思いがけない本にドキリとするような艶を見つけた。
男女の交わりに関わる心情風景です。
[福袋]短編の中の"暮れ花火"より
江戸時代。羽織の裏地に絵を描く女絵師とそこへ仕事依頼に通う若者(修吉)。
あっさりした気性の絵師に心通わせる若者なのだが、絵師は全く気付いていない。親しい姐さん弟感が溢れた日常だ。
そこへ笑絵(現代ポルノ絵)を描いて欲しいと依頼が舞い込んできたことから、
意図せず絵師の恋絡みの来し方が明かされることになる。
それまでのそしてその後の、修吉のする事話す事の何気ない描写がツンとくる。こんな感情の出し方が好きだ。慎ましくもあり時に大胆。
大胆に出た時に姐さん気がつけよ、と思うのだが…。
過去に描いた自筆の笑絵回想シーンがとても艷やかだ。
浅井さん、結構露骨な表現をサラっと書く。サラっとしているだけに想像逞しくなるのだけど
夜空で弾けた打ち上げ花火の閃光の下に映っていた男女二人の情事の風景。
その男は14才だった絵師の初めての男だった(江戸時代の14才ですからね)
この情景設定が、なんとも綺麗。花火のスポットライトですよ。
そして、現在の絵師と修吉。二人で線香花火をする場面「うつむいて賢明な横顔…」の8才年下の修吉はついに伝えたのです。
ま、ハッピーエンドではあるが、恋の一番美味しい状況は通り越しちゃったのねと要らぬ思いを消す。