【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

○だし

2017-05-23 21:06:55 | Weblog

 「赤だし」は味噌汁、「揚げ出し」は豆腐。では「炒りだし」は? そうそう「大根の揚げ出し」という料理もこの世にあるそうです。

【ただいま読書中】『料理名由来考』志の島忠・浪川寬治 著、 三一書房、1990年、2600円(税別)

 「江戸煮」はタコの煮物、「小倉煮」は小豆と何か(トコブシ、タコ、カボチャなど)の煮物。あら、私はどちらも知りませんでした。「苺煮」は生雲丹と鮑の煮物。これは聞いたことがありますが、まだ食べたことがありません。蒲焼きならぬ「蒲煮」は、鰻と牛蒡・蕪などの煮物。これは著者も昭和の初めに食べたきりだそうです。
 博多名物の「がめ煮」の由来には諸説ありますが、著者は「広島あたりの『八寸』が大阪に伝わり、それが博多に伝わって『がめ煮』となり、それがさらに大阪に逆輸入されて『筑前炊き』になった」という仮説を提唱しています。なかなかダイナミックな説ですが、単に「材料」や「料理」だけを見るのではない態度が印象的です。
 「狸汁」「雉焼き」「鴫焼き」は三大名精進料理だそうです。その名前に動物が入っているのは、動物を食べることができない僧の願望が反映されている、と言われているそうですが、著者は「僧が動物を食べることによって供養をしている」説を唱えます。たしかに「食欲全開」ではただの煩悩の輩ですからねえ。
 「姿盛り」と言えるのは、鯛と鯉だけで、伊勢エビの場合は「舟盛り」と言う、とか、「茶飯」は本来は「番茶で炊いた飯」だが「醤油で味を付けて炊いた飯」もいつの間にか茶飯というようになりさらに後者は「桜飯」とも呼ぶ、とか、日本食トリビアが次々登場します。本書にはあいうえお順に111の料理名が登場するのですが、そのどれも蘊蓄の固まりで楽しめます。
 そうそう、クイズを一つ。「鯵のたたき」と「鰹のたたき」は同じ「たたき」ですが皿に載っている造り身はずいぶん厚みが違います。それはなぜでしょう? 解答は本書をどうぞ。