一週間目の夜（その２）

　Ｙ美はようやく口を開いた。溜めに溜めていた不満を一気に迸らせたようなすごい剣幕だった。ようするに、Ｙ美の母が善意で僕を住まわせてやっているのに、僕は恩知らずな態度をとっていると言うのだった。
　そんな風に言われるのは心外だった。僕が食事を終えて食器を片付けた後すぐに自室へ引き上げるのも、Ｙ美が彼女の母と団欒するのを邪魔したくなかったからだ。でも、Ｙ美にはそれがとても不快に感じられたのだろう。
　それ以外にもＹ美は僕を非難した。次のようなことだ。
・声が小さく、しっかり返事をしない。
・風呂に当然のように先に入る。（これは僕も気づかなかった）
・食器を台所に運ぶだけで洗わない。（もちろんＹ美も洗っていないが）
・家の掃除をしない。（居候なら居候らしく働きなさい）

　もし僕の態度が改まらないようなら、母に言いつけて僕の母をくびにすると言う。僕の母は、Ｙ美の母がオーナーである会社の寮で住み込みで働いているのだ。さらに借金とか土地の所有権の問題とかいろいろあって、母からＹ美の家では言うことをよく聞き、逆らわないように言い含められていた。
　だから僕としてはＹ美に従わざるを得なかった。苦労ばかりしてきた母にこれ以上心配をかけると、母は自殺しかねない。
　僕が反省の言葉を口にしてもＹ美は一向に信じていないように首を横に振った。それから、「服を脱いで、パンツ一枚になりなさいよ」と言った。