何とも奇妙、というか、理解しがたい関係の男女ペアだ。
ほぼ週1回は、ランチに通う全国チェーンのカレー屋さんでの話。
それほど繁く通えば、まあ常連客の一人となっているだろう。
格別、カレーライスが好物というわけではない。そこそこ、といった程度だ。
あの店は旨いだとか、まずいだとか、そんなことにさして執着しないから、
そのカレー屋さんは勤務する会社が入居しているビルの隣にある、
つまり近くにある便利さが何よりの理由となっているのである。
入口から奥へカウンターが延び、全部で12席しかない小さな店だが、
付近には会社や店舗が多いせいもあり、ランチタイムは結構込み合っている。
この昼時は男性1人、女性3人、全員が中年のスタッフで、
ローテーションにより2人1組、つまりペアになって接客している。
4人の組み合わせだから数組のペアができるわけだが、
この中に1組、何とも不思議な関係の男女のペアがいるのだ。
男性が調理、女性がレジとカウンターを担当しており、
明らかに男性が上司然としている。それはこちらのあずかり知らぬことであるが、
この男性の小うるさいことといったらありゃしない。
「ほれ、早くカウンターを片付けて……」
「レジでお客様が待っておられるじゃないか」
などと休む間もないほど、あれやこれやと指示をする。
「それ、パワハラじゃないですか」と言いたくなるような時さえある。
それも客の面前なのだから、聞き苦しく、見苦しい思いにさえさせられる。
それほどの言われ方だと、「私、辞めさせていただきます」となってもおかしくない、
などと余計なことまで気を揉む始末だ。
ところがだ。その女性、腹を立てているふうにはまったく見えない。
表情も受け答えも平然たるもの。
「いやー、ご立派」と声を掛けたくなるほどだ。
驚いたことに、別の日には笑顔交じりで睦まじそうにしているではないか。
ひょっとして、ご夫婦?
そんなことは聞けはしないが、あるいはそうなのかもしれない。
奥さんが亭主を手の平に乗せ上手に転がす、よくあるあの図だ。
いやいや、そう言い切れるほどの自信はないか。
あれやこれやと想像し、心中ニヤニヤしながらカレーをいただく。
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