高殿の 人の目を染む 闇夜にも 神は小星を 焚きにけらしも
*また短歌です。どうしてもこっちの方が多くなりますね。みんな短歌の方をもっぱら詠みますから。俳句もいいが、わたしたちの好みはどうしても短歌の方に流れる。俳句では情感を途中で切られる感じがするらしい。ですが、たまには、誰かに俳句も詠んでもらいたい。こういうと必ず誰かが反応してくれますから、近日中にはわたし以外の作者の俳句を紹介できるかもしれません。
まあそれはともかくとして、今日の歌です。
「けらし」は過去の助動詞「けり」に推量の助動詞「らし」がつながった「けるらし」が縮まったもので、「~たらしい」とか「~たようだ」とかいう意味になります。要するに過去推量というものですかね。過去にあったことを根拠に、推定しているのです。
「も」は詠嘆を表す終助詞です。
高殿に住んでいる人の目を染めている闇の夜にも、神は小さな星を焚いたようだなあ。
「小星」は「おほし」と読みましょうか。「こぼし」でもよいが。「を(小)」も「こ(小)」も小さいという意を添える接頭語です。語調を整えるのに便利ですから、活用しましょう。
高殿(たかどの)の人というのは要するに、そういうところに住んでいる身分の偉い人という意味ですね。今では、豪華な高層マンションに住んでいる人とか、都会の巨大ビルに会社を構えている人とか、そういう意味になるでしょう。だがそういう人というのは、現象の産む幻の美に迷って、真実の愛が見えなくなり、目が闇に染まっているかのように暗い人が多い。そういう人の見える真っ暗な空にも、神は小さな星を焚いて下さったのだ。きっとその星を目印に、神の元に帰って来るだろうと。
本当の愛は、幻の高殿よりも、田舎のあばら家の中に灯っていたりするものだ。その家の明りは、小さな星のようなものに見えるかもしれない。
やさしい歌ですね。かのじょの心に通じるところがある。もちろんやさしい人が詠んでくれたのです。わたしたちも、いつも厳しいわけではない。
たまにはこういう世界もいいでしょう。あなたがたにも、神が焚いて下さった小さな星が見えるといいのですが。