私は丸薬で患者さんを治療しているが、煎じ薬と丸薬では同じ処方でも
生薬の必要量はまったく異なる。
丸薬は煎じ薬の生薬量の半分ですむことが多く、
病気の種類や人によっても量が変わる。
不思議なことに漢方医は、私の処方の中身を知りたがる人は多いが、
生薬の量を気にする人に出会ったことがない。
それはエキス漢方の元となる生薬の量は今の量で十分だと
信じこまされているからだろう。
今から40年前、煎じ薬だけの世界に初めて現れたエキス漢方が
どれだけ効くのか、どのくらいの量が必要なのかを当時の漢方医は知りたくて、
様々な工夫をして保険エキス漢方の規定投与量、1日7.5g以上を投与していた。
その結果、保険エキス漢方の標準投与量は今の倍量の15gという結果が
山本巌グループの研究で出た。
もし規定量の7.5gしか出すことが出来なければ、
エキス漢方薬の本当の力価が分からない。
西洋医学の化学合成された薬でも標準投与量があり、
それでも効かない時は、ここまでの量が出せますと書いてある。
そんな常識の中で生きている医者が、漢方だけは何の疑問も持たずに
標準投与量の7.5gを処方していることに私は驚きを隠せない。