏に」
と詠われるとおり、どんな困難な願い事も二度詣でれば叶うという「再度詣りの観音さま」として信仰されています。




▼そして参道を少し行くと小さな表門、潜ると……、






▼正面に農家の母屋のような庫裏書院、入山受付になっています。
 およそお寺の雰囲気はありません。






▼ご住職から朱印は書いておきますので先に庭園をどうぞと、
 後ろの山に沿うように緑に埋もれた小径が巡ってます……、






▼きれいな石畳小径に沿って行くと、下に先ほどの書院が見えます。






▼こんな五輪塔がひっそりと、






▼そして本堂へ……、






▼周囲がガラス障子仕立て、お庭の緑の映り込みがお見事と云うほかありません。しかし外観からしてお堂と云う感じ
 はありません。残念ながら本堂正面写真は余りに引きがなくムリ、堂内はささやかな須弥壇に本尊が祀られています。






▼本堂山側に巨岩を利用した霊窟に本尊石仏赤川観音が祀られています。
 推古十三年(605年)聖徳太子遊歴の際、この岩屋の中から光とともに観音様がご出現になり、太子は一刀三礼してそ
 のお姿を石に写し、ご本尊として岩屋奥に安置されました。(霊窟前の説明板から)






▼正面の石像は相当奥まった所に安置されているのでお姿はまったく確認することは出来ません。
 この赤川観音が教林坊の本尊です。赤川観音の名称由来も書かれていますが長くなるので略。とにかく本尊なのです。






▼本堂から書院へ。桟瓦の裳階風庇が付く茅葺屋根、合掌造り、江戸前期建築。






▼書院への小径右に室町末の作庭と伝わる「枯山水普陀落の庭」が目に入ります。






▼書院庭の隅に水琴窟。静穏の中、寂とした微かに聞こえる清らかな音が竹筒から響いてきます。まさに一服の清涼音。

 




▼書院から見る小堀遠州作と伝わる桃山様式の池泉回遊式庭園「遠州庭園」






▼池に浮かぶ手前の巨石が亀島、その向こう鶴島と鶴首石。






▼四季折々を軸と見立てたオシャレな掛け軸庭園。






▼石の寺と呼ぶに相応しい大小石を配しています。






▼書院の三階。まさに合掌造りの屋根裏、大黒天が祀られ、おみくじがところ狭しと……。






▼御朱印です。





観音正寺の唯一残された塔頭寺院と云われているこの教林坊、その実、今はまったく別寺院だそうです。近江八幡市安
土町石寺にあるこのお寺、二十年前このお寺に来られたご住職と石寺集落の皆さんとの奮闘努力で今の姿に再興された
そう。白洲さんが来られた頃は相当荒れていたと想像出来ます。境内は二千坪余り、繖山の山裾一帯を利用した庭園は
まさに緑と石に埋め尽くされています。二百本近い楓は秋になると緑から赤に一変、それはそれは凄い景観になるそう
で、十一月中から十二月初めライトアップされ夜間特別拝観が行われるそう。かくれ里石の寺教林坊、秋には見事な紅
葉を皆さんいかが。

伽藍や仏像を求めて止まない方々には消化不良のお寺ですが、地域に根ざしたこんなお寺、お寺らしくないお寺を訪ね
てみるのも時には一興かも知れませんヨ。





↓ ポチッと押していただければたいへん嬉しいのですが。

神社・お寺巡り ブログランキングへ