『スターウォーズ』は、アメリカという微妙な精神状態が反映された映画だと、僕には思えます。
きょう、たまたま4時間程度、街中に車を置いて待つだけという時間が僕に発生し、致し方ないので、その近くの劇場で、この最新作を見ました。安倍総理が、年末に見たことをネット住民が非難している(この非難の意味は皆目理解不能、安倍氏だから、何でも叩けばいいと考えているのは、殆ど頭のおかしい人の言説です。批判するなら、少しでも意味があることをしましょうね。)、あの映画です。
平日で、田舎の映画館ですが、びっくりしたことに最初の観客は僕一人でした(途中から数人は来たのですが。。。)。日本は本当にいろいろと厳しいですね。
まず、この映画は、善と悪との対峙を描くのが基本です。
今回も、悪の側として、「ファースト・オーダー」という組織が描かれていますが、要は帝国軍であり、第二次大戦のナチスや日本などをモデルにしていることには、変りはありません。
それにレジスタンスをおこなう人々が、善の側として描かれます。共和国とされますから、ここにアメリカを仮想しているのでしょう。
しかし、その共和国に対して、「スターキラー」という太陽すべてのエネルギーを使って、惑星を数個吹き飛ばす兵器が登場します。
これは、原爆が超兵器化したようなイメージでしょう。それが共和国側を粉々にするシーンを見せ付けます。
なんというか、原子爆弾を使ったアメリカが、むしろやられる側として描かれます。
こういうところが、この『スターウォーズ』という作品を観ていて、善悪二項対立だけでなく、そうした超絶する兵器を現実に有していることへの微妙な感覚がすれ違います。
今まで以上に興味深かったのは、善なる側の主人公を演ずる若い女性 (デイジー・リドリー)を助ける役割、しかも悪を裏切った人物として、黒人の男性( ジョン・ボイエガ)が、登場しています。彼女とのロマンスもあるような雰囲気です。
ちなみに、この抜擢された若い2人の演技は素晴らしいと思います。この作品が成功した大きな鍵だと思います(全米での公開実績は既に『タイタニック』を超えています)。
これまでのスターウォーズでも、脇役としては黒人俳優がそれなりの役を演じていましたが、アメリカ的映画の代表作品である『スターウォーズ』準主役として、黒人俳優が出ていることも確認しておいたほうが良いと思います。現実も黒人大統領なのですから、何もおかしくはありませんが。
また、グアテマラ人の母親とキューバ人の父親のハーフである、オスカー・アイザックも、プラスイメージが強いパイロットの役で出演しています。
こうしたキャスティングも作品全体の多様性を表現するように僕には思えました。
なお、中国系と見られるキャラクターも複数、画面上には登場しています(そんなに大切な役ではない)。
これも、この作品が決定的影響を収めるために、中国本土の興行成績が重要であることと無関係ではないでしょうし、善悪問わず、中国人的存在感を映画的に出しておきたかったのかなとも思いました。現実世界で、中国人に感じているアメリカの感覚から考えても。(なお中国では、この映画ポスターから有色人種だけ小さくしたり、排除したとかいわれています。これは、中国の後進性ですね。)
そして、勿論、日本人は影も形もありません。存在感などありませんから。
作品全体としては、実はまだ新シリーズのエピソード的内容にまだ留まっています。そしてたぶんこの新三部作も、全シリーズを通じての、家族史的要素が大きいです。父と子の物語が、アメリカ人には大きいのでしょうが。
今回は、その序章的な中身を二時間半という長丁場の作品に仕上げていますが、その時間の長さを殆ど感じさせない緊張感が続く映画です。完成度は、その意味ではきわめて高いと思います。
また、『LOST』のJ・J・エイブラムス監督ですから、宇宙空間のSF的色彩だけでなく、人間同士の現実的葛藤の心理を通常の空間の中でも展開させています。それが、ルーカス作品よりも、一段深めた内容となっていて、少なくとも10年以上前に製作された三部作よりは遥かにましな出来になっていると思います。
更に、40年近く前にフィルムを劇場で驚きと共に見た方(僕も幼い頃にそんな感じで見ました)でも、直接の続編としての重さに、今回の最新作は十分に応えたものだと思います。
ふつうはこんなにうまくいきませんよ。
僕にとっては、微妙なアメリカを考える作品としても、見所があると理解しています。
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