【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

読んで字の如し〈草冠ー28〉「苛」

2016-06-13 06:53:17 | Weblog

「苛政」……苛々させる政治
「苛政は虎よりも猛し」……苛々は虎よりも強い
「苛立つ」……苛が立つ
「苛つく」……苛がつく
「苛高数珠」……苛が高くつく数珠
「苛々」……苛が二つ
「苛性ソーダ」……苛の性質を持つソーダ

【ただいま読書中】『プリムローズレーンの男(下)』ジェイムズ・レナー 著、 北田絵里子 訳、 早川書房、2014年、760円(税別)

 デイヴィッドは異様な「現実感の破壊」に襲われますが、ある意味それは自業自得とも言えます。薬を断つことを決めたのは自分自身ですから。さらにデイビッドは、かつて他人の「現実感」の破壊をしてのけた“前科”がありました。連続殺人事件で死刑とされた人が、連続強姦魔ではあるが殺人はしていないことと殺人の真犯人を突き止め、「犯人は死刑になった。これで安心」と思っていた世間の安心感を見事に破壊したことがあったのです。
 デイヴィッドの自殺した妻エリザベスは、小さいときに誘拐未遂に遭っていました。エリザベスの一卵性双生児の姉エレインはそのとき誘拐されそのまま行方不明です。その時誘拐を妨害しようと駆けつけたのが「プリムローズレーンの男」でした。そして、「プリムローズレーンの男」がストーカーまがいの行為をしていたケイティーもまた、幼いときに誘拐されそうになり、それを妨害したのがやはり「プリムローズレーンの男」でした。さらにエリザベスとケイティーは子供の時にそっくりの容貌(赤毛の美少女)だったのです。年齢も性格も住む場所も違うんですけどね。とっても気持ち悪い事態です。
 誘拐者は誰? 「プリムローズレーンの男」は誰? 「プリムローズレーンの男」を殺したのは誰?
 そして、デイヴィッドは逮捕されます。名無しの男を殺した容疑で。そして妻を殺した容疑で。言い渡された保釈金は1億ドル。そこでデイヴィッドに救いの手をさしのべてくれてのは……これ、意外を通り越して、私は呆然としてしまいます。「完全にありえないことを取り除けば、残ったものは、いかにありそうにないことでも、事実に間違いない」(シャーロック・ホームズ)だから、確かに「その人」であって不思議はないのですが……
 これからはどう書いてもネタバレになりそうなので、自粛します。読んでください。そして、驚いてください。ついでですが、この「驚き」は“連発銃”です。続けざまに襲われますから、本を開く前に丹田に力を入れることをお忘れなく。
 あ、一つだけ。上巻の感想でP・K・ディックの名前を出しましたが、それが(少なくとも“ジャンル”的には)まるっきり的外れではないことが下巻の第三部を読んでいてわかりました。私はまだ「本を読む感覚」がそれほど衰えてはいないようで、ちょっとだけ自慢したいな。で、第三部での展開に呆然とする人が多いとは思いますが、第一部での「希望は、確率が打ち負かされる可能性を暗示する」ということばを思い出しながら読むことをお勧めします(というか、この作品は伏線が豊富に張り巡らされているので、第一部からゆっくり腰を据えて読むことをお勧めします。主人公の(さらにはその子の)性格まで、伏線なんですから)。



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