顔面神経麻痺には、ムカデ、サソリ、カイコ、ミミズ、セミ
顔面神経麻痺に対する虫類薬 その1
「中国霊験方術真伝」には、
民間の不思議に良く効くという処方が、収載されています。
顔面神経麻痺の項には、11の処方が記載されています。
驚いたことに、すべてに、つまり100%、虫類薬が処方に含まれています。
「中国民間霊験方求真伝」人民軍医出版社1996年、
張俊庭先生、張俊明先生主編 より、一部を紹介しましょう。
まずは、全成分虫類薬のを。
なかなか、すごい組み合わせです。
絵に描いたら、面白いだろうと、店のアルバイトの子に描いてもらいました。
ただし、わざと写実的ではなく。クリックすると拡大します。
◎処方:ムカデ(蜈蚣ゴコウ)、サソリ(全蝎ゼンカツ)、
キョウサン (僵蚕:白僵蚕ともいい、蚕の幼虫が白僵菌に感染して死んだもの)、
ミミズ (地竜ジリュウ)、セミの抜け殻(蝉蛻センゼイ) 各10g
用法:蜈蚣、全蝎は、炙って乾燥し研いで粉にする。
他の薬は、煎じる。1日に、上記の量を、2回に分けて服用する。
適応症;顔面神経麻痺
治療効果:48例の患者を治療したが、38例が治癒し、11例が好転した。
治療期間は3日から56日。
出典:福建省寧化県医院、胡国龍先生
次の処方の2つの生薬とも毒薬です。
ハンミョウ(斑猫)の毒性は、よく知られていますが、ハズニン(植物性生薬)も、
毒性が強い生薬です。
飲むのは危険です。
とはいっても、手には入らないでしょうけど。
ハンミョウ(成分は、カンタリジン。斑猫素)を用いた発泡療法です。
◎処方;南方斑猫(ハンミョう)、巴豆仁 各1.5g
用法:一緒に粉にし、適量のハチミツと混ぜ、糊状にし、
一辺が5~6cmの正方形のガーゼを4層にし、
練った上記の薬を、直径2~3cm位に均等に塗る。
それを、患部側の下関 (経穴, いわゆるツボ)と頬車(経穴)の中間点の少し前方に貼り、
絆創膏で固定する。
張ったところの皮膚が紅潮して起泡しそうになったら、ガーゼをはずす。
症状が改善しない場合は、7日後に同じようにして貼る。
適応症:顔面神経炎
治療効果:80例のうち、3例は確認出来なかった。
それ以外の治癒率は97.5%であった。
出典:山東省臨沐県医院、高稀斉先生
◎処方:ビャッキョウサン(白僵蚕:蚕の幼虫が白僵菌に感染して死んだもの)、
サソリ (全蝎:ゼンカツ), ゴコウ (蜈蚣:ムカデ), ミミズ (地竜:ジリュウ)
白附子 (ハクブシ), 天麻 (テンマ), 防風 (ボウフウ)各同量
(後半3個は植物性生薬)
用法:一緒に研いで、細かい粉にする。黄酒に入れて服用する。
1日2回。1回に10g、小児は加減する。
酒が飲めない患者の場合は、水と酒を半々にする。
服用後、重ね着をして発汗させる。服薬と同時に、針治療を行う。
適応症:顔面神経麻痺
治療効果:治療した60例のうち、50例が治癒し、著効が2例、8例が好転した。
注意:服薬後、汗が出ようとする時に、喉の乾きを感じる。
その後、患部の筋肉が動く感じがするが、それは治る前兆である。
出典:内蒙古化徳県城関衛生院、李栄先生
http://yakuyoukonchu.blog115.fc2.com/blog-entry-144.html
朱某という患者、心室性早搏で毎分五回以上の心悸が一日中続き、
結滞もあり、階段で息切れ、胸が苦しい。
“慢心律”という薬を飲んでも良くならず、余に治を求めて来た。
処方:桂枝15 炙甘草10
一剤で効き目があり、二剤で症状が消え、三剤で階段を登っても平気になった。
余の研究生の賈海驥は臨床の際に付いてきて、余が心悸を治すのに
いつも桂枝を用い、その都度効果があるのは何故かと問うたので、
余は「当世は桂枝といえば辛温解表の一点張りで、平冲降逆の功能を忘れているのは
誠に残念だ。」と答えた。
桂枝が動悸を治すというのは元は仲景の法にある。
<傷寒論>第64条に曰く“発汗過多の時、手を心下に置くと動悸を感じる。
静めたければ桂枝甘草湯が良い”と。
この二薬があれば必ず治せる。
仲景の動悸を治す法を見てみると冲気を平するには桂枝・甘草を離れてはあり得ない。
例えば茯苓甘草湯は“傷寒厥して心下悸”するを治し、
茯苓桂枝甘草大棗湯は“臍下悸”を治し、
小建中湯は“心中悸して煩する者”を治し、
炙甘草湯は“脈結滞して心動悸する”を治し、
茯苓桂枝白朮甘草湯は“心下逆満し、気が胸に上冲する”を治している。
しかも桂枝・甘草のうち大事なのは桂枝である。
例えば四逆散の方后の注に曰く“悸する者は桂枝五分を加える”とあるし、
“気が少腹より心に上冲する者”を治すには桂枝湯の桂枝を増やして
桂枝加桂湯としている。
桂枝・甘草を合せて心悸に用いるのは私だけではない。
<精神病広議>には“友人の陳蓮夫はかつて心悸の重症で、
日夜心臓に手を当て、恐怖に震えて尋常ならざるを治したことがある。
病人は何かの祟りだと思い、医師は精神錯乱だと思った。
陳君が桂枝甘草湯を与えたら一剤で治ってしまった。
これでこの湯が確かに養液し、心気を補う妙方であることが分かる。”とある。
桂枝・甘草を同用すると心気を護り、心陽を奮い起こし、血脈を温通する
という特殊な作用があるので広く心気不足・心血於阻の色々な
心臓血管の疾患、例えば不整脈・冠心病等に用いられても良い。
更に劉正才医師は低血圧症に桂枝甘草湯+肉桂泡茶を用いて83例の
心気虚の低血圧症を治療して3~12剤で平均血圧を20mm近くも上げている。
即ち桂枝は心に入り、血に走り、甘温は心陽を助け、動悸を収める要薬である。
<本草経疎>には桂枝の功能を詳しく論述している。
曰く“桂枝には六っの作用がある。和営・通陽・利水・下気・行於・補中なり”と、
以て知るべし。
中国中医薬報 1994.11.21
http://youjyodo.la.coocan.jp/geocities/mycoment/49.html?fbclid=IwAR2Sa7288JLQAPc9EIZH_A96guAaKLszJ2MSZ5_1biBcNTsgw2IY5uFjGH4