60年ほど前になる。
石原裕次郎の歌に『男の友情・背番号3』というのがあった。
巨人軍の長嶋茂雄選手との友情を歌ったもので、
その歌い出しは
『背番号3 言わずと知れた 男、長嶋 イカすじゃないか』である。
この『イカす』という言葉、改めて言うまでもないことだが、
〝カッコいい〟〝しゃれている〟〝魅力的〟などといった意味で、
裕次郎の人気と相まって、年長者のしかめっ面はどこ吹く風で、
若い人たちを中心にごく普通に使われていた。
流行語というのは、世の移ろいを映しさまざまに生まれてくるものだ。
このところも『推し』『シン』などといった言葉をよく見、聞く。
年配者が使うことはまずないだろうが、意味はおおよそ察しがつく。
『推し』というのは、推薦する、他に薦めるということからきており、
それも単に好きというよりも強い支持、憧れを表しているのだという。
もともとはアイドルのファンの間での〝専門用語〟だったのが、
今では広く一般社会でも使われるようになったらしい。
『シン』は〝進化〟を意味し、さらに進化して強くなった
『シン・仮面ライダー』『シン・ゴジラ』などと使われている。
またYou Tubeに『進化を求めるシンゴルフ』といったゴルフ番組もある。
これは、「人よりも10分の1の努力で10倍上手くなれる方法」を
クララ先生(プロゴルファーの倉持雅樹さん)が分かりやすく伝授しようというものだ。
長年、書くことを生業としてきた者としては、どうにも馴染みにくく、
これらの言葉を使って記事を書くことはできそうにない。
最近さまざまに注目を集めている生成AIはどうだろうか。
試みに「〝推し〟〝シン〟〝イカす〟という言葉を使い九州経済の現況
という記事を書いてほしい」と頼んでみた。
『今日の九州経済は、ますます加速度的に発展しています。
各種業界で推す企業が増え、生産性が向上し、地域の活性化につながっています。
特に、福岡市を中心に、最近のシンな取り組みによって、
企業誘致とニュースタートアップの促進が進んでいます。
また、九州の農業や漁業ビジネスもイカす新しい生産技術が活用され、
高品質な製品を世界に向けて発信するまでになっています。
これからも、九州経済はより発展し続け、
国内外から注目を集めることでしょう』
これだけの文章を1分ほどで書くのだから、なるほどすごい。
ただ、いささか遊びが過ぎたようだ。
〝推し〟〝シン〟〝イカす〟という言葉を使え、
という条件はいかにも無理強いの感があり、
さすがのチャットGPT君も戸惑いがありあり。
ダサい表現の記事になっている。
生成AIには、こんな無理な条件を拒否する能力はまだないらしい。