劉某, 女性, 61 歳,退休教師。2002 年9 月16 日初診。
本人の説明では右下肢が腫脹疼痛してから1 週間になる。
患者には平素から下肢静脈炎があり病歴は20年になる,毎回 疼痛発作があると,
西薬の抗生素等の輸液で治療していて, 緩解を得ていた, 今回は中医中薬の診治を求めている。
検査: 右下肢が左下肢よりも腫脹して, 皮色は暗紅で, 表浅性の静脈団塊が見える,
小腿腓腸筋部がもっとも明顕で, 圧痛(+ ) , 按ずるのを拒み, 皮膚温は高く,
歩いた后には疼痛が重くなる, 舌質は紅く、苔は黄, 脈は弦数である。
辨証: 淤阻脈絡型,
西医: 下肢血栓性静脈炎;
治則: 補血活血化淤, 清熱解毒,
処方: 当帰18, 玄参12, 金銀花・鶏血藤・川続断・杜仲6, 甘草・牛膝2
3剤后には病人の煩躁するのが消失し, 体温は正常となり, 腿腫疼痛は略減った,
効果があったので処方は変えず, 継進すること6 剤で, 腿腫は大いに減り,
皮膚の紅紫色は退き, ちょっと暗いがほぼ正常な膚色である, 触れても熱くなく,
普通に歩行できる; 丹参2g を加えて, 継進すること5 剤にして治愈を告げた。
按: 本例の患者には下肢静脈炎の反復発作があり, 日久しくして正気を損傷しており,
虚から淤を, 淤が久しくして「化火成毒」となり, 虚、淤、毒の并重である,
本は正虚で, 標は淤毒阻絡である。治は補血活血, 清熱解毒を主とする,
故に 当帰,の補血活血, 通経止痛を君とし重用する, 玄参, 金銀花, 甘草,の清熱解毒を臣とし,
鶏血藤, 牛膝, 川続断, 杜仲,の補肝腎強筋骨、引血火下行を佐使とした。
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※四妙勇安湯
<痛瀉要方>は原名を<白朮芍薬散>といい、明の張介賓の「景岳全書」中の
劉草窓の方より出ているとされている。
しかし、元の朱震亮の「丹渓心法」巻の2、泄瀉門中に載っている薬味と
<痛瀉要方>とは完全に一致する。
未だ方名は挙げられていないが、標名に“治痛泄”とある。
従って、方薬およびその主治からしてこれが元祖と思われる。
清の雷少逸は「時病論」の中で大いに使用することを薦めている。
本方は「中医方剤学」では“白朮 3 白芍・防風 2 陳皮 1.5(両)”と記載されており
、煎・丸・散、いずれでも良く、水瀉者には升麻を加えている。
一般の常用量は:白朮18 白芍15 陳皮12 防風9 (g) である。
この方は白朮を君薬、白芍を臣薬、陳皮を佐薬、防風を使薬とし、
薬味は少なく、効果が鋭く、配伍は厳密で真に模範処方である。
臨床経験から筆者は原方を加減して次のように用いている。
1.胸腹脹満して泄する者は +山査子・厚朴
2.泄瀉に発熱を兼ねれば +柴胡・黄岑
3.口渇して泄する者は +葛根・烏梅
4.泄瀉に悪風を兼ねれば ++防風
5.四肢偏冷で脈沈遅者は +附子・草豆寇
6.飲食積滞して噫気あれば +三仙(神麹・山査子・麦芽)
7.泄瀉稀水者は +車前子・滑石
8.泄瀉滑脱して不禁者は +呉茱萸・罌粟殻・訶子
9.泄して食少者は +白扁豆・山薬
10.小便短渋して不利者は +茯苓・木通
11.久瀉不止の者は +升麻・訶子
12.久瀉して脾虚の者は ++白朮
13.幼児で緑便の者は +柴胡・茵陳
以上の加減法は必ず本方の基本症状があった上で臨機に加減されねばならない。
本方の主治は肝旺脾虚による腹痛泄瀉である。
「医方考」には“瀉は脾の責め、痛は肝の責め、肝の責めは実、脾の責めは虚、
脾虚肝実する為に痛瀉する”と本病の病因と病機と症状を説明している。
秦伯未は「謙斎医学講稿」の中で“肝旺脾弱だから白芍で斂肝し、白朮で健脾する。
また消化不良で腹中に脹気が多いので陳皮で理気和中し、
防風で理肝舒脾して気滞を散ずるのである。
肝旺脾弱の腹瀉は大体、腹中が先ず張り、次に痛む。
瀉下するものは多くないが、瀉后はスッキリしている。
繰り返して発作があり、脈は多くは弦細、右が左より大きい。”と言っている。
中国中医薬報 1994.11.4
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※夏の下痢