長唄三味線/杵屋徳桜の「お稽古のツボ」

三味線の音色にのせて、
主に東経140度北緯36度付近での
来たりし空、去り行く風…etc.を紡ぎます。

見てはいけない…!

2010年08月25日 01時51分15秒 | 稽古の横道
 夏の風物詩、恐怖映画…スリラー、ホラー、サスペンス、スプラッター…いろいろありますが、恐怖にもお国柄があって、怖がらせ方が違う。

 なんかヤダなー、ヤダなーと思って、バッと後ろを向くと…何もいなくて、でも、ますます怖い…ここら辺に出そうだな…と思って怖がる心構えをしていると、予期せぬ方角からドヒャッ!!と出てくるというヒネたパターンと、なんか、どうもヤダなー、ヤダなー、で、バッて後ろを向くと、ぎゃあああぁ~~~、やっぱりいた~~っつ!という直球パターンと、ありますね。
 もう30年近く前に考察していたのですっかり忘れてしまいましたが、イタリア映画の怖がらせ方が前者、アメリカ映画の怖がらせ方が後者のパターン、という感じだったように記憶しています。

 子どもの頃読んだ、怖い読み物特集雑誌に、ものすごく怖い次号予告のカットが載っていて…それは、タイトルが「恐怖のネックレス」というような感じの。
 そのネックレスをして鏡を見ると、物凄い顔の自分が映っている…というようなイラストでした。結局本編は読んでないのですが、あまりに怖い予告編だったので、それだけでもう40年の長きにわたって、覚えているのです。
 …どんな話だったのでしょう。たぶん、一生、分からないままだけれど。
 時々、一人で夜中に鏡を覗くのが、無性に怖い。あぁ、コワい。

 大人になってから、そんな怖いものの話はすっかり忘れて…だってお化けやユーレイより人間のほうがコワイのだもの…とか思いながら、日々を暮らしていた三十代ごろ。
 何がコワイって、歌舞伎座で着物の着こなしが妙チクリンで笑い者になるのだけは、絶対に避けたい、と、オシャレが命だったお年頃に、呉服屋さんで見る着物見る着物、全部が欲しくなってしまう、という、怖い目に遭っていました。

 内海桂子師匠が、着物雑誌に連載を持っていて……着物を見るとつい買っちゃう。なるべく見ないように街を歩いているんだけど、馴染みの呉服屋さんの番頭さんが、暖簾から半分顔を出して「師匠、いいのがありますヨッ」とかいわれると、やっぱり好きなもんだから、ずるずると見てしまって、ついつい買っちゃう…という、そんな記事を読んだ覚えがあります。

 あー、ダメダメ、目の毒なんです。私ももう、呉服屋さんには絶対に行かない。……と、思う。
 それにしても、迷って迷って迷った挙句、選びに選んで、悩みに悩んで着物を買うのですが、そうして、候補に挙がりながら買わずに過ごした着物の柄って、いまだに覚えているのです。
 特別に高くて買えなかったというわけではなく、何となく決めきれなかったというお品なのですが、10年以上が経った今でも目に浮かぶ、薄水色に印判散らしの石版摺り調小紋、パステルカラーの乱菊の大柄小紋、朱色のむじな菊が亀甲取りになってる江戸小紋、漆黒に星絣の琉球紬…エトセトラ、エトセトラ…。

 …げに恐ろしきは、着物に対する、女の執念~~~、これですね。
コメント
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