歴代の本草書には大抵、枸杞子は味が甘、性は平、肝腎肺の三経に入り;
功能は滋腎、潤肺、補肝、明目、補益精気; 主治は肝腎の陰虧、腰膝の酸軟、
頭暈、目眩、目昏多泪、虚労の咳嗽、消渇、 遺精;とあり、
多くは滋陰の品と認識され、 滋陰薬類に分類されている。
近代では一部の中薬学家は枸杞子に補血の効果を認め、補血薬類に分類している。
独周岩 は<本草思弁録>の中で次のように言っている。
「枸杞子は内外全て純丹で津液を包含している。 種子は本来腎に入るから
これは腎中の水火兼備の象に似ている。 味は厚で甘、故に陰陽併補して・・・
・・純丹でも増火することはない」
一部に陰虚陽盛から陰虚火旺となった患者があり、
これに枸杞子を用いるとその陽は益々盛んとなり、陰は益々虚となり、
陽が陰を襲い、熱が内で騒ぎ心液が外に溢れて盗汗となるわけだろう。
俗に「家を離れること千里、枸杞を食べるなかれ」と言うのは即ち
枸杞子の補腎興陽(勃起)の作用を指している。
この他に臨床上、枸杞子を食すると咽燥口干して飲を欲する様になり、
甚だしくは鼻衂が出る者さへあるのは上のような道理である。
枸杞子が陰血を純補するだけのものではなく、 実に補陽の効果もあり、
陰陽併補の品であることを知らなければならない。
「黄河医話」 張文閣