ずいぶん経ってから後ろ手を縛るロープを解いてもらった。続いて、目隠しの手拭いが外された。メライちゃんはもう裸ではなかった。襟付きのポロシャツに多数の襞のあるスカートをまとっていた。床に座り込んで、顔を伏せている。
「残念でした。メライの裸、見そびれたね」
Y美が不敵な笑みを浮かべて言い、相変わらず生まれたままの格好を強いられている僕の両手を取って、引っ張り上げた。おちんちんが丸出しになる。
「よっぽど興奮したんだね。声だけだったのに」
お姉さんが万歳させられた僕の前にしゃがみ、勃起したおちんちんの裏筋を人差し指でさっと引いた。
両手を後ろで縛られ、ずっと立たされていた間、どんなことが行なわれたのか、目隠しをされていたにもかかわらず、映像のようなものが僕の頭の中に残っている。それは生々しい声の渦から生まれた、頭の中で作り上げられた映像だった。
裸にされたメライちゃんが鷺丸君に胸を揉まれたり、お尻を撫で回されたり、股を開かされたりした。全てはY美の指示だった。鷺丸君は従順にY美の言いつけを守り、メライちゃんの体をいじくり回した。
激しい息使いとともに、メライちゃんのすすり泣きや許しを乞う声が絶えず僕の耳に入ってきた。僕は最初のうちはやめるように、メライちゃんをこれ以上傷つけないように、Y美に対して今までにはないような強い、かなり強い調子で抗議をした。頬に何度も平手打ちをされ、ぶたれたり蹴られたりしても、僕は抗議をやめなかった。鳩尾にパンチを受けて、呼吸できない苦しみにのたうち回った。
目隠しされた暗闇の中で受ける暴力は凄絶だった。恐怖と痛みに震えながらも、メライちゃんの痛々しい姿が鮮明に浮かんで、僕はY美にこれ以上メライちゃんを苛めないように懇願し続けた。
おちんちんの袋にY美の蹴りが入って、悲鳴を上げてフローリングの床に倒れる。見かねたお姉さんが僕を抱きかかえた。
「大人しくしていようね、もうすぐ終わるから」
僕の頭を撫でながら、お姉さんがなだめた。冷たい手でおちんちんがいじられる。
「すっかり怯えてるのね。メライちゃんは、案外気持ち良さそうなのよ。声がするでしょ。よく聞いてみて」
お姉さんにおちんちんを扱かれ、頭の中が朦朧としてくる。後ろに回されて縛られた手は、どんなにもがいても自由にならなかった。僕はお姉さんに付き添われながら立たされ、今ここで繰り広げられていることを想像するように言われた。甘く、熱のこもった声が聞こえる筈だと言う。
メライちゃんは今素っ裸で全身にサラダ油を塗られ、四つん這いにさせられ、お尻を高く上げさせられ、お尻を左右に振りながら、鷺丸君の指戯に耐えている。白くて滑々した肌を唇が吸着する。ツンと上を向いた乳首が指の腹で撫でられ、押し潰される。
啜り泣きながら、Y美の指示する通り仰向けに寝たメライちゃんが「もう絶対に逆らえない」と観念して、ぶるぶる震えながら足を開く。鷺丸君が股の間に入って正座し、頭をぐっと下げてメライちゃんの股間へ首を伸ばす。ぴくりと体が反応し、体が弓なりに反って、お臍が高い天井の梁に近づく。
うつ伏せになる。真っ裸のメライちゃんの白い背中、お尻へ皆が視線を注ぐ。鷺丸君がメライちゃんの足首を持って引き摺る。艶々したフローリングに小ぶりの乳房が痛々しく変形する。こりっとした乳首がフローリングと摩擦してぶるぶると震え、メライちゃんが言葉にならない声を上げる。
膝立ちさせられたメライちゃんが両手を頭の後ろで組み、サラダ油にまみれた上半身を湾曲させる。正面から鷺丸君が迫ると両手をメライちゃんの背中に回し、太腿の内側をメライちゃんの脇腹に密着させ、首から胸にかけて舌を這わせる。メライちゃんから押し殺した声が漏れる。
お姉さんが言った。直ちには受け入れることのできない現実があるでしょうけれど、いずれは受け入れなくちゃいけないのよ、と。受け入れるにはもう少し時間を要するかもしれない、それでも受け入れるのよ。お姉さんが優しい声で僕を慰める。
この無残な現実を飲み込むためのオブラートがあるらしい。それが性的な官能だと言う。なんとなく夢幻的な、官能的な感触がしたら、それに身を任せるしかないじゃないの、と忠告する。どんな宗教よりも確実に現実を受け入れることができるようになる、それが性的な官能なんだよ、とお姉さんが請け負う。
おちんちんからお姉さんの手が離れても、しばらく硬い状態が続いた。扱きによる刺激とは別に、耳から入ってくる新たな刺激に反応したようだった。Y美の容赦ない命令とそれに抗いながらも従わされるメライちゃん、黙々と指示通りに動く鷺丸君の三人の様子を生々しく伝える音は、映像、それも決して見たくない映像として、暴力的に僕の頭の中で何度もフラッシュし、実際に目で見るよりも刺激的だったかもしれない。
目隠しを外された今、射精寸前のおちんちんがむなしく屹立するのを見て、堪らなく恥ずかしくなった。このアトリエにいる全員に、Y美、お姉さん、鷺丸君、そしてメライちゃんにまで、目隠しされながらも音だけに反応しておちんちんを硬くさせているところをしっかり見られてしまった。
Y美に手を引っ張り上げられて恥ずかしいおちんちんを隠すことができない僕は、火照った顔を俯けて、首を横に振りながら、「見ないで」と懇願した。
「ね、分かったでしょ。こいつはどうしょうもない変態で、音だけ聞いて勝手に妄想を膨らませて興奮するんだよ」
Y美が勝ち誇ったような調子でメライちゃんに言い、僕の万歳させている手を放した。急いでおちんちんを手で隠し、アトリエから出ていこうとするものの、たちまちにお姉さんと鷺丸に捕まって、その場に立たされた。もう練習が終わったのであれば、メライちゃんがスクール水着から服に着替えたように、僕も服を着たい。そう訴えたところ、お姉さんに「その必要はないから」と止められてしまった。
「でも、メライもこんないやらしい男の子だけには裸を見られなくて済んだんだから、良かったねえ。感謝しなさいよ。私に感謝するの。分かった?」
恩着せがましくY美が釘を刺すと、メライちゃんはずっと物置に仕舞い込まれていた古い人形のように、こくりと頷いた。その無表情は、鷺丸君が僕の後ろの床を這っていた青大将を見つけ、ダッシュして捕まえた時も変わらなかった。鷺丸君の腕に絡み付いた青大将を間近で見ても、メライちゃんは死んだような目で見ただけで、眉ひとつ動かさなかった。メライちゃんだけでなかった。Y美もまた一瞬ぎょっとしたように目が大きくしただけで、平然と青大将を無視した。
この青大将も不運だった。池の縁を固める石と石の狭間で涼んでいたところを鷺丸君に見つかってしまい、メライちゃんと僕への苛めに使われてしまった。「もういいよ。逃がしてあげなよ」とお姉さんが言い、鷺丸君は庭へ青大将を放しに行った。
入り代わりに鷺丸君のお母さんがアトリエに入って来て、そろそろ女性コーラスの人たちが集まる時間だから練習を引き上げるように言う。鷺丸君のお母さんは僕がパンツすらも脱がされた一糸まとわぬ格好でいるのを見て、さすがに目を丸くした。お姉さんから事情を聞いても、「まあ可哀想に」と上の空で呟きながら、少し顔を赤く染めて、じろじろと僕を見回している。おちんちんに手を当てて隠している僕はY美に背中を押され、とうとう丸裸のまま庭に出された。
母屋から荷物を取ってきたメライちゃんが帰ろうとしてY美に引き留められた。妹たち弟たちの世話をしなくてはならないとメライちゃんが言ってもY美はその腕を離さず、「ふうん、大変だね、きょうだいがいっぱいいる家って」と、冷やかに応じる。僕は池の縁に池を背にして立たされ、気をつけを命じられた。
「準備体操を始めなよ、プールに入る前みたいに」
あずま屋のベンチに腰を下ろし、Y美が足を組む。その横にはメライちゃんを座らせ、顎の下に手を入れて、俯くメライちゃんの顔を上げさせた。お姉さんと鷺丸君がいないのは良かったけれど、それでもやはりメライちゃんに昼間の明るい日差しのもと、真っ裸の姿を見られるのは辛かった。この格好のまま準備体操をさせられる。命令に従わないとどんなに酷い目に遭わされるか分からない。僕は泣きたくなるのを堪えて、体操を始めた。学校でプールに入る前にする一連の体操だった。
体操中、Y美がおちんちんに手を伸ばしても動きを中断することは許されなかった。おちんちんの皮を伸ばされたり剥かれたりする。扱かれて少し硬くなりかけたおちんちんが左右の内腿に音を立ててぶつかる。軽く跳躍しながら体を回転させる。Y美は、メライちゃんを抱き寄せるようにして顔を固定させ、裸の僕から目を離させなかった。
学校でするよりも念入りに長く体操をさせられた僕は、次に池に入るように命じられた。強い夏の日光で温められたぬるま湯のような水がねっとりと足に絡む。Y美の指令は、平泳ぎで池の向こう側まで行き、池から少し離れたところにある松の木にタッチしてから戻ってくることだった。池は片道だけで三十メートル近い距離があった。
それが終わると、すぐに次の指令が出る。クロールで同じコースの往復だった。指令は矢継ぎ早に出て、クロールの次はまた平泳ぎだった。
意図のよく分からないY美の命令をこなして、池の中で息をぜいぜいさせていると、あずま屋のベンチの周りには、ちょっと近くのスーパーまで買い物へ出掛けるような服装をした女の人たちが五人ほどいて、Y美と話をしていた。女性コーラスの人たちだった。その中には、N川さんのお母さんの顔もあった。首から先だけを水面から出している僕を見つけて、笑顔で会釈する。ここから岸までは極端に浅くなるので、僕はあえて深いところに留まって一礼する。
「この子、あんまり暑い暑いって言うから泳がせてやったの」
Y美が言うと、
「まあいいわね。男の子は元気があって。水着も用意してたのね」
N川さんのお母さんが日光に目を細めながら、池の中の僕に目をやる。淀んだ池の水が僕のおちんちんを隠してくれているようだった。
「この子、丸裸よ。さっき向こう岸を上がったところを見なかったの?」
突然男のような低い声がした。一際背の高い、丸太のように太い腕をした女の人が濃い眉毛の下の細い目を吊り上げて、こちらを見つめている。Y美とのやり取りから、その女の人がS子の母親であることを知った僕は、娘にそっくりな大柄な体格、威圧的な雰囲気に怖じ気づいてしまった。
Y美が僕にもう一度クロールで往復してから上がるように命じた。
「まあやだ。Y美ちゃん、この子を裸にして泳がせたんでしょ」
「だってこの子、女子に悪さするから」
一斉に華やかな笑い声が起こる中、僕は池の深いところから浅いところに移り、おちんちんを手で隠しながら、ゆっくりと岸に近づいた。ぬるぬるした石に何度か足が滑って転びそうになりながらも、おちんちんから手を離すことなく、岸辺の石畳に裸足を乗せる。足の裏が熱かった。
「いやだねえ、ほんとに丸裸じゃないの」
N川さんのお母さんが言い、水滴をぽたぽた落としながら立つ僕のお尻に付着した藻のようなものを取り除いた。
「娘から聞いてるよ。女の子にいやらしい真似、いっぱいするんだって?」
S子のお母さんは、何か事実と異なることをS子から吹き込まれているようだった。憎々しげな目で僕を睨み付ける。Y美の横で怯えるように身を小さくするメライちゃんを顎でしゃくり、「この子の裸に触ったんだって?」と詰る。隠し部屋に閉じ込められた時のことをY美が面白おかしく話したのだろう。
「娘にも変なところを見せたって言うじゃないの。どんなことをしたのか、私の前でもやってもらおうかね」
指をポキポキ鳴らしてS子のお母さんがすごんだ。
母屋の方からこちらに向かってお姉さんと鷺丸君が小走りに来て、ピアノ伴奏者の到着が遅れていることを伝えた。N川さんのお母さんは、練習が始まるまでの空き時間ができたことを喜んだ。S子のお母さんも同意して、「たっぷり時間ができたみたい」と言って笑った。二人とも女性コーラスに付き合いの関係で仕方なく参加しているようだった。それに対して他の三人は、時間にルーズなピアノ伴奏者を口汚く罵った。この三人の中にフレームが茶色の眼鏡をした女の人がいて、その顔に見覚えがあった。
「ピアノ伴奏、罰が必要。遅刻したから土下座ね」
ぽかんとして、思ったことをそのまま口に出したように言う。ヌケ子さんだった。僕がおば様に言いつけられて公民館で整体のモデルをさせられた時、パンツ一枚の裸にさせられ、午後からはそのパンツすらも脱がされてしまったのは、全てモデル用の服が用意できなかったヌケ子さんの手違いが原因だった。
ミスが多く、重要な仕事は任せてもらえないこの人は、上司であるおば様から「ヌケ子さん」と呼ばれ、みんなの前で叱られたり、笑われたりすることが多々あるのだけれど、本人はいたって吞気な性格で、普通の人がプライドを傷つけられて落ち込むような場面でも、へらへらしているか、ぽかんとしているかのどちらかだった。
自分の存在を否定されるようなことをみんなの前で言われて、ヌケ子さんが精神的にショックを覚えているのかは分からない。そのような心配はないとおば様がある時、電話で誰かに断言しているのを聞いたことがある。でも、僕にとってはヌケ子さんは油断のならない存在だった。僕はこの人の前で素っ裸を見られたばかりか、お尻を叩かれたり、射精させられたところまでもまじまじと観察された。
「私、眼鏡掛けたから、ナオス君、なかなか気付かなかったね。私、もっとあなたのおちんちんがよく見えるように眼鏡掛けたよ。似合うでしょ?」
眼鏡のフレームに手を掛けながら、ヌケ子さんが話し掛けてくる。ヌケ子さんは、夏祭りで披露する女性コーラスにおば様の命令で参加することになったけれど、始めると俄然面白くなって、週に二度の練習が楽しみで仕方がないと言う。
「ナオス君も夏祭りに出るんでしょ。マジックショー。でも、なんで裸なの?」
この問いには僕の代りにY美が答えた。
「池で泳ぐために裸になったんだよ。びしょ濡れの体を見れば、それくらい分かるでしょ。相変わらず馬鹿って言われてない? このヌケヌケ、ヌケ子」
「やだ、Y美さんも口が悪いよ。お母さんにそっくりだよ。こんな虫の死骸がいっぱい浮いてる池で普通は泳がないよ。Y美さん、無理にナオス君を裸にして泳がせた? ナオス君、一人だけ丸裸で泳がされて悔しいね。苛めないでくださいって、もっと真剣にお願いしたら、Y美さんはきっともう苛めないよね。そうでしょ?」
眼鏡をして少し賢そうに見えても、口数が減らないのですぐにメッキが剝がれる。ヌケ子さんの問い掛けにY美は答えず、S子のお母さんへ顔を向けた。
「こいつ、やっちゃいますか?」
S子のお母さんが憎悪の籠もった目つきで僕を睨んで、頷いた。なぜこんなに恨まれているのか、よく分からなかった。S子が毎日のように帰宅が遅いのは、一重に僕のせいだと考えているのかもしれなかった。
鷺丸君が僕の肩に手を置き、羞恥に耐えながらおちんちんに手を当てて隠している僕を励ました。髪の毛から水滴をぽたぽた落として素っ裸のまま立っている僕の腕をお姉さんが取り、「頑張ってね」と耳元で囁く。
マジックの練習を見学した児童合唱の学童たちがメライちゃんを取り囲んでいた。ペレー帽の女子学童は首元にフリルの付いたキャミソールに着替えていた。青いカチューシャの女子学童と美声のボーイソプラノという眼鏡の男の子は、午前中と同じ格好だった。お母さんたちの合唱練習に付き合って、わざわざ来たと言う。
「お兄ちゃん、まだ裸んぼのままなんだね。今度はもっといろいろ見せてくれるってY美さんが約束してくれたんだけど」
女子児童たちが後ろからメライちゃんのポロシャツの襟を引っ張って、
「ねえねえ、何を見せてくれるのかな」と、意地悪く質問する。
メライちゃんが口ごもると、更に勢いづいて、
「ところでメライはなんで服着てんの? さっきみたいなピチピチの水着に着替えなよ。すごく似合ってたのに」
などと冷やかす。年下のくせにメライちゃんを呼び捨てにする、この生意気な女子児童たちを憎く思って、なんとかたしなめてやりたいと思ったけれど、僕のこの情けない今の格好のままでは何を言っても無駄に終わる。悔しい思いを噛みしめて黙っていると、鷺丸君が僕に手首にロープを巻き付けた。
「やめて。何するの」
「うるさい。Y美さんの望んでることなんだから大人しくしてろ」
いきなり怒鳴りつけられる。鷺丸君は、Y美の手下のようになって動く自分に対する嫌悪感をいっぱいに感じているようだった。テレビ関係者やその方面の有力者が審査員に加わる夏祭りに出演できるのは、Y美の母親であるおば様の口添えがあるからこそだった。裸にされた僕を苛めることなどは、到底マジシャンとしての誇りが許すところではないだろう。Y美に逆らえないストレスは相当なものと思われる。その苛々がまた裸の僕に向けられてしまう。
手早く僕の両方の手にロープを巻き付けた鷺丸君がY美の指示する通り、大きな黒松の太い枝にロープを結び付ける。平らでほとんど凹凸の感じられない敷石に裸足を乗せ、両手を万歳させられた格好で拘束される。お姉さんが僕の露わになった腋の下に顔を近づけ、
「青白くて神秘的な感じがする。無毛って、手入れしなくてもいいから楽ね」
と言って、乳首を指で撫でた。
いつのまにか女の人たちが増えていた。ピアノ伴奏者はまだ到着していないらしい。暇を持て余した女の人たちが皆の集まる方へぞろぞろと吸い寄せられた感じだった。Y美にがっしりと体を押さえられ、メライちゃんが最前列に腰を下ろした。メライちゃんのすぐ目の前におちんちんが晒されている。メライちゃんはもうおちんちんに慣れたのか、それ程動揺はしなかったけれども、顔を少し赤く染めて、俯きがちだった。Y美はメライちゃんの視線にもチェックを怠らず、あまり目を反らす時間が長いと顎を掴んで引き戻した。それが頻繁だと、メライちゃんの口を開けさせ、人差し指でメライちゃんの前歯をコツコツ叩くのだった。
後から来た女性コーラスのメンバーたちは、素っ裸の僕が縛られ、何もかも丸出しの状態で女の人たちに囲まれているのを見て、何事かと憤慨し、義侠心に駆られた。ヌケ子さんが「悪いのはこの男の子。こんな目に遭うのも仕方がないのよ」と言ったけれど、納得できないようで、「やめなよ。もう許してあげなよ」と、異様な雰囲気にたじろぎながらも、集団で一人の男の子を苛めることがどれだけおかしな、普通の社会生活ではあり得ないことであるかを分からせようと努めた。
「誤解しないで。これは教育なんだから」
お説教はたくさんとばかり、S子のお母さんが途中で遮った。
「この子はうちの娘の前で性器を露出するなど、変態な行為を重ねたのよ。おかげで娘はすっかり男性不信。父親とも口を利かなくなったのは、この子の変態のせいよ」
違う、それは全然違う。S子はY美と一緒になっていやがる僕のおちんちんを弄び、興味本位で何度も射精させたのみならず、素っ裸の僕に散々恥ずかしい苛めをした。浣腸させられ、皆の前でうんちをしてしまったことも一度や二度の話ではない。それなのに、この母親は娘の言うことを鵜呑みにして、事実とはまるで異なることをまくし立てる。
「酷い。それは嘘です」
思わず抗議した僕は、Y美に「お前は黙ってろ」と言われ、お尻を抓られた。
「へえ、そうなんだ。それは酷いですね」
ヌケ子さんが感心する。僕がY美やS子に普段から苛められているのを知っているくせに、家ではパンツ一枚しか着用させてもらえないことも承知しているくせに、なぜこうもあっさりとS子のお母さんの弁を信じることができるのか、世界七不思議の一つに数えたいくらいだった。
N川さんのお母さんが話を継いだ。
「それに私たち女性の立場から、男の子が物理的な刺激によって性的に興奮し、精液を出すに到る過程をしっかり見ておくことも、今後、異性に対する女子の教育を考える上で大切なことだと思います」
僕を即座に解放するように言ったコーラスメンバーたちも、話が女子の教育に及ぶと、尖った肩がへこみ、物腰が柔らかになったように感じられた。
「いえ、何も私たちはこの男の子を観察することに反対してるんじゃなくて、この子の同意の上でやってるのかなっていう、ただそのことが気になっただけで」
「それはもちろん同意してないでしょう。確かにこの子はいやがってますね。このように真っ裸のまま手を縛られ、服を着た私たちの前で何もかも丸出しにさせられ、本当にかわいそうですね。でも、仕方ないじゃないですか」
それだけ言うと、N川さんのお母さんは手を口に当てて、上品そうな笑い声を立てた。すると、ヌケ子さんも一緒になって笑い出した。N川さんのお母さんが清音で笑うに対し、ヌケ子さんのそれは濁音で、しかもN川さんのお母さんの笑い声を打ち消すほどに大きな声だった。僕の味方になってくれていた人たちも、この意味不明な笑いに丸めこまれたようで、当然その後に出ると予想される反論が完全に封じ込められてしまった。
コーラスのメンバーにはみなみ川教の信者がいて、「精液はそれを放出する男性の年齢が若ければ若いほどにエネルギーに満ちて世に活力と念願成就の力を与えたもう」という教団の教えを披露すると、信者ではない人たちまでもがふんふんと頷いた。
「気持ち良くなるんだから、そんなに怖がらなくていいよ」
お姉さんが言い、おちんちんの根元を指でつまみ、ぶらんぶらんと左右上下に振る。長いざらざらした舌が僕のお臍の下をぺろりと舐めた。小さく喘いだ僕の顔を下から除き見てにっこり笑うと、お姉さんはすぐに向き直っておちんちんを横から見つめ、きれいに折り曲げた膝の上に片手を置き、もう片方の手でおちんちんを扱き始めた。指と指の間におちんちんを挟み、ゆっくりと動かす。小指の先、親指がおちんちんの袋に触れた。
「悶えてる悶えてる。だんだん硬くなってきた」
Y美がメライちゃんに話し掛ける。メライちゃんの隣に腰掛けて、しっかり僕の恥ずかしい姿を見ているか、チェックしているようだった。
二日間精液を出していない僕の一糸まとわぬ肉体は、すぐに官能の火でじりじりと炙られた。肘を軽く曲げた状態で両手を吊るされた不自由な体をくねくねと、まるでそうすれば淫靡な扱きから逃れ得るかのように、くねらせる。
じんじんと心地よい刺激が体じゅうに広がり、頭がぼんやりして働かない。ヌケ子さんが僕の後ろに立って、首筋や胸に細い指先を這わせた。
「気持ちいいでしょ。おちんちんがびんびんだよ」
ヌケ子さんが囁き、耳たぶを軽く噛む。どんなに押し殺しても喘いでしまう。見学する人たちにもそれがしっかり聞こえ、失笑が起こる。児童合唱の二人の女子児童と眼鏡の男の子が険しい顔つきをして僕を睨んでいる。お姉さんのおちんちんを扱く速度は非常に緩慢になり、ほとんど手を添えるだけだった。射精直前の、大きく膨らんだおちんちんをじっと見守る。ヌケ子さんの眼鏡のフレームが肩に当たった。
気づくと僕の体を愛撫する手が四本もあった。S子のお母さんも加わり、S子のようにいささか乱暴に僕のお尻や腰、太腿を揉みしだく。首から背中にかけてねっちりと複数の指が触れる。唇が僕の裸の背中や肩を吸う。おちんちんの袋がお姉さんの手のひらに乗せられ、中の睾丸を指でつまもうとする。もう一方の手はおちんちんを指に挟んで、ねちねちと動く。僕の頬に甘い息が吹きかけられる。ヌケ子さんだった。
「耐えてるの? それとも感じてるの? うっとりしてるように見えるし、苦しそうにも見える。苦しいのが気持ちいいの?」
ずり落ちた眼鏡を人差し指で戻し、ヌケ子さんが問う。
両手を吊られた僕は、素っ裸の体に否応なく触れてくる手や唇に悶え、執拗なおちんちんの扱きに耐え、いつ終わるとも知れない責めに嘆息した。後ろの雑木林の方からやや強い風が吹いて腋の下を撫でた。ずっと慰みに扱かれてきたおちんちんの袋がきゅっと締まり、そこから快楽の電流がじわじわと体に広がり、波のようになってたぷたぷと体の内側を水位がせり上がってくる。
おちんちんの先が濡れる。お姉さんとY美がそれを指で広げ、おちんちん全体に塗る。おちんちんの袋にも塗る。粘着性のある糸のようなそれがお臍の下に付けられると、S子のお母さんが黙ってそれを下腹部から鳩尾にかけて広げる。おちんちんの先のぬるぬるにY美がまた指先を当て、お尻や首などに塗りたくるようにヌケ子さんに伝える。亀頭の敏感な部分をY美がぺたぺた触り、体がぴくりと反応してしまう。暴力的に押し寄せる快感に打ちひしがれるのとは別種の反応を示した体の動きは、Y美のみならず、至近距離で観察する二人の女子児童と眼鏡の男の子を面白がらせた。
射精寸前の状態を長引かせて、いつまで僕を悶えさせるつもりなのだろうか。甘いじんじんと痺れるような刺激にずっと責められ、羞恥の感覚が薄れ、ひたすら射精の欲望だけを募らせる。松の枝に両手を吊られた今の状態では射精したくとも自分の意志ではできず、僕を性的に嬲る人たちに生殺与奪の権がある。
物理的におちんちんを扱かれ、精液を出したいという生理的欲求ばかりがいたずらに高められる。しかしそれだけで、これを満たすことは断じて許されない。このような際限のない苦しみに喘ぐ僕の惨めな姿をヌケ子さんは流し目に見て、乳首に唇を付け、自分の唾液に濡れたそれを指で撫でるのだった。
いやだ、もう許して、と僕はさっきからずっと、口を開けば哀願していた。その息も絶え絶えの訴えはしかし、僕を責め続ける人たち、観察する人たちを単純に喜ばせるだけの効果しかなかったようで、Y美は僕の切なく訴える声に聞き惚れるように切れ長の目を細めるのだった。僕の側に立って解放を呼び掛けてくれた女の人たちも、S子のお母さんの荒々しい愛撫責めとそれに反応して悶える僕の裸をつぶさに見て、満更僕が嫌がっている訳ではないと判断したようで、今では逆にS子のお母さんやN川さんのお母さんのねちねち責めに感心するのだった。
「知らなかったわ。男の子ってこういうのを喜ぶのね」
喜んでなんかいない、と訴えようとした刹那、お尻を手で開かれ、お尻の穴にぬるっとしたものが挿し込まれ、淫らな声を上げてしまった。
「お兄ちゃん、切なげに体をくねらせて、口から涎垂らしてるし」
「おちんちんびんびん。今にも爆発しそうだね」
「ねえ、女の人みたいな声を出して悶えてる。面白いね」
児童合唱の三人が好き勝手なことを言って、くすくす笑う。
お尻の穴から柔らかい、ぬるりとした物が何度か出し入れされ、引き抜かれたけれど、まだ余韻があって、肌がぬめぬめと切なく波打っている。ヌケ子さん、N川さんのお母さん、S子のお母さんたちのまさぐりは執拗だった。淫欲を丸出しにして悶える姿を多くの人に観察されているという羞恥の苦しみもあるにはあったけれど、そのことすら意識から消し飛ぶ程の性的刺激が両手を吊るされた素っ裸の身に襲いかかる。
おちんちんを扱かれているだけでなく、体じゅうを撫でられ、揉まれ、首筋をヌケ子さんのざらついた舌で舐められている僕は、頭が朦朧として、いつのまにか、「お願いだから」と訴えていた。「お願いだから早く、早くいかせて。いかせてください」と。そう気付いた時、強烈な性的快感に責め苛まれているさ中にかかわらず、ずしりと重い砂のような悲しみの感情が一瞬、胸を過ぎるのを感じた。
服を取られ、素っ裸でいるほかない僕を格好の慰み者とし、こんな風に女の人たちに寄ってたかって興味本位で弄ばれている。
性的な快感は、もちろん僕だって嫌いではない。でも、これは僕自身の欲求があってこそだ。僕が主人で性的な快感は従者。これが逆転するのは僕の考える倫理から外れることだった。それに性的な快感は、できれば好きな人と、例えばメライちゃんのような人と同意の上で、感じて、味わいたい。二人で共有したい。
残念なことに、僕はまだこういう形で性的な快感を享受したことがない。いつも無理矢理、僕の意思とは関係なく、性的な快感に晒されてきた。こんなのは、本当に嫌だと思う。何も羞恥心だけで嫌がっているのではない。
女の人たちは、僕に性的な刺激を一方的に与え、僕の体が反応するのを見て、喜ぶ。つまり、恋愛感情やその人と一緒になりたいという気持ちがなんら伴っていないのに、ただ外部からの刺激を受けるだけでこうもたやすく肉体が変化するということを目の当たりに見て、これを男性の動物的な特徴と捉え、勃起するおちんちんという、ストレートで分かりやすい肉体の現象を楽しむ。
男なんて、なんだかんだ偉そうなことを言っても、理知的に自分を統御しているつもりになっていても、到底そんな高邁なセルフイメージとは似ても似つかぬ弱い弱い存在、ざまを見ろとばかり嘲笑するのだった。僕は女の人のことはよく分からない。女の人だってその人と一緒にいたいという気持ちが欠けていても、性的な刺激を与え続けられると、ほどなく快感に酔わされると思うのだけれど、そしてそれは、おば様が僕に性的な奉仕をさせることからもはっきりそうと確信できるのだけれど、本当は女の人は、自分自身の中にそういう性質があるということを認めたくないのかもしれない。自分のそういう動物的な部分は見たくないのかもしれない。
このような心理的な背景があるからこそ、女の人は、男が性的な刺激に対して心とか気持ちとかとは全然関係なく反応して、おちんちんを硬く大きくさせることを殊更にあげつらい、苛めて、自分たちの内心の怯えを解消しているのかもしれない。
理不尽極まる性的な苛め、一方的に暴力的に襲いかかってくる性的な快感を自分なりに受け入れ、一つの経験として地均しをし、僕自身がこれまで経験してきたことに接続させるには、このように考えるしかなかった。でも、それでも、やっぱり悲しみの感情は拭い切れない。どう考えたって、今の僕には慰めがない。この性的な快感が唯一の慰めかもしれない。つまり、性的な快感が主人で僕が従者だ。また悲しみが胸を掠めて、なんともやり過ごし難い。
「なんか手が疲れてきちゃった。ねえ君、代わってくれない?」
突然お姉さんが眼鏡の男の子にこう話し掛けた。ペレー帽を被っていたキャミソール姿の女子児童に後押しされ、男の子はあっさりとお姉さんのそばに来た。男の子が僕の射精寸前のおちんちんに手を伸ばし、お姉さんに教わる。
「ゆっくりゆっくりやってね」
「こんな感じ?」
「そうそう、上手」
思わず腰をくねらせ、かろうじて自由に動く足を使っておちんちんを股間に挟んで隠そうと試みる。男の子がびっくりしたように顔を上げた。
「いや、やめて。男の子の手じゃいやだ。お姉さんがやってください」
この僕の哀訴は、女の人たちを驚かせたようだった。一瞬の間を置いて、どっと笑いが起こった。僕の味方をしてくれていた女性コーラスの人たちも呆れたような顔して僕を見ている。
「お前に選ぶ権利なんかないんだよ」
一番早く真顔に戻ったY美が僕の髪の毛を掴んで、怖い顔をして睨み付ける。それでも僕は怯まない。
「お願いです。もうおちんちんを扱かれても何も言いませんから、せめて女の人に」
ここまで言いかけた時、Y美の平手が僕の頬を打った。二発、三発と往復で休むことなく、交互に頬を張られる。
「うるせえんだよ。お前は黙って足を開いてろ」
逃れようのない暴力に晒され、悲鳴を上げる。見かねたお姉さんが、「女の子みたいに泣いてるじゃない。もう十分だよ」と止めに入ってくれた。
「かわいそう」
女性コーラスの人たちが口々に言い、赤く染まった頬を涙で濡らす僕をしげしげと見る。でも、おちんちんは勃起したままだから、それに気づいた女性コーラスの人たちは、ハッとして互いに顔を見合わせるのだった。
「女の子みたいな声で泣くってことは、この子はまだ声変わりしてないんだね」
出し抜けにヌケ子さんがY美に話し掛けた。おちんちんに指が絡まる。おちんちんの袋が手で揉まれる。Y美に唆され、男の子が再び扱き始めた。
「よく分かんない」
Y美がそっけなく答えると、
「だってこの子のおちんちん見てよ。毛が生えてないでしょ。ほら、腋の下も見て。生えてないよね。ということはまだ声変わりしてなくてもおかしくないよ」
ヌケ子さんが自信たっぷりな調子で指摘する。Y美は面倒くさそうに「はいはい」と答えて、あずま屋のベンチに並んで腰かけるメライちゃんと鷺丸君へ目を向けた。何か目配せしたようだった。
「んー」メライちゃんの声がする。じんじんと体内をたゆたう甘い電流に切なくなって、射精したくて堪らないのに許してもらえず、両手を吊られた素っ裸の身をくねらせている僕のとろんとした目が見たのは、メライちゃんの唇におのれの唇を押し付ける鷺丸君の姿だった。
朦朧とした意識がたちまちくっきりとして、性的快感を跳ね飛ばす。
すぐにメライちゃんから離れるように強い調子で言い、聞き入れられないので説得を試み、それでも鷺丸君がメライちゃんの唇を吸って吸ってちっとも離れようとしないので、ついには懇願する。僕が涙を流して訴えても、鷺丸君はメライちゃんの唇をむさぼり、服の上から胸やお尻をまさぐり続けた。
次に、Y美に向かって鷺丸君にこんな真似をさせないように訴えた。鷺丸君はY美の指示でいやがるメライちゃんの抵抗を封じながらその唇を吸い、体のあちこちを手荒く揉んでいるのだから、やめてもらうには最初からY美に頼むしかなかったのに、そうしなかったのは、鷺丸君以上にY美の意を翻すのは難しいと思ったからだった。でも、今はどんなにY美が無情で頑固で、下手なことを言うと逆に一層酷い目に遭わされるかもしれないとしても、Y美に頭を下げるしかなかった。と、男の子の柔らかい手が思わぬ動きをした。おちんちんの真ん中あたりを摘まんだ指が激しく左右に揺れた。
喘ぎ声を漏らしてしまう。まずい、このままでは射精してしまう。「いや、やめて」と僕は言い、僕が男の子の手によって性的に反応することを面白がって観察する女の人たちに向かって、なんでもない振りをしようとしたけれど、僕のお尻を撫で回すヌケ子さんに首筋へねっちりと糸を引くような息を吹きかけられた時にも、丁度おちんちんを扱く指の動きとあいまったせいもあって、つい官能に耐え得ず、恥ずかしい声を出してしまった。
「メライが初めて唇を奪われたところを目撃したからって、そんなに興奮するなよ」
Y美が僕の悶える姿を冷たい視線で見つめながら、言った。見物する人たちの間から嘲笑のさざ波が広がる。
お願いだから、と僕は息も絶え絶えになって言った。もうメライちゃんにいやらしいことはしないでください、と声を震わせてお願いする。
「何言ってんの? メライがキスされてんの見て、おちんちん硬くさせてるくせに」
ふん、と鼻で笑ってY美が言った。
「メライの裸は見せてもらえなかったけど、キスしてるとこは見られて良かったじゃん。しっかり目に焼き付けなよ」
そう言ってY美が僕の後ろ髪を引っ張って顔を上げさせた。たちまち、見たくないものが目に入る。ベンチに並んで腰かけたまま、メライちゃんと鷺丸君が激しく唇をくっ付け合っているのだった。鷺丸君が横向きになってメライちゃんをぐっと引き寄せ、両手でメライちゃんの顔を自分の方に向かせ、その唇を自分の唇で塞ぐ。
「すぐにやめさせて」僕が喘ぐように言っても、Y美は薄ら笑いを浮かべて、鷺丸君に細かな指示を与えるばかりだった。と、男の子が緩めていた手の動きをまた速くした。おちんちんの袋をもう片方の手で撫で回している。ぬるぬるになったおちんちんの先を男の子が手で拭い、僕の脇腹に塗り、乳首に向けて広げる。
完全に口を塞がれたメライちゃんが苦し紛れに顔を上げると、鷺丸君が覆い被さるように更に強く唇を押し付けてくる。青大将の口からチョロチョロと出ていた舌におちんちんを舐められ、不覚にも射精寸前まで追い込まれた僕は、鷺丸君の口から舌が出たのを認め、それがメライちゃんの口の中へ、奥深くへ侵入するのをメライちゃんの固まった体から感じ取り、一糸まとわぬ僕の体が瞬時にしてカッと熱くなるのを感じた。
「おちんちんすごいよ。ぬるぬるだよ。メライが口の中に舌を押し込まれてるのを見て、興奮してんのかよ。お前の裸も汗と精液でぬらぬら光ってるし」
Y美がおちんちんを指で突いて言い、おちんちん扱きに専念する男の子の肩を軽くぽんぽんと叩いた。
上から唇で押しかかられ、メライちゃんの背中が反る。顔を上げたまま、手がベンチの端を掴み、細い腕がやや反り気味になって体を支える。あまりのことにメライちゃんは呻き声すら出せないようだった。メライちゃんが抵抗しないのを良いことに、鷺丸君の舌は、胃カメラのようにどこまでも伸びているような気がする。
「ふん。メライも満更でもないようだよ。舌入れられて、よがってるよね。お前が目隠しされてる間に随分開発されたからね」
Y美の声がするすると細長い生き物になって僕の体内に入ってくる。嘘、そんなの嘘、と僕は懸命に否定するのだけれど、メライちゃんの体が一度ピクッと痙攣した後、急に力が抜けて、鷺丸君に背中を支えられるようになるのを見ると、僕は、絶え間のない性的刺激によって生じた薄い靄の向こうに、受け入れ難い現実が厳然と姿を現わすのを認めた。自由の利かない素っ裸の身をくねらせて、首を左右に振る。
潤んだ、うっとりとした目でメライちゃんが僕を見た。素っ裸のまま、男の子におちんちんを扱かれ、もう我慢の限界に達して身悶えする僕の情けない姿を、メライちゃんが口に舌を入れられた状態でじっと見つめる。興奮したようにメライちゃんの目が大きくなった。思わず僕は、「見ないで、いや」と、激しい快楽に意識が飛びそうになるのを抑えつけるようにして叫んだ。
「そういえばメライちゃんは、男の子が射精するところは見たことがないんだってね。いよいよ射精するから、しっかり見ようね。おちんちんから白いのが出るからね」
お姉さんがおちんちんにじっと視線を当てたまま、メライちゃんに話し掛けた。口を塞がれたメライちゃんからねっとりとした声が漏れた。体の奥が疼くような声。あんなに遠慮勝ちだったのに、性的な苛めを受けて意識が変わったのか、メライちゃんはしっかり見ようという欲求を漲らせて、じっと僕の射精寸前のおちんちんに視線を向けた。
その赤く染まった頬は、もうおちんちんを見せられて恥じらう女の子のものではなかった。傾きかけた西日を受けてということもあるけれど、艶やかに輝いて、官能を知った女の人のような色気をたっぷりと含んでいるように見えた。
「やめて。見ないで、お願い」
僕はもう懇願するしかなく、絶望的な気持ちになって声を震わせる。大好きなメライちゃんが乱暴にキスされ、胸やお尻をまさぐられているところを見ながら射精させられる。吊られた両手を動かしても、黒松の大ぶりな枝はわずかに撓むだけだった。素っ裸の無防備な僕の体をエヌ子さんとS子のお母さん、N川さんのお母さんがいじり回して、射精寸前の状態維持に努めている。
「こいつ、男の子の手でこんなに感じてるんだよ。刺激さえあれば相手なんか誰でもいいんだよ。やだね、この変態は」
Y美が冷やかすと、それに応じるようにメライちゃんがこくりと頷いた。心無しかメライちゃんの頬の筋肉が緩み、かすかな微笑を浮かべたようにも感じられた。でも、僕に傷ついている余裕はなかった。男の子がにやにや笑いながら、おちんちん扱きの速力を少し上げた。
「ねえ、いきそうなの? 喘いでばかりじゃ分かんないよ」
お姉さんが訊ねる。
「いきそうです」かろうじて答えると、
「じゃ、とめようかな」お姉さんが呟いた。すかさず男の子が「そうなんだ。とめていいんだね」と応じて、おちんちんの扱きを緩める。と思ったら、Y美からゴーサインが出て、再び扱き始めた。
「いきたいんでしょ?」Y美が腕を組んで言い、すらりと伸ばした足を組み替えた。
「はい」もう頭が朦朧として、メライちゃんが射精の瞬間を今か今かと見つめていることを知りながら、精液を出したくて堪らない欲望に屈する。
「だったら、ちゃんとお願いしろって。鷺丸君にいやらしいことされてるメライちゃんを見て射精したいんでしょ? 早くお願いしなさいよ」
Y美に唆されて、悶絶しながら声を絞る。メライちゃんが唇を吸われ、体をぴくぴくと震わせている。メライちゃんのそんな姿を見てはいけないと思いつつ、どうしても目をやってしまう。メライちゃんのスカートの襞が生き物のように動いた。
「お願い、お願いですから」僕は恥を忍んで声を上げた。
「なあに?」
「いかせてください」
「私がいいって言うまで我慢しなさい」
Y美はそう言うと、僕のおちんちんをしゃがみ込んで扱く男の子の頭を撫でた。Y美が「いいよ」と言った。涎の垂れた僕の口から喘ぎ声が漏れる。メライちゃんの唇が鷺丸君の口から離れた。メライちゃんが短い悲鳴を上げた。
どくどくと精液がおちんちんを通って外へ飛び出す。溜まりに溜まっていた大量の精液がメライちゃんのポロシャツとスカートに飛び散った。
「すごい。お兄ちゃんのおちんちんから精液がドバッと出た」
「うん。その瞬間もしっかり見たよ。一生忘れないかも」
女子児童たちが興奮さめやらぬ体で語り合っている。我慢に我慢を重ねた挙句の射精だった。まだおちんちんの先からぽたぽたと精液が垂れている。
こんなに勢いよく飛び出すとは、メライちゃんも想像していなかったようだ。お姉さんにもらったティッシュで衣類に飛び散った精液を拭き取るメライちゃんに鷺丸君がいろいろと話し掛けている。マジックの練習をしている時とは別人のような、気遣いに溢れた優しい口振りだった。メライちゃんも鷺丸君にしっかり答えている。
お姉さんが僕の両手を縛るロープをほどいてくれた。松の枝に結わかれたロープを取るお姉さんから「ナオス君も手伝って」と頼まれ、もう片方の枝のロープの固い結び目をほどこうとして背伸びをする。爪先立ちして辛うじて手が結び目に届いた。
結び目の隙間を広げようと、足の指だけで全体重を支え、時にふらつきながら格闘する。池の向こうの雑木林から生温かい風が吹いて来て、剥き出しの肌という肌を撫で、相変わらず自分は一糸まとわぬ素っ裸なのだと意識させられる。西日が眩しく差し込んだ池の水面を眺めていると、女性コーラスの人たちが近づいてきた。
「さっきは面白いもの見せてくれてありがと」
一人がこう言って僕のお尻を撫でると、皆が次々とそれに倣うのだった。二人の女子児童と男の子は池の縁に来て、ひそひそ話し合い、射精したばかりのおちんちんが小さく萎んだのが面白いのか、じろじろ見ながら時々大きな笑い声を上げる。爪先立ちして頭上のロープを解こうとしている僕は、裸を少しでも隠そうとして体をくねらせた。
「何してんのよ。どいて」
なかなかほどけない僕に代わって、お姉さんが背のびもしないで簡単にロープを枝から抜き取った。ピアノ伴奏の人がようやく到着し、女性コーラスの練習が始まったようだった。児童合唱の三人の姿も見えなくなった。防音ガラスを通して聞こえてくるコーラスの歌声に混じって、忍びやかに喋る二人の声が聞こえた。
まさかと思って振り返ると、あずま屋のベンチにメライちゃんと鷺丸君がいて、まるで恋人どうしのように寄り添っているのだった。
あんなにはっきりと僕のことを好きだと言ったメライちゃんが鷺丸君のベンチに置いた手に自分の手を重ね合わせている。あれは嘘だったのだろうか、狭い隠し部屋の中で、スクール水着を取られたメライちゃんが僕の背中に全裸の身を密着させ、好きだと告白してくれた、あの言葉は。あの時の異常な事態をくぐり抜けるための方便に過ぎなかったのだろうか。
「でも鷺丸君さあ」Y美が言った。「ほんとにこんなくそチビ女でいいの? 鷺丸君ならもう少し選べると思うけど」
そっとメライちゃんの肩を引きよせ、ショートカットの髪をやさしく撫でる鷺丸君は、夢の良いところで起こされた人みたいに顔をしかめたけれど、すぐに気を取り直してY美へ首を回すと、
「とんでもない。メライちゃんしか考えられないっす」
と、照れ笑いを浮かべて答えた。
「たっぷり裸を見て、キスして、体をいじってたら、好きになるものかな」
Y美が言い、おちんちんを手で隠す全裸の僕へちらちらと視線を向けた。
「メライも初めてキスした相手が鷺丸君で良かったねえ。舌まで入れられてねえ」
にっこりと微笑んで、Y美がメライちゃんの髪の毛をくしゃくしゃに搔き毟った。困ったような顔をして俯くメライちゃんの表情は、恥ずかしそうにしてはいるものの、どこか明るかった。大きな目には希望が溢れていた。
「メライちゃん、こんな奴だけど、うちの弟をよろしくね」
お姉さんが鷺丸君の頭に手をやって下げさせると同時に、自分もペコリとお辞儀をする。メライちゃんもそれに応じて背筋を伸ばし、深々と一礼する。
「それからついでに、裸になるモデルの役もお願いね」
「はい」
顔を寄せてきたお姉さんから一歩退いてメライちゃんが返事をし、存外に元気な声を出してしまったことを照れるように顔を俯けた。
「そうそう、裸と言えば」鷺丸君が初めて気づいたかのように、松の木の後ろに隠れている素っ裸の僕を指して、言った。「こいつはどうするの。ずっと丸裸のままじゃん。そろそろ服を着せてやったら」
門扉の軋む音がして、鷺丸君の言葉が途切れた。いきなり入ってきた人影を見て、驚きのあまり、話し続けることができなくなったようだった。S子、ルコ、ミュー、風紀委員、N川さん、エンコが石畳を通って庭に回ってきた。
「遅いよ、あんたたち」
Y美が立ち上がって手招きをする。それから鷺丸君の方に向き直って、
「この子の服とか靴は、私が預かる。チャコは真っ裸のまま帰らせるつもり。そのためにあの子たちを呼んだんだから」
と言い、僕を呼び寄せると、ベンチに座るメライちゃんと鷺丸君の前で四つん這いになるよう命じた。メライちゃんが鷺丸君の腕にしがみついて、二人の足元で四つん這いになる僕を恐る恐る見下ろす。
傍観者独特の冷たい視線を背中に受けながら思い出すのは、メライちゃんが僕を好きだと言ったこと、僕もまたメライちゃんを好きだと告げたこと、あの狭い隠し部屋の中で互い素っ裸のまま、告白したことだった。不意に涙が止まらなくなる。
「なんで泣いてんの? 愛しいメライと付き合えなくて悔しいの? メライに射精の瞬間を見られて悲しいの? それより私たち女子に土下座してお願いしなよ。服を着させてもらえない僕は家まで裸で帰ります、どうか僕をガードしてくださいってね」
「いやです。許してください」
「駄目、許さない。お前は素っ裸のまま歩いて帰るんだよ」
Y美はこう言うと、屈託のない笑い声を上げて、僕のお尻に手を掛け、ぐっと広げた。露わになったお尻の穴をS子たちが順番に覗き込み、「また拡張したくなるね、この穴」などと口さがなく冷やかすのだった。
「残念でした。メライの裸、見そびれたね」
Y美が不敵な笑みを浮かべて言い、相変わらず生まれたままの格好を強いられている僕の両手を取って、引っ張り上げた。おちんちんが丸出しになる。
「よっぽど興奮したんだね。声だけだったのに」
お姉さんが万歳させられた僕の前にしゃがみ、勃起したおちんちんの裏筋を人差し指でさっと引いた。
両手を後ろで縛られ、ずっと立たされていた間、どんなことが行なわれたのか、目隠しをされていたにもかかわらず、映像のようなものが僕の頭の中に残っている。それは生々しい声の渦から生まれた、頭の中で作り上げられた映像だった。
裸にされたメライちゃんが鷺丸君に胸を揉まれたり、お尻を撫で回されたり、股を開かされたりした。全てはY美の指示だった。鷺丸君は従順にY美の言いつけを守り、メライちゃんの体をいじくり回した。
激しい息使いとともに、メライちゃんのすすり泣きや許しを乞う声が絶えず僕の耳に入ってきた。僕は最初のうちはやめるように、メライちゃんをこれ以上傷つけないように、Y美に対して今までにはないような強い、かなり強い調子で抗議をした。頬に何度も平手打ちをされ、ぶたれたり蹴られたりしても、僕は抗議をやめなかった。鳩尾にパンチを受けて、呼吸できない苦しみにのたうち回った。
目隠しされた暗闇の中で受ける暴力は凄絶だった。恐怖と痛みに震えながらも、メライちゃんの痛々しい姿が鮮明に浮かんで、僕はY美にこれ以上メライちゃんを苛めないように懇願し続けた。
おちんちんの袋にY美の蹴りが入って、悲鳴を上げてフローリングの床に倒れる。見かねたお姉さんが僕を抱きかかえた。
「大人しくしていようね、もうすぐ終わるから」
僕の頭を撫でながら、お姉さんがなだめた。冷たい手でおちんちんがいじられる。
「すっかり怯えてるのね。メライちゃんは、案外気持ち良さそうなのよ。声がするでしょ。よく聞いてみて」
お姉さんにおちんちんを扱かれ、頭の中が朦朧としてくる。後ろに回されて縛られた手は、どんなにもがいても自由にならなかった。僕はお姉さんに付き添われながら立たされ、今ここで繰り広げられていることを想像するように言われた。甘く、熱のこもった声が聞こえる筈だと言う。
メライちゃんは今素っ裸で全身にサラダ油を塗られ、四つん這いにさせられ、お尻を高く上げさせられ、お尻を左右に振りながら、鷺丸君の指戯に耐えている。白くて滑々した肌を唇が吸着する。ツンと上を向いた乳首が指の腹で撫でられ、押し潰される。
啜り泣きながら、Y美の指示する通り仰向けに寝たメライちゃんが「もう絶対に逆らえない」と観念して、ぶるぶる震えながら足を開く。鷺丸君が股の間に入って正座し、頭をぐっと下げてメライちゃんの股間へ首を伸ばす。ぴくりと体が反応し、体が弓なりに反って、お臍が高い天井の梁に近づく。
うつ伏せになる。真っ裸のメライちゃんの白い背中、お尻へ皆が視線を注ぐ。鷺丸君がメライちゃんの足首を持って引き摺る。艶々したフローリングに小ぶりの乳房が痛々しく変形する。こりっとした乳首がフローリングと摩擦してぶるぶると震え、メライちゃんが言葉にならない声を上げる。
膝立ちさせられたメライちゃんが両手を頭の後ろで組み、サラダ油にまみれた上半身を湾曲させる。正面から鷺丸君が迫ると両手をメライちゃんの背中に回し、太腿の内側をメライちゃんの脇腹に密着させ、首から胸にかけて舌を這わせる。メライちゃんから押し殺した声が漏れる。
お姉さんが言った。直ちには受け入れることのできない現実があるでしょうけれど、いずれは受け入れなくちゃいけないのよ、と。受け入れるにはもう少し時間を要するかもしれない、それでも受け入れるのよ。お姉さんが優しい声で僕を慰める。
この無残な現実を飲み込むためのオブラートがあるらしい。それが性的な官能だと言う。なんとなく夢幻的な、官能的な感触がしたら、それに身を任せるしかないじゃないの、と忠告する。どんな宗教よりも確実に現実を受け入れることができるようになる、それが性的な官能なんだよ、とお姉さんが請け負う。
おちんちんからお姉さんの手が離れても、しばらく硬い状態が続いた。扱きによる刺激とは別に、耳から入ってくる新たな刺激に反応したようだった。Y美の容赦ない命令とそれに抗いながらも従わされるメライちゃん、黙々と指示通りに動く鷺丸君の三人の様子を生々しく伝える音は、映像、それも決して見たくない映像として、暴力的に僕の頭の中で何度もフラッシュし、実際に目で見るよりも刺激的だったかもしれない。
目隠しを外された今、射精寸前のおちんちんがむなしく屹立するのを見て、堪らなく恥ずかしくなった。このアトリエにいる全員に、Y美、お姉さん、鷺丸君、そしてメライちゃんにまで、目隠しされながらも音だけに反応しておちんちんを硬くさせているところをしっかり見られてしまった。
Y美に手を引っ張り上げられて恥ずかしいおちんちんを隠すことができない僕は、火照った顔を俯けて、首を横に振りながら、「見ないで」と懇願した。
「ね、分かったでしょ。こいつはどうしょうもない変態で、音だけ聞いて勝手に妄想を膨らませて興奮するんだよ」
Y美が勝ち誇ったような調子でメライちゃんに言い、僕の万歳させている手を放した。急いでおちんちんを手で隠し、アトリエから出ていこうとするものの、たちまちにお姉さんと鷺丸に捕まって、その場に立たされた。もう練習が終わったのであれば、メライちゃんがスクール水着から服に着替えたように、僕も服を着たい。そう訴えたところ、お姉さんに「その必要はないから」と止められてしまった。
「でも、メライもこんないやらしい男の子だけには裸を見られなくて済んだんだから、良かったねえ。感謝しなさいよ。私に感謝するの。分かった?」
恩着せがましくY美が釘を刺すと、メライちゃんはずっと物置に仕舞い込まれていた古い人形のように、こくりと頷いた。その無表情は、鷺丸君が僕の後ろの床を這っていた青大将を見つけ、ダッシュして捕まえた時も変わらなかった。鷺丸君の腕に絡み付いた青大将を間近で見ても、メライちゃんは死んだような目で見ただけで、眉ひとつ動かさなかった。メライちゃんだけでなかった。Y美もまた一瞬ぎょっとしたように目が大きくしただけで、平然と青大将を無視した。
この青大将も不運だった。池の縁を固める石と石の狭間で涼んでいたところを鷺丸君に見つかってしまい、メライちゃんと僕への苛めに使われてしまった。「もういいよ。逃がしてあげなよ」とお姉さんが言い、鷺丸君は庭へ青大将を放しに行った。
入り代わりに鷺丸君のお母さんがアトリエに入って来て、そろそろ女性コーラスの人たちが集まる時間だから練習を引き上げるように言う。鷺丸君のお母さんは僕がパンツすらも脱がされた一糸まとわぬ格好でいるのを見て、さすがに目を丸くした。お姉さんから事情を聞いても、「まあ可哀想に」と上の空で呟きながら、少し顔を赤く染めて、じろじろと僕を見回している。おちんちんに手を当てて隠している僕はY美に背中を押され、とうとう丸裸のまま庭に出された。
母屋から荷物を取ってきたメライちゃんが帰ろうとしてY美に引き留められた。妹たち弟たちの世話をしなくてはならないとメライちゃんが言ってもY美はその腕を離さず、「ふうん、大変だね、きょうだいがいっぱいいる家って」と、冷やかに応じる。僕は池の縁に池を背にして立たされ、気をつけを命じられた。
「準備体操を始めなよ、プールに入る前みたいに」
あずま屋のベンチに腰を下ろし、Y美が足を組む。その横にはメライちゃんを座らせ、顎の下に手を入れて、俯くメライちゃんの顔を上げさせた。お姉さんと鷺丸君がいないのは良かったけれど、それでもやはりメライちゃんに昼間の明るい日差しのもと、真っ裸の姿を見られるのは辛かった。この格好のまま準備体操をさせられる。命令に従わないとどんなに酷い目に遭わされるか分からない。僕は泣きたくなるのを堪えて、体操を始めた。学校でプールに入る前にする一連の体操だった。
体操中、Y美がおちんちんに手を伸ばしても動きを中断することは許されなかった。おちんちんの皮を伸ばされたり剥かれたりする。扱かれて少し硬くなりかけたおちんちんが左右の内腿に音を立ててぶつかる。軽く跳躍しながら体を回転させる。Y美は、メライちゃんを抱き寄せるようにして顔を固定させ、裸の僕から目を離させなかった。
学校でするよりも念入りに長く体操をさせられた僕は、次に池に入るように命じられた。強い夏の日光で温められたぬるま湯のような水がねっとりと足に絡む。Y美の指令は、平泳ぎで池の向こう側まで行き、池から少し離れたところにある松の木にタッチしてから戻ってくることだった。池は片道だけで三十メートル近い距離があった。
それが終わると、すぐに次の指令が出る。クロールで同じコースの往復だった。指令は矢継ぎ早に出て、クロールの次はまた平泳ぎだった。
意図のよく分からないY美の命令をこなして、池の中で息をぜいぜいさせていると、あずま屋のベンチの周りには、ちょっと近くのスーパーまで買い物へ出掛けるような服装をした女の人たちが五人ほどいて、Y美と話をしていた。女性コーラスの人たちだった。その中には、N川さんのお母さんの顔もあった。首から先だけを水面から出している僕を見つけて、笑顔で会釈する。ここから岸までは極端に浅くなるので、僕はあえて深いところに留まって一礼する。
「この子、あんまり暑い暑いって言うから泳がせてやったの」
Y美が言うと、
「まあいいわね。男の子は元気があって。水着も用意してたのね」
N川さんのお母さんが日光に目を細めながら、池の中の僕に目をやる。淀んだ池の水が僕のおちんちんを隠してくれているようだった。
「この子、丸裸よ。さっき向こう岸を上がったところを見なかったの?」
突然男のような低い声がした。一際背の高い、丸太のように太い腕をした女の人が濃い眉毛の下の細い目を吊り上げて、こちらを見つめている。Y美とのやり取りから、その女の人がS子の母親であることを知った僕は、娘にそっくりな大柄な体格、威圧的な雰囲気に怖じ気づいてしまった。
Y美が僕にもう一度クロールで往復してから上がるように命じた。
「まあやだ。Y美ちゃん、この子を裸にして泳がせたんでしょ」
「だってこの子、女子に悪さするから」
一斉に華やかな笑い声が起こる中、僕は池の深いところから浅いところに移り、おちんちんを手で隠しながら、ゆっくりと岸に近づいた。ぬるぬるした石に何度か足が滑って転びそうになりながらも、おちんちんから手を離すことなく、岸辺の石畳に裸足を乗せる。足の裏が熱かった。
「いやだねえ、ほんとに丸裸じゃないの」
N川さんのお母さんが言い、水滴をぽたぽた落としながら立つ僕のお尻に付着した藻のようなものを取り除いた。
「娘から聞いてるよ。女の子にいやらしい真似、いっぱいするんだって?」
S子のお母さんは、何か事実と異なることをS子から吹き込まれているようだった。憎々しげな目で僕を睨み付ける。Y美の横で怯えるように身を小さくするメライちゃんを顎でしゃくり、「この子の裸に触ったんだって?」と詰る。隠し部屋に閉じ込められた時のことをY美が面白おかしく話したのだろう。
「娘にも変なところを見せたって言うじゃないの。どんなことをしたのか、私の前でもやってもらおうかね」
指をポキポキ鳴らしてS子のお母さんがすごんだ。
母屋の方からこちらに向かってお姉さんと鷺丸君が小走りに来て、ピアノ伴奏者の到着が遅れていることを伝えた。N川さんのお母さんは、練習が始まるまでの空き時間ができたことを喜んだ。S子のお母さんも同意して、「たっぷり時間ができたみたい」と言って笑った。二人とも女性コーラスに付き合いの関係で仕方なく参加しているようだった。それに対して他の三人は、時間にルーズなピアノ伴奏者を口汚く罵った。この三人の中にフレームが茶色の眼鏡をした女の人がいて、その顔に見覚えがあった。
「ピアノ伴奏、罰が必要。遅刻したから土下座ね」
ぽかんとして、思ったことをそのまま口に出したように言う。ヌケ子さんだった。僕がおば様に言いつけられて公民館で整体のモデルをさせられた時、パンツ一枚の裸にさせられ、午後からはそのパンツすらも脱がされてしまったのは、全てモデル用の服が用意できなかったヌケ子さんの手違いが原因だった。
ミスが多く、重要な仕事は任せてもらえないこの人は、上司であるおば様から「ヌケ子さん」と呼ばれ、みんなの前で叱られたり、笑われたりすることが多々あるのだけれど、本人はいたって吞気な性格で、普通の人がプライドを傷つけられて落ち込むような場面でも、へらへらしているか、ぽかんとしているかのどちらかだった。
自分の存在を否定されるようなことをみんなの前で言われて、ヌケ子さんが精神的にショックを覚えているのかは分からない。そのような心配はないとおば様がある時、電話で誰かに断言しているのを聞いたことがある。でも、僕にとってはヌケ子さんは油断のならない存在だった。僕はこの人の前で素っ裸を見られたばかりか、お尻を叩かれたり、射精させられたところまでもまじまじと観察された。
「私、眼鏡掛けたから、ナオス君、なかなか気付かなかったね。私、もっとあなたのおちんちんがよく見えるように眼鏡掛けたよ。似合うでしょ?」
眼鏡のフレームに手を掛けながら、ヌケ子さんが話し掛けてくる。ヌケ子さんは、夏祭りで披露する女性コーラスにおば様の命令で参加することになったけれど、始めると俄然面白くなって、週に二度の練習が楽しみで仕方がないと言う。
「ナオス君も夏祭りに出るんでしょ。マジックショー。でも、なんで裸なの?」
この問いには僕の代りにY美が答えた。
「池で泳ぐために裸になったんだよ。びしょ濡れの体を見れば、それくらい分かるでしょ。相変わらず馬鹿って言われてない? このヌケヌケ、ヌケ子」
「やだ、Y美さんも口が悪いよ。お母さんにそっくりだよ。こんな虫の死骸がいっぱい浮いてる池で普通は泳がないよ。Y美さん、無理にナオス君を裸にして泳がせた? ナオス君、一人だけ丸裸で泳がされて悔しいね。苛めないでくださいって、もっと真剣にお願いしたら、Y美さんはきっともう苛めないよね。そうでしょ?」
眼鏡をして少し賢そうに見えても、口数が減らないのですぐにメッキが剝がれる。ヌケ子さんの問い掛けにY美は答えず、S子のお母さんへ顔を向けた。
「こいつ、やっちゃいますか?」
S子のお母さんが憎悪の籠もった目つきで僕を睨んで、頷いた。なぜこんなに恨まれているのか、よく分からなかった。S子が毎日のように帰宅が遅いのは、一重に僕のせいだと考えているのかもしれなかった。
鷺丸君が僕の肩に手を置き、羞恥に耐えながらおちんちんに手を当てて隠している僕を励ました。髪の毛から水滴をぽたぽた落として素っ裸のまま立っている僕の腕をお姉さんが取り、「頑張ってね」と耳元で囁く。
マジックの練習を見学した児童合唱の学童たちがメライちゃんを取り囲んでいた。ペレー帽の女子学童は首元にフリルの付いたキャミソールに着替えていた。青いカチューシャの女子学童と美声のボーイソプラノという眼鏡の男の子は、午前中と同じ格好だった。お母さんたちの合唱練習に付き合って、わざわざ来たと言う。
「お兄ちゃん、まだ裸んぼのままなんだね。今度はもっといろいろ見せてくれるってY美さんが約束してくれたんだけど」
女子児童たちが後ろからメライちゃんのポロシャツの襟を引っ張って、
「ねえねえ、何を見せてくれるのかな」と、意地悪く質問する。
メライちゃんが口ごもると、更に勢いづいて、
「ところでメライはなんで服着てんの? さっきみたいなピチピチの水着に着替えなよ。すごく似合ってたのに」
などと冷やかす。年下のくせにメライちゃんを呼び捨てにする、この生意気な女子児童たちを憎く思って、なんとかたしなめてやりたいと思ったけれど、僕のこの情けない今の格好のままでは何を言っても無駄に終わる。悔しい思いを噛みしめて黙っていると、鷺丸君が僕に手首にロープを巻き付けた。
「やめて。何するの」
「うるさい。Y美さんの望んでることなんだから大人しくしてろ」
いきなり怒鳴りつけられる。鷺丸君は、Y美の手下のようになって動く自分に対する嫌悪感をいっぱいに感じているようだった。テレビ関係者やその方面の有力者が審査員に加わる夏祭りに出演できるのは、Y美の母親であるおば様の口添えがあるからこそだった。裸にされた僕を苛めることなどは、到底マジシャンとしての誇りが許すところではないだろう。Y美に逆らえないストレスは相当なものと思われる。その苛々がまた裸の僕に向けられてしまう。
手早く僕の両方の手にロープを巻き付けた鷺丸君がY美の指示する通り、大きな黒松の太い枝にロープを結び付ける。平らでほとんど凹凸の感じられない敷石に裸足を乗せ、両手を万歳させられた格好で拘束される。お姉さんが僕の露わになった腋の下に顔を近づけ、
「青白くて神秘的な感じがする。無毛って、手入れしなくてもいいから楽ね」
と言って、乳首を指で撫でた。
いつのまにか女の人たちが増えていた。ピアノ伴奏者はまだ到着していないらしい。暇を持て余した女の人たちが皆の集まる方へぞろぞろと吸い寄せられた感じだった。Y美にがっしりと体を押さえられ、メライちゃんが最前列に腰を下ろした。メライちゃんのすぐ目の前におちんちんが晒されている。メライちゃんはもうおちんちんに慣れたのか、それ程動揺はしなかったけれども、顔を少し赤く染めて、俯きがちだった。Y美はメライちゃんの視線にもチェックを怠らず、あまり目を反らす時間が長いと顎を掴んで引き戻した。それが頻繁だと、メライちゃんの口を開けさせ、人差し指でメライちゃんの前歯をコツコツ叩くのだった。
後から来た女性コーラスのメンバーたちは、素っ裸の僕が縛られ、何もかも丸出しの状態で女の人たちに囲まれているのを見て、何事かと憤慨し、義侠心に駆られた。ヌケ子さんが「悪いのはこの男の子。こんな目に遭うのも仕方がないのよ」と言ったけれど、納得できないようで、「やめなよ。もう許してあげなよ」と、異様な雰囲気にたじろぎながらも、集団で一人の男の子を苛めることがどれだけおかしな、普通の社会生活ではあり得ないことであるかを分からせようと努めた。
「誤解しないで。これは教育なんだから」
お説教はたくさんとばかり、S子のお母さんが途中で遮った。
「この子はうちの娘の前で性器を露出するなど、変態な行為を重ねたのよ。おかげで娘はすっかり男性不信。父親とも口を利かなくなったのは、この子の変態のせいよ」
違う、それは全然違う。S子はY美と一緒になっていやがる僕のおちんちんを弄び、興味本位で何度も射精させたのみならず、素っ裸の僕に散々恥ずかしい苛めをした。浣腸させられ、皆の前でうんちをしてしまったことも一度や二度の話ではない。それなのに、この母親は娘の言うことを鵜呑みにして、事実とはまるで異なることをまくし立てる。
「酷い。それは嘘です」
思わず抗議した僕は、Y美に「お前は黙ってろ」と言われ、お尻を抓られた。
「へえ、そうなんだ。それは酷いですね」
ヌケ子さんが感心する。僕がY美やS子に普段から苛められているのを知っているくせに、家ではパンツ一枚しか着用させてもらえないことも承知しているくせに、なぜこうもあっさりとS子のお母さんの弁を信じることができるのか、世界七不思議の一つに数えたいくらいだった。
N川さんのお母さんが話を継いだ。
「それに私たち女性の立場から、男の子が物理的な刺激によって性的に興奮し、精液を出すに到る過程をしっかり見ておくことも、今後、異性に対する女子の教育を考える上で大切なことだと思います」
僕を即座に解放するように言ったコーラスメンバーたちも、話が女子の教育に及ぶと、尖った肩がへこみ、物腰が柔らかになったように感じられた。
「いえ、何も私たちはこの男の子を観察することに反対してるんじゃなくて、この子の同意の上でやってるのかなっていう、ただそのことが気になっただけで」
「それはもちろん同意してないでしょう。確かにこの子はいやがってますね。このように真っ裸のまま手を縛られ、服を着た私たちの前で何もかも丸出しにさせられ、本当にかわいそうですね。でも、仕方ないじゃないですか」
それだけ言うと、N川さんのお母さんは手を口に当てて、上品そうな笑い声を立てた。すると、ヌケ子さんも一緒になって笑い出した。N川さんのお母さんが清音で笑うに対し、ヌケ子さんのそれは濁音で、しかもN川さんのお母さんの笑い声を打ち消すほどに大きな声だった。僕の味方になってくれていた人たちも、この意味不明な笑いに丸めこまれたようで、当然その後に出ると予想される反論が完全に封じ込められてしまった。
コーラスのメンバーにはみなみ川教の信者がいて、「精液はそれを放出する男性の年齢が若ければ若いほどにエネルギーに満ちて世に活力と念願成就の力を与えたもう」という教団の教えを披露すると、信者ではない人たちまでもがふんふんと頷いた。
「気持ち良くなるんだから、そんなに怖がらなくていいよ」
お姉さんが言い、おちんちんの根元を指でつまみ、ぶらんぶらんと左右上下に振る。長いざらざらした舌が僕のお臍の下をぺろりと舐めた。小さく喘いだ僕の顔を下から除き見てにっこり笑うと、お姉さんはすぐに向き直っておちんちんを横から見つめ、きれいに折り曲げた膝の上に片手を置き、もう片方の手でおちんちんを扱き始めた。指と指の間におちんちんを挟み、ゆっくりと動かす。小指の先、親指がおちんちんの袋に触れた。
「悶えてる悶えてる。だんだん硬くなってきた」
Y美がメライちゃんに話し掛ける。メライちゃんの隣に腰掛けて、しっかり僕の恥ずかしい姿を見ているか、チェックしているようだった。
二日間精液を出していない僕の一糸まとわぬ肉体は、すぐに官能の火でじりじりと炙られた。肘を軽く曲げた状態で両手を吊るされた不自由な体をくねくねと、まるでそうすれば淫靡な扱きから逃れ得るかのように、くねらせる。
じんじんと心地よい刺激が体じゅうに広がり、頭がぼんやりして働かない。ヌケ子さんが僕の後ろに立って、首筋や胸に細い指先を這わせた。
「気持ちいいでしょ。おちんちんがびんびんだよ」
ヌケ子さんが囁き、耳たぶを軽く噛む。どんなに押し殺しても喘いでしまう。見学する人たちにもそれがしっかり聞こえ、失笑が起こる。児童合唱の二人の女子児童と眼鏡の男の子が険しい顔つきをして僕を睨んでいる。お姉さんのおちんちんを扱く速度は非常に緩慢になり、ほとんど手を添えるだけだった。射精直前の、大きく膨らんだおちんちんをじっと見守る。ヌケ子さんの眼鏡のフレームが肩に当たった。
気づくと僕の体を愛撫する手が四本もあった。S子のお母さんも加わり、S子のようにいささか乱暴に僕のお尻や腰、太腿を揉みしだく。首から背中にかけてねっちりと複数の指が触れる。唇が僕の裸の背中や肩を吸う。おちんちんの袋がお姉さんの手のひらに乗せられ、中の睾丸を指でつまもうとする。もう一方の手はおちんちんを指に挟んで、ねちねちと動く。僕の頬に甘い息が吹きかけられる。ヌケ子さんだった。
「耐えてるの? それとも感じてるの? うっとりしてるように見えるし、苦しそうにも見える。苦しいのが気持ちいいの?」
ずり落ちた眼鏡を人差し指で戻し、ヌケ子さんが問う。
両手を吊られた僕は、素っ裸の体に否応なく触れてくる手や唇に悶え、執拗なおちんちんの扱きに耐え、いつ終わるとも知れない責めに嘆息した。後ろの雑木林の方からやや強い風が吹いて腋の下を撫でた。ずっと慰みに扱かれてきたおちんちんの袋がきゅっと締まり、そこから快楽の電流がじわじわと体に広がり、波のようになってたぷたぷと体の内側を水位がせり上がってくる。
おちんちんの先が濡れる。お姉さんとY美がそれを指で広げ、おちんちん全体に塗る。おちんちんの袋にも塗る。粘着性のある糸のようなそれがお臍の下に付けられると、S子のお母さんが黙ってそれを下腹部から鳩尾にかけて広げる。おちんちんの先のぬるぬるにY美がまた指先を当て、お尻や首などに塗りたくるようにヌケ子さんに伝える。亀頭の敏感な部分をY美がぺたぺた触り、体がぴくりと反応してしまう。暴力的に押し寄せる快感に打ちひしがれるのとは別種の反応を示した体の動きは、Y美のみならず、至近距離で観察する二人の女子児童と眼鏡の男の子を面白がらせた。
射精寸前の状態を長引かせて、いつまで僕を悶えさせるつもりなのだろうか。甘いじんじんと痺れるような刺激にずっと責められ、羞恥の感覚が薄れ、ひたすら射精の欲望だけを募らせる。松の枝に両手を吊られた今の状態では射精したくとも自分の意志ではできず、僕を性的に嬲る人たちに生殺与奪の権がある。
物理的におちんちんを扱かれ、精液を出したいという生理的欲求ばかりがいたずらに高められる。しかしそれだけで、これを満たすことは断じて許されない。このような際限のない苦しみに喘ぐ僕の惨めな姿をヌケ子さんは流し目に見て、乳首に唇を付け、自分の唾液に濡れたそれを指で撫でるのだった。
いやだ、もう許して、と僕はさっきからずっと、口を開けば哀願していた。その息も絶え絶えの訴えはしかし、僕を責め続ける人たち、観察する人たちを単純に喜ばせるだけの効果しかなかったようで、Y美は僕の切なく訴える声に聞き惚れるように切れ長の目を細めるのだった。僕の側に立って解放を呼び掛けてくれた女の人たちも、S子のお母さんの荒々しい愛撫責めとそれに反応して悶える僕の裸をつぶさに見て、満更僕が嫌がっている訳ではないと判断したようで、今では逆にS子のお母さんやN川さんのお母さんのねちねち責めに感心するのだった。
「知らなかったわ。男の子ってこういうのを喜ぶのね」
喜んでなんかいない、と訴えようとした刹那、お尻を手で開かれ、お尻の穴にぬるっとしたものが挿し込まれ、淫らな声を上げてしまった。
「お兄ちゃん、切なげに体をくねらせて、口から涎垂らしてるし」
「おちんちんびんびん。今にも爆発しそうだね」
「ねえ、女の人みたいな声を出して悶えてる。面白いね」
児童合唱の三人が好き勝手なことを言って、くすくす笑う。
お尻の穴から柔らかい、ぬるりとした物が何度か出し入れされ、引き抜かれたけれど、まだ余韻があって、肌がぬめぬめと切なく波打っている。ヌケ子さん、N川さんのお母さん、S子のお母さんたちのまさぐりは執拗だった。淫欲を丸出しにして悶える姿を多くの人に観察されているという羞恥の苦しみもあるにはあったけれど、そのことすら意識から消し飛ぶ程の性的刺激が両手を吊るされた素っ裸の身に襲いかかる。
おちんちんを扱かれているだけでなく、体じゅうを撫でられ、揉まれ、首筋をヌケ子さんのざらついた舌で舐められている僕は、頭が朦朧として、いつのまにか、「お願いだから」と訴えていた。「お願いだから早く、早くいかせて。いかせてください」と。そう気付いた時、強烈な性的快感に責め苛まれているさ中にかかわらず、ずしりと重い砂のような悲しみの感情が一瞬、胸を過ぎるのを感じた。
服を取られ、素っ裸でいるほかない僕を格好の慰み者とし、こんな風に女の人たちに寄ってたかって興味本位で弄ばれている。
性的な快感は、もちろん僕だって嫌いではない。でも、これは僕自身の欲求があってこそだ。僕が主人で性的な快感は従者。これが逆転するのは僕の考える倫理から外れることだった。それに性的な快感は、できれば好きな人と、例えばメライちゃんのような人と同意の上で、感じて、味わいたい。二人で共有したい。
残念なことに、僕はまだこういう形で性的な快感を享受したことがない。いつも無理矢理、僕の意思とは関係なく、性的な快感に晒されてきた。こんなのは、本当に嫌だと思う。何も羞恥心だけで嫌がっているのではない。
女の人たちは、僕に性的な刺激を一方的に与え、僕の体が反応するのを見て、喜ぶ。つまり、恋愛感情やその人と一緒になりたいという気持ちがなんら伴っていないのに、ただ外部からの刺激を受けるだけでこうもたやすく肉体が変化するということを目の当たりに見て、これを男性の動物的な特徴と捉え、勃起するおちんちんという、ストレートで分かりやすい肉体の現象を楽しむ。
男なんて、なんだかんだ偉そうなことを言っても、理知的に自分を統御しているつもりになっていても、到底そんな高邁なセルフイメージとは似ても似つかぬ弱い弱い存在、ざまを見ろとばかり嘲笑するのだった。僕は女の人のことはよく分からない。女の人だってその人と一緒にいたいという気持ちが欠けていても、性的な刺激を与え続けられると、ほどなく快感に酔わされると思うのだけれど、そしてそれは、おば様が僕に性的な奉仕をさせることからもはっきりそうと確信できるのだけれど、本当は女の人は、自分自身の中にそういう性質があるということを認めたくないのかもしれない。自分のそういう動物的な部分は見たくないのかもしれない。
このような心理的な背景があるからこそ、女の人は、男が性的な刺激に対して心とか気持ちとかとは全然関係なく反応して、おちんちんを硬く大きくさせることを殊更にあげつらい、苛めて、自分たちの内心の怯えを解消しているのかもしれない。
理不尽極まる性的な苛め、一方的に暴力的に襲いかかってくる性的な快感を自分なりに受け入れ、一つの経験として地均しをし、僕自身がこれまで経験してきたことに接続させるには、このように考えるしかなかった。でも、それでも、やっぱり悲しみの感情は拭い切れない。どう考えたって、今の僕には慰めがない。この性的な快感が唯一の慰めかもしれない。つまり、性的な快感が主人で僕が従者だ。また悲しみが胸を掠めて、なんともやり過ごし難い。
「なんか手が疲れてきちゃった。ねえ君、代わってくれない?」
突然お姉さんが眼鏡の男の子にこう話し掛けた。ペレー帽を被っていたキャミソール姿の女子児童に後押しされ、男の子はあっさりとお姉さんのそばに来た。男の子が僕の射精寸前のおちんちんに手を伸ばし、お姉さんに教わる。
「ゆっくりゆっくりやってね」
「こんな感じ?」
「そうそう、上手」
思わず腰をくねらせ、かろうじて自由に動く足を使っておちんちんを股間に挟んで隠そうと試みる。男の子がびっくりしたように顔を上げた。
「いや、やめて。男の子の手じゃいやだ。お姉さんがやってください」
この僕の哀訴は、女の人たちを驚かせたようだった。一瞬の間を置いて、どっと笑いが起こった。僕の味方をしてくれていた女性コーラスの人たちも呆れたような顔して僕を見ている。
「お前に選ぶ権利なんかないんだよ」
一番早く真顔に戻ったY美が僕の髪の毛を掴んで、怖い顔をして睨み付ける。それでも僕は怯まない。
「お願いです。もうおちんちんを扱かれても何も言いませんから、せめて女の人に」
ここまで言いかけた時、Y美の平手が僕の頬を打った。二発、三発と往復で休むことなく、交互に頬を張られる。
「うるせえんだよ。お前は黙って足を開いてろ」
逃れようのない暴力に晒され、悲鳴を上げる。見かねたお姉さんが、「女の子みたいに泣いてるじゃない。もう十分だよ」と止めに入ってくれた。
「かわいそう」
女性コーラスの人たちが口々に言い、赤く染まった頬を涙で濡らす僕をしげしげと見る。でも、おちんちんは勃起したままだから、それに気づいた女性コーラスの人たちは、ハッとして互いに顔を見合わせるのだった。
「女の子みたいな声で泣くってことは、この子はまだ声変わりしてないんだね」
出し抜けにヌケ子さんがY美に話し掛けた。おちんちんに指が絡まる。おちんちんの袋が手で揉まれる。Y美に唆され、男の子が再び扱き始めた。
「よく分かんない」
Y美がそっけなく答えると、
「だってこの子のおちんちん見てよ。毛が生えてないでしょ。ほら、腋の下も見て。生えてないよね。ということはまだ声変わりしてなくてもおかしくないよ」
ヌケ子さんが自信たっぷりな調子で指摘する。Y美は面倒くさそうに「はいはい」と答えて、あずま屋のベンチに並んで腰かけるメライちゃんと鷺丸君へ目を向けた。何か目配せしたようだった。
「んー」メライちゃんの声がする。じんじんと体内をたゆたう甘い電流に切なくなって、射精したくて堪らないのに許してもらえず、両手を吊られた素っ裸の身をくねらせている僕のとろんとした目が見たのは、メライちゃんの唇におのれの唇を押し付ける鷺丸君の姿だった。
朦朧とした意識がたちまちくっきりとして、性的快感を跳ね飛ばす。
すぐにメライちゃんから離れるように強い調子で言い、聞き入れられないので説得を試み、それでも鷺丸君がメライちゃんの唇を吸って吸ってちっとも離れようとしないので、ついには懇願する。僕が涙を流して訴えても、鷺丸君はメライちゃんの唇をむさぼり、服の上から胸やお尻をまさぐり続けた。
次に、Y美に向かって鷺丸君にこんな真似をさせないように訴えた。鷺丸君はY美の指示でいやがるメライちゃんの抵抗を封じながらその唇を吸い、体のあちこちを手荒く揉んでいるのだから、やめてもらうには最初からY美に頼むしかなかったのに、そうしなかったのは、鷺丸君以上にY美の意を翻すのは難しいと思ったからだった。でも、今はどんなにY美が無情で頑固で、下手なことを言うと逆に一層酷い目に遭わされるかもしれないとしても、Y美に頭を下げるしかなかった。と、男の子の柔らかい手が思わぬ動きをした。おちんちんの真ん中あたりを摘まんだ指が激しく左右に揺れた。
喘ぎ声を漏らしてしまう。まずい、このままでは射精してしまう。「いや、やめて」と僕は言い、僕が男の子の手によって性的に反応することを面白がって観察する女の人たちに向かって、なんでもない振りをしようとしたけれど、僕のお尻を撫で回すヌケ子さんに首筋へねっちりと糸を引くような息を吹きかけられた時にも、丁度おちんちんを扱く指の動きとあいまったせいもあって、つい官能に耐え得ず、恥ずかしい声を出してしまった。
「メライが初めて唇を奪われたところを目撃したからって、そんなに興奮するなよ」
Y美が僕の悶える姿を冷たい視線で見つめながら、言った。見物する人たちの間から嘲笑のさざ波が広がる。
お願いだから、と僕は息も絶え絶えになって言った。もうメライちゃんにいやらしいことはしないでください、と声を震わせてお願いする。
「何言ってんの? メライがキスされてんの見て、おちんちん硬くさせてるくせに」
ふん、と鼻で笑ってY美が言った。
「メライの裸は見せてもらえなかったけど、キスしてるとこは見られて良かったじゃん。しっかり目に焼き付けなよ」
そう言ってY美が僕の後ろ髪を引っ張って顔を上げさせた。たちまち、見たくないものが目に入る。ベンチに並んで腰かけたまま、メライちゃんと鷺丸君が激しく唇をくっ付け合っているのだった。鷺丸君が横向きになってメライちゃんをぐっと引き寄せ、両手でメライちゃんの顔を自分の方に向かせ、その唇を自分の唇で塞ぐ。
「すぐにやめさせて」僕が喘ぐように言っても、Y美は薄ら笑いを浮かべて、鷺丸君に細かな指示を与えるばかりだった。と、男の子が緩めていた手の動きをまた速くした。おちんちんの袋をもう片方の手で撫で回している。ぬるぬるになったおちんちんの先を男の子が手で拭い、僕の脇腹に塗り、乳首に向けて広げる。
完全に口を塞がれたメライちゃんが苦し紛れに顔を上げると、鷺丸君が覆い被さるように更に強く唇を押し付けてくる。青大将の口からチョロチョロと出ていた舌におちんちんを舐められ、不覚にも射精寸前まで追い込まれた僕は、鷺丸君の口から舌が出たのを認め、それがメライちゃんの口の中へ、奥深くへ侵入するのをメライちゃんの固まった体から感じ取り、一糸まとわぬ僕の体が瞬時にしてカッと熱くなるのを感じた。
「おちんちんすごいよ。ぬるぬるだよ。メライが口の中に舌を押し込まれてるのを見て、興奮してんのかよ。お前の裸も汗と精液でぬらぬら光ってるし」
Y美がおちんちんを指で突いて言い、おちんちん扱きに専念する男の子の肩を軽くぽんぽんと叩いた。
上から唇で押しかかられ、メライちゃんの背中が反る。顔を上げたまま、手がベンチの端を掴み、細い腕がやや反り気味になって体を支える。あまりのことにメライちゃんは呻き声すら出せないようだった。メライちゃんが抵抗しないのを良いことに、鷺丸君の舌は、胃カメラのようにどこまでも伸びているような気がする。
「ふん。メライも満更でもないようだよ。舌入れられて、よがってるよね。お前が目隠しされてる間に随分開発されたからね」
Y美の声がするすると細長い生き物になって僕の体内に入ってくる。嘘、そんなの嘘、と僕は懸命に否定するのだけれど、メライちゃんの体が一度ピクッと痙攣した後、急に力が抜けて、鷺丸君に背中を支えられるようになるのを見ると、僕は、絶え間のない性的刺激によって生じた薄い靄の向こうに、受け入れ難い現実が厳然と姿を現わすのを認めた。自由の利かない素っ裸の身をくねらせて、首を左右に振る。
潤んだ、うっとりとした目でメライちゃんが僕を見た。素っ裸のまま、男の子におちんちんを扱かれ、もう我慢の限界に達して身悶えする僕の情けない姿を、メライちゃんが口に舌を入れられた状態でじっと見つめる。興奮したようにメライちゃんの目が大きくなった。思わず僕は、「見ないで、いや」と、激しい快楽に意識が飛びそうになるのを抑えつけるようにして叫んだ。
「そういえばメライちゃんは、男の子が射精するところは見たことがないんだってね。いよいよ射精するから、しっかり見ようね。おちんちんから白いのが出るからね」
お姉さんがおちんちんにじっと視線を当てたまま、メライちゃんに話し掛けた。口を塞がれたメライちゃんからねっとりとした声が漏れた。体の奥が疼くような声。あんなに遠慮勝ちだったのに、性的な苛めを受けて意識が変わったのか、メライちゃんはしっかり見ようという欲求を漲らせて、じっと僕の射精寸前のおちんちんに視線を向けた。
その赤く染まった頬は、もうおちんちんを見せられて恥じらう女の子のものではなかった。傾きかけた西日を受けてということもあるけれど、艶やかに輝いて、官能を知った女の人のような色気をたっぷりと含んでいるように見えた。
「やめて。見ないで、お願い」
僕はもう懇願するしかなく、絶望的な気持ちになって声を震わせる。大好きなメライちゃんが乱暴にキスされ、胸やお尻をまさぐられているところを見ながら射精させられる。吊られた両手を動かしても、黒松の大ぶりな枝はわずかに撓むだけだった。素っ裸の無防備な僕の体をエヌ子さんとS子のお母さん、N川さんのお母さんがいじり回して、射精寸前の状態維持に努めている。
「こいつ、男の子の手でこんなに感じてるんだよ。刺激さえあれば相手なんか誰でもいいんだよ。やだね、この変態は」
Y美が冷やかすと、それに応じるようにメライちゃんがこくりと頷いた。心無しかメライちゃんの頬の筋肉が緩み、かすかな微笑を浮かべたようにも感じられた。でも、僕に傷ついている余裕はなかった。男の子がにやにや笑いながら、おちんちん扱きの速力を少し上げた。
「ねえ、いきそうなの? 喘いでばかりじゃ分かんないよ」
お姉さんが訊ねる。
「いきそうです」かろうじて答えると、
「じゃ、とめようかな」お姉さんが呟いた。すかさず男の子が「そうなんだ。とめていいんだね」と応じて、おちんちんの扱きを緩める。と思ったら、Y美からゴーサインが出て、再び扱き始めた。
「いきたいんでしょ?」Y美が腕を組んで言い、すらりと伸ばした足を組み替えた。
「はい」もう頭が朦朧として、メライちゃんが射精の瞬間を今か今かと見つめていることを知りながら、精液を出したくて堪らない欲望に屈する。
「だったら、ちゃんとお願いしろって。鷺丸君にいやらしいことされてるメライちゃんを見て射精したいんでしょ? 早くお願いしなさいよ」
Y美に唆されて、悶絶しながら声を絞る。メライちゃんが唇を吸われ、体をぴくぴくと震わせている。メライちゃんのそんな姿を見てはいけないと思いつつ、どうしても目をやってしまう。メライちゃんのスカートの襞が生き物のように動いた。
「お願い、お願いですから」僕は恥を忍んで声を上げた。
「なあに?」
「いかせてください」
「私がいいって言うまで我慢しなさい」
Y美はそう言うと、僕のおちんちんをしゃがみ込んで扱く男の子の頭を撫でた。Y美が「いいよ」と言った。涎の垂れた僕の口から喘ぎ声が漏れる。メライちゃんの唇が鷺丸君の口から離れた。メライちゃんが短い悲鳴を上げた。
どくどくと精液がおちんちんを通って外へ飛び出す。溜まりに溜まっていた大量の精液がメライちゃんのポロシャツとスカートに飛び散った。
「すごい。お兄ちゃんのおちんちんから精液がドバッと出た」
「うん。その瞬間もしっかり見たよ。一生忘れないかも」
女子児童たちが興奮さめやらぬ体で語り合っている。我慢に我慢を重ねた挙句の射精だった。まだおちんちんの先からぽたぽたと精液が垂れている。
こんなに勢いよく飛び出すとは、メライちゃんも想像していなかったようだ。お姉さんにもらったティッシュで衣類に飛び散った精液を拭き取るメライちゃんに鷺丸君がいろいろと話し掛けている。マジックの練習をしている時とは別人のような、気遣いに溢れた優しい口振りだった。メライちゃんも鷺丸君にしっかり答えている。
お姉さんが僕の両手を縛るロープをほどいてくれた。松の枝に結わかれたロープを取るお姉さんから「ナオス君も手伝って」と頼まれ、もう片方の枝のロープの固い結び目をほどこうとして背伸びをする。爪先立ちして辛うじて手が結び目に届いた。
結び目の隙間を広げようと、足の指だけで全体重を支え、時にふらつきながら格闘する。池の向こうの雑木林から生温かい風が吹いて来て、剥き出しの肌という肌を撫で、相変わらず自分は一糸まとわぬ素っ裸なのだと意識させられる。西日が眩しく差し込んだ池の水面を眺めていると、女性コーラスの人たちが近づいてきた。
「さっきは面白いもの見せてくれてありがと」
一人がこう言って僕のお尻を撫でると、皆が次々とそれに倣うのだった。二人の女子児童と男の子は池の縁に来て、ひそひそ話し合い、射精したばかりのおちんちんが小さく萎んだのが面白いのか、じろじろ見ながら時々大きな笑い声を上げる。爪先立ちして頭上のロープを解こうとしている僕は、裸を少しでも隠そうとして体をくねらせた。
「何してんのよ。どいて」
なかなかほどけない僕に代わって、お姉さんが背のびもしないで簡単にロープを枝から抜き取った。ピアノ伴奏の人がようやく到着し、女性コーラスの練習が始まったようだった。児童合唱の三人の姿も見えなくなった。防音ガラスを通して聞こえてくるコーラスの歌声に混じって、忍びやかに喋る二人の声が聞こえた。
まさかと思って振り返ると、あずま屋のベンチにメライちゃんと鷺丸君がいて、まるで恋人どうしのように寄り添っているのだった。
あんなにはっきりと僕のことを好きだと言ったメライちゃんが鷺丸君のベンチに置いた手に自分の手を重ね合わせている。あれは嘘だったのだろうか、狭い隠し部屋の中で、スクール水着を取られたメライちゃんが僕の背中に全裸の身を密着させ、好きだと告白してくれた、あの言葉は。あの時の異常な事態をくぐり抜けるための方便に過ぎなかったのだろうか。
「でも鷺丸君さあ」Y美が言った。「ほんとにこんなくそチビ女でいいの? 鷺丸君ならもう少し選べると思うけど」
そっとメライちゃんの肩を引きよせ、ショートカットの髪をやさしく撫でる鷺丸君は、夢の良いところで起こされた人みたいに顔をしかめたけれど、すぐに気を取り直してY美へ首を回すと、
「とんでもない。メライちゃんしか考えられないっす」
と、照れ笑いを浮かべて答えた。
「たっぷり裸を見て、キスして、体をいじってたら、好きになるものかな」
Y美が言い、おちんちんを手で隠す全裸の僕へちらちらと視線を向けた。
「メライも初めてキスした相手が鷺丸君で良かったねえ。舌まで入れられてねえ」
にっこりと微笑んで、Y美がメライちゃんの髪の毛をくしゃくしゃに搔き毟った。困ったような顔をして俯くメライちゃんの表情は、恥ずかしそうにしてはいるものの、どこか明るかった。大きな目には希望が溢れていた。
「メライちゃん、こんな奴だけど、うちの弟をよろしくね」
お姉さんが鷺丸君の頭に手をやって下げさせると同時に、自分もペコリとお辞儀をする。メライちゃんもそれに応じて背筋を伸ばし、深々と一礼する。
「それからついでに、裸になるモデルの役もお願いね」
「はい」
顔を寄せてきたお姉さんから一歩退いてメライちゃんが返事をし、存外に元気な声を出してしまったことを照れるように顔を俯けた。
「そうそう、裸と言えば」鷺丸君が初めて気づいたかのように、松の木の後ろに隠れている素っ裸の僕を指して、言った。「こいつはどうするの。ずっと丸裸のままじゃん。そろそろ服を着せてやったら」
門扉の軋む音がして、鷺丸君の言葉が途切れた。いきなり入ってきた人影を見て、驚きのあまり、話し続けることができなくなったようだった。S子、ルコ、ミュー、風紀委員、N川さん、エンコが石畳を通って庭に回ってきた。
「遅いよ、あんたたち」
Y美が立ち上がって手招きをする。それから鷺丸君の方に向き直って、
「この子の服とか靴は、私が預かる。チャコは真っ裸のまま帰らせるつもり。そのためにあの子たちを呼んだんだから」
と言い、僕を呼び寄せると、ベンチに座るメライちゃんと鷺丸君の前で四つん這いになるよう命じた。メライちゃんが鷺丸君の腕にしがみついて、二人の足元で四つん這いになる僕を恐る恐る見下ろす。
傍観者独特の冷たい視線を背中に受けながら思い出すのは、メライちゃんが僕を好きだと言ったこと、僕もまたメライちゃんを好きだと告げたこと、あの狭い隠し部屋の中で互い素っ裸のまま、告白したことだった。不意に涙が止まらなくなる。
「なんで泣いてんの? 愛しいメライと付き合えなくて悔しいの? メライに射精の瞬間を見られて悲しいの? それより私たち女子に土下座してお願いしなよ。服を着させてもらえない僕は家まで裸で帰ります、どうか僕をガードしてくださいってね」
「いやです。許してください」
「駄目、許さない。お前は素っ裸のまま歩いて帰るんだよ」
Y美はこう言うと、屈託のない笑い声を上げて、僕のお尻に手を掛け、ぐっと広げた。露わになったお尻の穴をS子たちが順番に覗き込み、「また拡張したくなるね、この穴」などと口さがなく冷やかすのだった。
いやー、ナオスきゅんの唯一の味方が寝取られちゃいましたねー
鷺丸君グッジョブです
単純にメライが心変わりしたのか、
それとも裏があるのか、
今後の展開が楽しみであります
鷲丸君はY美の言いなりで終わるのか、そうでないのか気になるところです。
しかし、Y美を注意できる大人がいないのは問題だと思いますね!
Y美に注意する大人、いないですね。
困ったことです。
いつもありがとうございます。
母親は激務のようですね。
母親もY美に虐められそうなので、あの家には面会に来ないほうがよいかも。
そりゃ、ナオスきゅんのカーチャンもナオスきゅんの魅力に気づいて、
虐めに加担っしょw(ゲス顔)
とりあえず、この後メライと、ナオスきゅんがお互い想いあいながらも、
誤解やすれ違いから傷つけあう展開とかを期待してみたり(ゲス顔、パート2)
あんまり突っ込んだら、作者の意欲を奪うかもしれない
どうぞこれからもよろしく。