あと一つ 上が欲しきと ばばをひき まるごとブタと なりしとらんぷ
*これは時事的な作品ですね。ドナルド・トランプがアメリカ大統領に就任した前後に詠われたものではなかったか。もちろん試練の天使の作品です。
こういうテーマを滑稽に皮肉って詠うのは、短歌というより狂歌と言ったほうがいいかもしれない。けれどもここでは一応短歌のカテゴリに入れます。狂歌のカテゴリは作りません。あまり好きではない。狂歌では品のないテーマも詠われますから。
トランプ(trump)は、日本語ではカード遊びに使う札そのものを言いますが、英語でもカードゲームの切札を意味しますね。こういうのはしゃれに使うのに便利ですからもちろん使いましょう。辞書を引くと、最後の手段とか、素晴らしい人とかいう意味もあるそうですよ。これも使えそうだ。
ブタというのはカードゲームでは役のない手のことを意味します。おいちょかぶでは0(ゼロ)のことをいう。要するに、全く無駄で何の役にも立たないということだ。
ブラックジャックなどのゲームでは、カードの数字の合計が21を超えないようにしながら、もっとも高い数を作った人が勝ちということになっていますね。よくカジノなどの賭場でもやられています。賭け事にはまって身を持ち崩したことのあるものには、くわばらくわばらと言って近づきたくない鬼門のようなものにも感じられる。
たかが紙に書いてあった数字だけで、人生を棒に振ったこともあったからです。阿呆はよくこんなことを経験したことがある。濡れ手で粟のようなことで金を儲けようと考える馬鹿は、たいてい賭け事にはまったことがあります。
そういう賭場で行われるゲームに、ブラックジャックとおいちょかぶみたいのがあるのが不思議ですね。ある程度以上の数字を引くとブタになって、何にもならなくて、すべてを失うというゲームです。賭け事そのものの馬鹿らしさを表しているようだ。
実際、人間というものは、欲をかいて自分を超えたことをしすぎると、とんでもないことになって、すべてがおじゃんになるということがよくあります。
ヒトラーの夢などもそうだ。馬鹿が、一国の首相くらいで終わっておけばまだましだったものを。まあ、言わずともわかるでしょうが。欲をかくから大変なことになり、人間世界にいる権利さえ失ってしまった。永遠に語り継がれる虐殺者の汚名を着なければならなかった。
ドナルド・トランプもそうだ。大金持ちの社長くらいで終わっておけばよかったものを。馬鹿が大統領選挙などに出るから馬鹿になる。世界中に恥をさらす。
痛い切札を出して、とんでもないものになろうとして、次の札を引いてみたら、馬鹿みたいな手になった。ばばの札には、なんとジョーカーではなく、天使のような美女が描かれていたからです。それを見たらもう終わり。ゲームそのものが馬鹿になる。出した切札が阿保になる。ちなみにジョーカーはjoker、冗談を言う人という意味もあります。要するに、こんなのはみんな冗談だよと言って、すべてを駄目にするやつだ。「ばば」は糞という意味ですね。
なんでこんなことをやったのかと、自分で自分を責めるのも恐ろしい、愚かな結果がある。楽園だと思って作っていた自分の城は、白アリのような馬鹿が群がりたかる汚い洞窟だった。まさに糞だ。何にもなりはしない。
やったことの何もかもが無駄になった。どんなにがんばっても、もうもとの世界には戻れない。
それでも、大統領はやらねばならない。
これが、ブタというものですか。いえいえ、ブタなら、食えるだけまだましだというものです。