「外国人労働者」は「移民」と同義である
政府は新成長戦略で外国人の「働き手」受け入れ拡大を打ち出した。帰国を前提とし、永住につながる「移民」導入策ではないという建前だが、そもそも欧州の例をみても、外国人労働者は「移民」の範疇に入るし、滞在期間が切れた外国人を一斉に強制帰国させることは政治的に困難だ。したがって、政府はそろりと、移民受け入れに舵を切ったと見るのが自然だ。移民受け入れ策を論じてきた政府の経済財政諮問会議の大義名分は少子高齢化で停滞する日本経済を活性化させるというものだが、ちょっと待てよ。本当に移民で経済は成長するのか。
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昨年秋、消費税増税と引き換えに法人税率引き下げを断行すると決意表明した安倍首相はもとより「移民受け入れ」に否定的だが、外国人労働者受け入れも「業種、滞在期間限定だから移民ではない」との周りからの説明を却下するわけにはいかなかったようだ。「外国人の働き手」を法人税引き下げと抱き合わせにする首相周辺の移民推進グループのもくろみが当たったのだ。
この首相周辺とは、「経済財政諮問会議」「産業競争力会議」「規制改革会議」を裏で仕切る財務官僚と、これらの会議の民間メンバーである御用学者たちとビジネス利害が直結する業界代表である。ことに、人材派遣最大手のパソナグループ会長でもある竹中平蔵氏がパソナ抜きの「慶応大学教授」の肩書で産業競争力会議を舞台に切れ者らしく理路整然と外国人労働者受け入れ拡大論をぶっても、外部から「利益動機ではないか」とうさんくさく見られてもしかたあるまい。人材派遣業は「外国人労働者」派遣ビジネスに手を広げるチャンスと見なされるからだ。
もともと、政策の多くは概して、官僚=「省益」、企業=「自社利益」、政治家=「支持母体の利益」と、とかく不純動機で動き、決まるのが現実だ。財務官僚の場合は、日本人、外国人を問わず人口さえ増えれば増収となる消費税を意識している。
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後で詳述するが、
人材派遣業のビジネス・モデル強化に与するのは日本の自滅につながると懸念する、とまず言っておこう。外国人労働・移民受け入れ志向は人材派遣業がリードする日本経済の非正規雇用化の延長上にあり、人口減の中での経済成長に不可欠な労働生産性向上に背を向けるのだ。
月刊正論
「外国人労働者で経済成長」の嘘と危険