荊芥穂
荊芥穂は軽質で揚性、辛温で発散し、解表退熱する。
また血分に走り、血虚の発痙を解除する。
発散しても気を傷(やぶ)らず、血に入っても陰を傷らない。
凡庸の薬味だけれども臨床で証にピッタリ合えば
神奇の効を得ることが出来る。
解放前のこと、○○街に住む高某氏の妻が産後に熱を発し、
教会医院に入院しました。
病気が早く治って母子ともに平安になりたいと思ったからです。
外国の医師が大量の解熱剤を用い、
氷嚢で冷やし熱を下げようとしましたが、
熱は下がるどころか益々上がり、
とうとう壮熱の余り心煩さへする様になり、
病状は日に日に危うくなりました。
そこへ私が行くことになり詳細に病機を診ますと、
これは産後に風を受けたもので血虚表実に属します。
そこで 荊芥9g,紅糖30gとして熱い内に飲ませました。
一時間程すると汗が出てきて熱が退き、
体が持ちやすくなり気分も良くなりました。
家で数日間養生してすっかり治ったので
西洋医は不思議でならないようでした。
中医の治療法は頭が痛いからといって頭を治し、
脚が痛いからといって脚を治すのではありません。
証を診て治療を施すので詳しく弁証して治療法を立て、
それから薬を選ぶのです。
高氏の妻は丁度産後でした。
産後は大抵、血虚に何かを挟んでいます。
即ち内は血虚で外を寒が閉じていたのです。
外国の医師はこの事を知らなかったので
発汗すれば気陰を傷ることになったし、
氷嚢をすれば益々外が寒くなったのです。
それでは病気が悪くなる道理です。
荊芥穂は凡庸の薬味でも発散が的中すると
麻黄・桂枝などのような発汗大過の弊害を避けることが出来ます。
また紅糖を引としているので熱時に頓服すれば気より血へと入り、
去於化滞・去腐生新・甘温益気・補血散寒の働きをします。
二薬は相和して一表一裏、
気陰は回復し寒邪は退けられ、
経脈は伸びて鬱熱が解し病気は除かれたのです。
「黄河医話」 連介一