【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

手を抜く練習をしたこと、ある?

2021-08-01 08:03:07 | Weblog

 オリンピックで解説者が「決勝に体力を温存するために、予選では少し流して」などと言っていました。つまりは予選は手を抜いて、ということですが、そんな練習もしているんです? いやね、練習では常に全力を発揮するようにしていたら、本番では手を抜こうとしても上手くコントロールできずに“失速”するのがオチではないか、と思いまして。
 露骨に予選で手を抜いて見せた選手で私がすぐ思い出すのはカール・ルイスですが、彼の場合も100mの前半はきちんと走ってリードが確保できたら最後の最後はジョギングペースに落として1位はきちんと確保する、というメリハリのある手の抜き方でした。

【ただいま読書中】『アフターコロナ時代の不動産の公式』幸田昌則 著、 日本経済新聞出版、2021年、1600円(税別)

 アベノミクスは「デフレ脱却」を旗印に、「バブル」を人為的につくろうとしていました。「異次元の金融緩和」と「(人口減少や経済成長の鈍化による)借り入れ需要の減少」によって大量の余剰資金が生まれ、その多くは金融市場に流れていきました。さらに政府は相続税を強化、相続対策として不動産市場にも大量の資金が流れ不動産バブルが発生しました。しかしそのピークは2018年秋。金融機関の不正融資や相続税対策のアパート経営の問題点が広く知られるようになり、2019年には「不動産バブル崩壊」が囁かれるようになりました。
 「バブル」と言っても、地域差があります。三大都市圏や地域中核都市ではバブルが発生しましたが、それ以外の人口減少に悩む地域では不動産価格は長期低落傾向が維持されました。つまり地価にも「格差」があったわけです。
 そしてそこに「コロナウイルス」がやって来ました。テレワーク導入で企業はオフィスを小さくし、オフィス賃料は低下、ステイホームで自宅で長く過ごすようになった人は、便利な場所のマンションが意外に快適ではないことに気づき、安くて静かで感染に対してもマンションより安全な一戸建てに移っていきます。駐車場経営は、休日や観光地は苦しく、都心の平日利用は急速に回復しました(密を避けるために車通勤にシフトした人が多かったのでしょう)。
 アベノミクスで拡大した「格差」は、不動産市場では「上昇しない実質所得」と「都心部の住宅・土地の異様な価格上昇」の乖離という形で現れました。富裕層が、節税と収益確保を目的として億ションを賃貸物件として購入することが相次ぎました。「低所得層は価格で不動産を買うが、富裕層は価値で不動産を買う」と著者は言います。
 かつての日本には「土地神話」がありました。ところが将来の人口減(世帯減)による不動産余りは確実です。それは住居だけではなくて、オフィスなどのテナントもこれから余っていくことを意味します。というか、地方都市の駅前商店街はすでにシャッター街になってます。そして、コロナ禍で急成長したネット販売は、アフターコロナでも利用され続け、店舗はさらに減っていくことになるでしょう。すると「不動産の価値」について、私たちは見方を変えていった方が良さそうです。