熱は「放射」「伝導」「対流」で伝わる、と小学校の理科で習いました。伝導と対流は「物質」による移動ですから理解しやすいのですが、「放射」が難しい。真空中でも伝わりますが、その間「熱」はどこにあるのか?とか、放射の速度はどのくらいなのか?とか、“小学生”の疑問は実はまだ解消されていません。皆さんは、もう解決済みですか?
【ただいま読書中】『三体問題 ──天才たちを悩ませた400年の未解決問題』浅田秀樹 著、講談社(ブルーバックスB-2167)、2021年、1000円(税別)
ニュートン力学では、天体が二つの場合にはその軌道の「問題」は解くことができます。ところが天体が三つになると突然「問題」は複雑怪奇になります。例えば宇宙に太陽と地球しかなかったら、地球は太陽の周りを公転します。その時太陽は地球に少しだけ引き寄せられますがその移動量と方向は太陽と地球の質量比で計算できます(実際には、太陽と地球の共通重心は太陽の中心から449km、つまり太陽の中心のすぐそばなのですが)。ところがここに火星が加わると……火星も地球と同様太陽の周りを公転します。その時、微妙に地球にも重力の影響を及ぼします。火星に位置をずらされた地球は太陽にもその影響を伝えます。それで微妙に移動した太陽は火星と地球にも影響を与え、それでまた火星と地球は……
頭がグルングルンになってしまいますが、それでも頭の良い人たちは三体問題に挑戦し続けました。そしてある特殊な状況でなら三体問題が解ける、ということが分かります。いやもう、この辺の科学者の奮闘ぶりには頭が下がります。三体問題は五次方程式になるのですが、本来五次方程式は「代数的には解けない」もののはずなんです。それを解けるものにしちゃうとは、頭が良いだけではなくて、相当トリッキーな発想ができないといけないでしょう。ただ、そういった特殊解の一つから私も知っている「ラグランジュ点」が導き出される、と聞くと「おや?」と身を乗り出したくなります。地球と月のラグランジュ点は「機動戦士ガンダム」で宇宙コロニーに利用されていましたが、現実の宇宙では、太陽と木星のラグランジュ点(L4とL5)には「トロヤ群」と呼ばれる小惑星群が発見されています。
「水星の近日点移動問題」もまた「三体問題」でもあります。そもそも水星の近日点が本当に移動しているのか、移動しているのならそれは実際にはどのくらいなのか、その観測と計算は大変だったそうです。私はついついアインシュタインの方に注目してしまいますが、地道な努力の積み重ねがあったんですね。