【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

生物のリズム

2017-01-18 07:18:52 | Weblog

 45年くらい前だったでしょうか、「バイオリズム」というものが日本でちょっと流行りました。たしか誕生日を起点として、「身体」「感情」「知性」がそれぞれの周期でサインカーブを描いて変動する、というものでした。私も自分のリズムをグラフに描いてみましたが、どうみても現実の自分の状態と合わないのですぐにやめました。たとえ合っていたとしても、スポーツ大会の日程や学校の試験の日程は私のリズムに合わせてくれないのですから、知っても仕方ない、というのが当時の私の判断です。

【ただいま読書中】『時間生物学』海老原史樹文・吉村崇 編、化学同人、2012年、4800円(税別)

 ニワトリの松果体は脳の高い位置にあり、頭蓋骨を通して光を感じているのだそうです。松果体はメラトニンというホルモンを夜間に分泌していますが、朝になったらたとえ網膜からの光刺激が無くても松果体は勝手に「目が覚める」わけです。
 「光」が体内時計をリセットする強力な因子であることはけっこう知られていますが、「食事」も重要です。「定時の食事」によって概日リズムが同調していることが、齧歯類の動物実験で示されました。そういえば私も、休日で食事時間がずれると、寝付きが悪くなります。すると、休日でも食事のリズムはいつもと同じにしておいた方が、健康に過ごせる、ということになります。
 「体内時計」とまとめて言いますが、哺乳類の「主時計(明暗サイクルへの同調、睡眠覚醒リズムや様々な生理機能のリズムに関与する時計組織)」は視交叉上核(SCN)にあることがわかっています。SCNでは「時計遺伝子」が発現していて体内の概日リズムを司っています。ところがこの「時計遺伝子」は、どの細胞も持っています。つまり「体内時計」は全身に(中枢にも末梢にも)存在するのです。それがわかったのは、1997年ショウジョウバエの研究からでした。末梢の体内時計は、動物によって光を感受するものと感受しないものとがあります。この差は、昼行性か夜行性かによるのではないか、という仮説があるそうです。
 ちょっと不気味な記述もあります。老人になるとメラトニンの分泌が減る傾向があるのですが、これは外出機会が減って日光をたっぷり浴びなくなったせいかもしれない、というのです。実際にそういった老人にたっぷり日光を浴びる機会を与えるとメラトニン分泌量が増えました。ということは、現代社会では老人以外でも「日光を浴びない人」はメラトニン分泌が減っていて、体内時計のリズムが狂っている可能性があります。私自身、夜明け前に出勤してずっと室内にいて日没後に帰宅、なんて生活をすることがありますが、晴れていたら昼間にちょっと職場の外に出て風に吹かれて太陽を浴びた方が良いかもしれません。
 「日」だけではなくて「年」「潮汐」「月」など、多くの生物は「リズム」として取り入れています。「地球のリズム」の下で進化した生物が、そのリズムを自分の生存に活かすのは当然の戦略でしょう。ただ、それを「時計遺伝子」として「形あるもの」にしている点に、進化の不思議さを私は感じます。