黒澤明監督の〈生きる〉を見ていないことが悔やまれますが
イギリス版の〈生きる〉の感想を簡単に書きたいと思います。
(あらすじ)
1953年、第2次世界大戦後のイギリス・ロンドン。
役所の市民課に勤めるウィリアムズ(ビル・ナイ)は、毎日同じことを繰り返し、仕事に追われる自分の人生にむなしさを感じていた。
ある日、医師からがんで余命半年であることを告げられる。
最期が近いことを知った彼はこれまでの味気ない人生を見つめ直し、残された日々を大切に過ごして充実した人生にしたいと決意する。
やがて、彼の変化は無関心だった周囲の人々をも変えていく。
(感想)
1950年代のイギリスということで
先ず、会社に向かうために列車に乗り込む男性たちが、皆、山高帽をかぶりスマートに背広を着こなす姿に
流石、と思いました。
列車内での会話も慇懃無礼な様子がいかにもイギリスらしい感じ。
毎日を無難に事を起こさず時間が過ぎるのをただ待つように過ごす役所の課長ウィリアムズを、名優ビル.ナイが上手く演じていました。
がんを患い余命半年と医者から告げられるも
残りの人生をどのように生きればいいのか分からない。
そんな折にかつての部下であったマーガレットと再会する。
生き生きと未来を信じて生きている彼女に触発され、次第に残された人生を真剣に生き始めるウィリアムズ。
ストーリー的には原作とほとんど変わらないらしいのですが
黒澤監督の生きるを見た方のレビューを読むと、息子との関係が原作よりは険悪ではないし
ささやかな希望も感じさせる内容になっていたそうです。
以下希望を感じさせた場面
雪の中で亡くなってしまった父に対して
息子は「どうして余命半年であることを言ってくれなかったのか、知らせてくれていたらあんな風には死なせなかった。」
と、悔やみます。(父親への愛を感じました)
マーガレットとピーターとの恋にもかすかな希望が
そして、ラスト、黙ってブランコを見つめるピーターに若い警官が近寄ってきて
「この前ここで亡くなった方が、ブランコに乗っているところを見かけたんですが
幸せそうに見えたのでお声がけしませんでした。
でももし、声をかけていたらあのような結果にはならなかったのかもしれないと
悔やんでいます。」と言います。
その問いに対してピーターは
「いえ、課長は確かにあの時幸せだったんです、。幸せを感じながら亡くなられたのです。」
と答えます。
そして、スコットランド民謡(ウィリアムズはスコットランドの血を引いている)『ナナカマドの木』を歌いながらブランコを漕いでいたウィリアムズの姿が
ビル.ナイの歌うナナカマドの木がとっても良かったです。
日本版ではゴンドラの唄だそうです。
見た後は、やっぱり、自分は生き生きとそして人のために生きているだろうか?と自問自答しました。
そして、機会があったら黒澤版も見てみたいと思いました。(もっと胸に迫ってくる映画なのではないか?と思っています)
マーガレット(エイミー.ルー.ウッド)と。
息子には告げる事が出来なかった事
自分の命が後わずかであることをマーガレット
には告白する。
ナナカマドの木を歌いながらブランコに乗る
ピーター役アレックス.シャープ