【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

会社の傭兵

2015-11-23 07:28:51 | Weblog

 企業が従業員に忠誠心や忠義心を求める態度は、傭兵に忠誠や忠義を求めるのと同じ態度に、私には見えます。だって会社に雇用しているのは、先祖代々の忠臣ではなくて、“傭兵”でしょ? 価値のあるすごいものを購入するためには、それなりに支払いが必要なのでは?

【ただいま読書中】『エデンの恐竜 ──知能の源流をたずねて』カール・セーガン 著、 長野敬 訳、 秀潤社、1978年(83年18刷)、1200円

 先日読んだ『宇宙の扉をノックする』(リサ・ランドール)では、最新の物理学の知見を“数式を使わず”に読者に伝える手際に感心しました。専門用語や数式を駆使した方が「正確」に表現できるのは明らかです。私自身、もし自分の専門分野を“素人”に説明しようとしたら「一般日本語」よりも「専門用語」を使える方が楽だと感じるでしょう。ただ、素人は専門用語を正確に理解していないから、無雑作に専門用語を使うわけにはいかないのですが。
 さて、本日の本は生物学です。ただし「1970年代の生物学」。さらにそれを解説しているのが、カール・セーガン。彼は科学の解説者としてはプロですが、生物学ではプロではないはず。ただ、自分がプロではないことをきちんと意識していたら、「自分がどのような説明なら理解しやすいか」をまず設定して、それをさらにかみ砕く形で、とてもわかりやすい科学の解説書が出来上がるだろう、とは予想できます。
 実際、本書は見事な出来です。今から40年前の生物学の最前線がどのようなものだったか、非常によくわかります。私はもうこのあたりの知識はほとんど忘れてしまっていましたが、“初心”に帰って読むことができました。知識そのものは古くなりますが、本の語り口や科学や読者への誠実な態度は古くならないんですね。
 しかし、どんな話題を扱っても、ちょっときっかけがあればすぐに「宇宙」に話が結びつこうとするのは、やはり“カール・セーガン”でした。