【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

禁治産者

2022-02-13 12:09:55 | Weblog

 戦前の日本女性は、選挙権を持っていませんでした。財産を処分する権利も持っていませんでした。戸主にもなれません(例外的に家族に男が全くいない場合だけは「女戸主」になれましたが、養子が入ってきたらすぐに男が戸主になりました)。つまりは、戦前の女性は現在の禁治産者と同じ扱いです。
 ときどき「戦前の日本」を美化する女性がいますが、そんなにご自分が禁治産者になりたいのか、とその破滅願望には驚きます。それとも、「女は黙っとれ」と言ってもらいたいのかな?

【ただいま読書中】『説教したがる男たち(原題:Men Explain Things to Me)』レベッカ・ソルニット 著、 ハーン小路恭子 訳、 左右社、2018年、2400円(税別)

 「徹底して無知でありながら、完璧で挑戦的なまでの自信に満ちた態度」は「特定のジェンダー」と結びついている、と著者は述べます。はい、(ジェンダーとしての)「男」ですね。「女は黙っとれ」の「男」。そしてその態度は、レイプと殺人に繋がり、さらにその後レイプと殺人の正当化に繋がっていきます。
 著者のこの問題提起は、人々の琴線に触れ、同時に逆鱗にも触れました。しかし著者は進みます。私は自分が怒り狂わずむしろ「たしかに自分にはそんな面があるなあ」と反省できたことで、とりあえずほっとします。「そんな面がある」ことは問題ですが、問題を否認しなければ改善の余地がありますので。
 アメリカでは6.2分に一人がレイプされ(報告されたデータ。明らかになっていないレイプはおそらくその数倍)、全女性の20%がレイプされた経験者、と聞くと、私はぞっとします。さらに政治家の発言がひどい。ミズーリ州のトッド・エイキン下院議員は「レイプだと妊娠はしない」と主張したそうですし(妊娠するのなら問題だが、妊娠しないから問題ない、という意味かな? 医学的にも倫理的にも人でなしの発言です)、リチャード・マードック上院議員の「レイプによる妊娠は神の恩寵だ」がそれに続きました(あれれ? 「レイプで妊娠はしない」のではなかったの? 共和党では下院と上院で意見が割れているようです)。日本でも「集団レイプする若者は元気があってよろしい」とか言った政治家がいましたね。
 こういった「問題議員」が続出することにはアメリカ社会の不健康さを私は見ますが、その次の選挙でそういった人たちが次々落選したことにはアメリカ社会の健全さを私は見ます(単に、有権者の半分が女性だった、というだけのことかもしれませんが)。そういえば日本では女性差別の問題発言直後の総選挙で落選した議員って、どのくらいいましたっけ?
 レイプ・暴力・殺人の根底には「権利意識(あるいは特権意識)」が横たわっています。「俺はお前をコントロール(支配)する権利がある」という意識。ところがこの「権利」、根拠が薄弱であることは本人も(少なくとも無意識的には)わかっています。だから、相手の抵抗を予測した「怒り」をあらかじめ使いながら「権利」は行使されます。だから少しでも女性が抵抗するそぶりを見せるだけで、「怒り」は容易に「暴力」として発動されます。そして、暴力を恐れた女性が逆らうことを諦めると「権利」は正当化されることになります。「お前は認めたよな」と。さらに「みんなやってる」だから「おれは正しい」。
 そうしてできたのが「今の世界」です。
 ちなみに、著者(やその賛同者)に対して「おれは女性を大切にしている。そんなこともわからないのか。だから女は駄目なんだ」と上から目線で熱心に“説教"したがる「男」はやたらと多いそうです。

 


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