【注意】ここでは、ナオスくんが男の人に責められます。男たちに囲まれ、性的に嬲られます。
ようやく射的屋が見えてきた。
並びの出店はそこそこ賑わっているのに、その射的屋は早々に店じまいをしたようで、景品となる的はきれいに片付けられてあった。的を並べる棚板は三段あり、上の二つは合板の古びた色が剥き出しだった。半袖の黒いシャツを着た男は今、下段の棚板のカバーを外すところだった。そのひょろりと長い後ろ姿、ちらちら動く横顔はすぐに僕の記憶と合致した。
ミヤジマジョーだ。
途中で追い越した桃李さんが来ないうちに事を進めなければならなかった。僕はふらふらと近づいていき、「あのう・・・・・・」と声をかけた。
振り返ったミヤジマは、眉を顰めた。無理もない。夏祭りの賑わいのなか、いきなり色とりどりの浴衣の群れをかきわけるようにして素っ裸の男児があらわれたら、誰だって不審に思うだろう。
「なんだ、お前は」
鋭い視線が斬り込んできた。なぜ裸なのか、その理由を僕の一糸まとわぬ体から読み取ろうとするかのような意志の強さを感じる。恥ずかしい。おのずとおちんちんや胸を隠す手や腕に力がこもって、ぴたりとそれぞれの部位に密着する。でも、ひるんでばかりいられなかった。
「ミヤジマジョーさんですよね。ミヤジマさん、模擬店の資料に尊敬する人、凄腕の外科医、BJと書いてましたけど、あれはブラックジャックの略と思わせていて、じつは違うでしょ。ブラックジュエリーの略じゃないかと思うんですけど。つまり黒い宝石」
いきなり鎌をかけてみた。
予想どおり、ミヤジマジョーの顔に驚愕の色が浮かんだ。素早く左右を見回してから、僕のほうへカウンター越しに身を乗り出して、
「おめえ、何者だ?」
嗄れ声で問う。
僕はそれには答えずに、
「ミヤジマさん、さっき舞台袖にいましたよね。スタッフでもないのにスタッフの法被を着て、何してたんですか」
じっと穴のあくほど僕の顔を見つめるミヤジマジョーの威圧に負けじと、僕はゆさぶりを続けた。すぐ後ろを若い人の集団が通り過ぎて、素っ裸の僕を冷やかし、次々とお尻を撫たり揉んだりしたけど、僕は集中力を切らさなかった。
「なんだ、お前、あのときの裸のガキか。あいかわらず裸のままなんだな。恥ずかしくないのかよ、そんな格好で祭りの会場をうろうろしててよ」
せせら笑いながらも、ミヤジマは僕の目から警戒の視線を外さない。と、上半身をくっと前へ倒して、腕を伸ばしてきた。まずい、と思ったときにはもう、ミヤジマの両手は脇の下に滑り込み、僕の体をがっちりと押さえ込んでいた。「あ、やめて」と声を上げるも、軽々と持ち上げられ、慌てて空中で足を揺する。足の親指がカウンターのつるりとした表面をこすった。
カウンターの内側は狭かった。どこにも逃げ場はない。それにしてもミヤジマの服装は人目を惹くものだった。全身黒ずくめなのである。シャツだけでなく、作業用ズボンまで漆黒の闇とまがう色だった。
地面に皮革の長財布が落ちていた。僕をここへ運び入れた際にミヤジマのズボンの尻ポケットからこぼれたものと思われる。なかなかに厚みのある長財布だった。
「財布が落ちてますよ」と僕は教えた。
振り返ったミヤジマはすぐに首を戻した。
僕の目をじっと見つめる。そして礼を述べる代わりに僕に拾えと命じた。
拾いに行こうとしたら腕を掴まれた。
「誰が立って拾いに行けと言った? 四つん這いになって財布を咥えるんだよ」
逆らうとどんなひどい目に遭わされるか分からない、低い、掠れた声だった。
僕は素直に犬の姿勢になった。カウンターの中なので四つん這いになると人通りから完全に隠れる。財布のところまで這って、財布を口に挟んだ。使い込んだ皮革の味が口に広がってきた。
長財布は見た目以上に重く、途中で落としてしまった。数枚の硬貨がこぼれ出た。
ヒギィッ。お尻に鋭い痛みが走った。ミヤジマに平手打ちされたのだった。
手を使う許可を得て硬貨を拾い集め、財布に戻した。折り畳み式の長財布の中にはカードなどを入れる透明なケースがあり、そのうちの一枚には写真が入っていた。 女の人のヌード写真だった。
それもただのヌード写真ではない。小手高手に緊縛されて、滝の下で正座しているところを正面から写した写真だった。布を延べるように落下する水を背中で受けて、女の人はじっと下を向いていた。さほど高さのある滝ではないが、滝壺は白く濁ってせり上がり、轟轟とした響きが聞こえてくるようだった。
女の人のきめの細かい肌という肌に無数の水滴がついて、ウエストのくびれ具合や腰の下の辺りの痣を自然の造化に見せた。豊満な乳房は二重に巻かれた縄のためにツンと張り出て、水と光を存分に浴びて輝き、胸の谷間のふたつのほくろまで鮮明だった。おのれの股間の黒々とした陰毛を一心に見つめるしか、この女の人が責め苦を逃れる道はないのかもしれなかった。 いけない、いつのまにかおちんちんが反応してしまった。
「このガキ、人のプライベートの写真を見て発情してんじゃねえぞ」
ミヤジマは強引に僕の手から財布を奪うと、僕の硬くなったおちんちんを握った。
「痛い、離して。もう見ませんから」
僕は逃れようとして盛んに腰をくねらせた。
首根っこを掴まれ、バックヤードに連れて行かれた。床に赤錆びた鉄板があった。ミヤジマは背中に回した僕の腕を掴んだまま、その板を引っ張り上げた。ひんやりした空気が足元から漂ってきた。
暗い穴に脚立の先端が付いている。地下室のようだった。
背中を押されるようにしてステンレス製の脚立におそるおそる裸足を乗せ、くだる。ミヤジマが電気をつけた。
コンクリート打ちっぱなしの四角い空間で、脚立の横に物書き用の古い机、正面には棚があり、壁に据え付けられてあった。工具や道具入れがぎっしり詰められてある。左の上部には換気扇と細長い窓。足の裏にざらざらした砂を感じた。
ミヤジマは棚の最下段端に収まっている箱を引っ張し、底を上にして振った。荒縄がどさどさと落ちてきて、小さな山を成した。空き箱を隅へ蹴っ飛ばして、縄の束を手に取る。僕は足がすくんで動けなかった。この狭い地下の物置に監禁されてしまうかもしれない。しかも目の前にいるのはステージ爆破を目論むテロリストだ。逃げなければと思うのだけど、恐怖で硬直した体は言うことをきかない。
「少しおめえの体に質問させてもらう」
ググッ。いきなり腹部に拳を入れられた。苦しくて、膝が崩れる。ミヤジマは慣れた手つきで僕の裸身に縄をかけていった。
熟女トリオのひとり、ミョー子さんが桃李さんと腕を組んで、まるで仲良しカップルのようにるんるんとミヤジマジョーの射的屋に向かったというのは、つくづくありがたいことだと思った。板倉さんによると、三人の熟女の中で最も年若に見えるミョー子さんは、桃李さんに周囲が鼻白むほどベタベタと迫り、「もっとあなたと一緒にいたいの」というメッセージを表情や仕草で盛んに発したという。
きっと桃李さんと金魚すくいなどして時間を潰してくれたのだろう。ミョー子さんのおかげで僕は桃李さんにかなり遅れて出発したにもかかわらず、桃李さんよりも先にミヤジマに接触できた。
なんとしても桃李さんがミヤジマに会うのを阻止しなくてはならなかった。僕が棚板のカバーを外すミヤジマに第一声を発した時も、いつ桃李さんが追いつくか、気が気ではなかった。早くミヤジマを動揺させ、誰にも見られない場所へ僕を連れて行くように仕掛ける必要があった。
その目論見は見事に成功し、ミヤジマは早々に僕をバックヤードの地下室に連れ込んだ。ここまでは計算どおりだ。しかしまさか緊縛されるとは思わなかった。門松徳三郎会長を襲う計画があるミヤジマにそれほどの時間的な余裕はないはず。厳しく訊問されるだろうとは覚悟していたけれど、いきなり縛られ、嬲られるとは予想だにしていなかった。
荒縄で小手高手に縛られ、乳首を挟んで二重にきつく巻かれ、胸が膨らむほどだった。その縄尻は頭上の梁を通して棚の柱に固定されている。
脇腹に一撃を食らって苦しんでいるうちにミヤジマは流れるような手際でこのような格好に全裸の僕を拘束したのだった。
ミヤジマは抵抗できない僕の体をひととおり調べた。特におちんちんやお尻の穴は念入りだった。おちんちんの皮を剥かれ、尿道のほか、お尻の穴も目一杯広げられた。
それが済むと、ミヤジマジョーは射的用の銃身の長いコルク銃を持ち出した。
二メートルちょっとしか離れていない位置でミヤジマは片膝をつき、コルク銃を構え、銃口を僕の縛られた裸身に向けた。
僕は自分を安心させるために、大して威力のある銃ではないと決めつけることにした。
ミヤジマの構えるコルク銃は射的屋で客が使うものだろう。であれば、発射されたコルクが僕の剥き出しの肌に激突しても、皮膚を破るどころか、痣にもならない。くすぐったい程度に違いない。
小学生のころ、母と温泉旅行した折、射的屋で遊ばせてもらったことがある。その威力ときたら、まったくお話にならないほどの弱々しさだった。客が棚板に並ぶ景品を簡単に落としてしまったら商売にならないからだ。ぐっと銃口を近づけたところで、狙う箇所を寸分でも外すと金属製のライターなぞは倒れるどころか、ぴくりとも動かなかったりする。
「どこ狙おうかな。・・・・・・よし、右の乳首」
ミヤジマジョーが引き金を引いた。その瞬間、ヒギャアア・・・・・・。予想外の強い衝撃が走った。抉られるような痛みに悲鳴を上げる。
着弾した僕の左の乳首のすぐ下が赤く染まった。
同じ乳首をもう一度狙われる。僕はなすすべもなく体を揺すった。アウウッ。今度は乳首の右横に刺すような痛み。続けて左の乳首が的になった。三発も連射され、そのうちの一つは見事に乳首の突起物に命中した。
撃たれるたびに泣き叫び、僕は「もうやめて、許して」と訴えた。さらに「助けてえ」と声を振り絞る。
いくらでも叫ぶがいい、と呟くミヤジマの低い声が聞こえた。この地下室の外へ音が出たとしても、草木も眠る丑三つ時でもなければ気づかない、ましてや今は夏祭りのお囃子が盛んだから、お前の叫びに耳に留める者は皆無だろう、と不敵に笑う。
乳首の次のターゲットはお臍だった。後手に縛られ、梁に繋がれた裸身をしきりに揺する。お臍であれ、脇腹であれ、体にコルク弾が当たるのが怖くてたまらなかった。
「じっとしてろ」とミヤジマが命じた。「動いていると、いつまでもおれはこの遊びをやめないからな」
観念して言われたとおりにする。それでも体重を支えるつま先はぶるぶる震えて止まらなかった。僕は大きく息を吸って止めた。引き金を引く。ギャアア。お臍の上にコルク弾が食い込み、落ちた。食い込んだ部分が赤くなっていた。すぐに二発目、三発目、四発目と立て続けに発射される。
「動くなと言ったろ。なぜ動くんだ」
「ごめんなさい、痛くて、たまらないです。もうやめて」僕は涙声になって訴えた。
「やめない。次は後ろを向け。ケツを狙う」
「もうやだ、なんで僕をいじめるんですか? 堪忍してください」
「だめだね。お前は何かつまらんことを嗅ぎつけたようだな。お仕置きが必要だろ」
ハウウッ。お尻に向けて強烈なコルク弾が連続して飛び出してきた。ことごとく当たって、肉をぶるぶると震わせる。
なぜ僕を痛めつけるのか。僕に聞きたいことがあるはずだから、手っ取り早く質問してくれれば、何も拷問なんかしなくたってあっさり自白するつもりだったし、そのための回答を頭の中で用意していた。
ところがミヤジマジョーはいっかな質問もせず、小手高手に縛りつけて梁につなげた僕を的にして、もっぱらコルク銃の射撃を楽しむのだった。そんな時間的な余裕はないはずなのに。
僕の足元には、優に五十を超えるコルク弾が散らばっていた。泣きながら、時には大声を上げながら許しを乞うても、結局、これだけの数の弾丸を緊縛された素っ裸の身に浴びたのだった。
胸や腹部、お尻や背中、太股や脛だけでなく、おちんちんにも一発食らってしまった。その途端、膝の力が抜けて、梁から吊される格好になった。
荒縄が裸身に食い込み、後ろ手の重ね合わされた手首に耐えがたい痛みが走る。なんとか膝を伸ばすものの、よろめくばかり。
立っているのが精一杯なほど、僕は弱り切っていた。
地下室の壁際に壁の色と同じドアがあった。そのドアから男たちが入ってきた。五人。五人ともミヤジマジョーと同じ黒ずくめの服装だった。
コンクリートの床に膝をついて、僕はミヤジマの性器を口に含んでいるところだった。依然として後ろ手に厳しく縛り上げられたままで、胸が隆起するほど縄が食い込んでいる。ミヤジマの性的欲望を口で処理させられ、僕は何度もむせた。
「飽きないねえ、ミヤジマさんも。何発目よ?」男たちの一人が訊ねた。
「知らん。こいつ、ムラムラさせるよな」
「なあ、俺たちにも交代してくれよ」
「ちょっと待て。あと一回出したら」
「強いねえ、さすが女泣かせだけあるね」
男たちが感心した。実際、ミヤジマの性欲は驚くほどだった。脅され、僕は仕方なく極限まで硬くなった性器の裏側、あるスポットを舌で撫で、少しずつ圧を加えた。やがて、精液をドクドクと口の中に大量に発射される。
出し切ったと思われても、なおミヤジマは僕の頭の押さえつけを緩めず、口から性器を外すのを許さなかった。続けろ、とミヤジマが掠れた声で命じた。僕は口内の精液を吐き出すこともできないまま、奉仕に励んだ。
一度柔らかくなった性器が再び硬くなる。口内に溜まった精液を舌で性器になすり付ける。スポットにもぬるぬるした精液を塗りたくり、心持ち吸う。一回目よりも早く反応し、ムクムクと硬くなった性器に口をすぼめて圧をかけ、精液に濡れた舌でスポットを舐めまくる。ほどなくミヤジマは二度目の射精を終えた、僕の口から性器を抜かないまま。
やっと性器を口から抜いてもらったけれど、すぐに鼻をつままれ、上を向かされた。ごくり、と喉が鳴った。ミヤジマの放出した二回分の精液をむりやり飲まされてしまった。膝をついたまま咳き込む僕の唇から精液の混じった涎が垂れ、コンクリートの床に黒い染みを作った。素っ裸のまま後ろ手に縛られている僕は、おちんちんの袋に異変を感じた。ミヤジマが靴先でおちんちんの袋を下から押しているのだった。いや。僕は短く叫んで振り向こうとしたけど、すぐに戻され、後ろ髪を掴まれた。
こうして三回目の射精に向けて奉仕しているところへ、男たちが入ってきたのだった。
しゃぶらされている僕のお尻やおちんちんを男たちは冷やかし気味に触り、嬲った。微妙な性的刺激に僕が反応すると、平手打ちを食らった。反応したそのわずかなあいだだけ、口や舌の動きが緩慢になるからだった。
性器が膨らみ、大きく開いた口を塞いだ。もはや口だけでは息を吸うことも吐くこともできない。性器の先端部分、その裏側のスポットに当てた舌の振動を強くする。ウッ、と呻いてミヤジマが射精した。
気持ち悪い。口中の精液はすぐに吐き出したい。でも、背中の高い位置で両腕を縛られているので、手で受け止めることができず、床に吐き出すしかないのだけど、口を押さえられてしまったら、それすら叶わない。
そのまま口の中に残しておけ、とミヤジマは言った。
性器を入れると口中でローションになっていっそう気持ちよくなるとのことだった。
男たちはジャンケンをし、順番を決めた。休むことも精液も吐き出すことも許されず、口の中に突っ込まれた性器をただひたすらしゃぶらされる。涙を流しながら僕は重労働に耐えた。
男の唾液に濡れた指が僕の乳首を執拗に撫で回した。
壁に立てかけられたコルク銃を見て、男たちが驚きの声を上げた。
「この素っ裸のガキを射的の的にして遊んだって言ってたけど、これを使ったんですか」
ミヤジマがそうだと答えると、
「マジか。やばいじゃん。これ、スタッフ用のやつですよね」と言った。
的に当たっても落ちないと文句を言う客にスタッフが手本を見せる時に使うのがスタッフ用の銃で、客用のそれと一見変わらないけど、威力が全然違うとのことだ。このスタッフ用の銃を使えば、金属製のライターはもちろん、一番の目玉商品である戦車のプラモデルも簡単に落とせるらしい。
「これで裸の体に撃たれたら、相当イテエと思うぞ」
「大したことねえよ。試しに撃ってみろよ」と、ミヤジマがそそのかす。
フグ、やめてえ、と叫ぶものの、性器をくわえさせられているさなかの僕は、ろくに発語できなかった。ヒギィ。横からお尻を撃たれた。肉が抉られるような痛みに呻く。それでも口による奉仕の中断は一切認められなかった。男たちは僕のお尻の肉がぷるんと振動したのをおもしろがって、続けて何発か、狙い撃ちした。
口による奉仕を強いられているあいだ、ミヤジマと男たちの会話から、僕はなぜミヤジマが悠長に僕を嬲っているのか、なぜ門松徳三郎氏の暗殺にさっさと向かわないのか、その理由を知ることができた。
どうも発明コンテストの進行が滞っているらしい。出展発明品のひとつである洗体マシーンがうまく作動しないなどのトラブルがあったほか、審査も意見が分かれて結果を出せず、大幅に長引いているとのことだった。
そこへやってきたのが僕だった。黒い宝石、という組織名のことで鎌をかけた僕を嬲る時間はたっぷりあったというわけだ。
バケツの中に仕掛けた爆弾が撤去されたという連絡は、まだ桃李さんから受け取っていないようだった。
どれくらい時間が経過したかは分からない。三人目の男の二回目の射精が終わったところだった。
地下室のドアが開いて、新たなひとりが入ってきた。やはり黒ずくめの服装だったけれど、ミヤジマたちとは服装の種類が違った。シャツやズボンではなく、体にぴったり張り付いたレザースーツに全身を包んでいたのである。しかも女性だった。そのアクティブな服装とは対照的に顔は地味だった。髪を後ろで束ね、銀縁の眼鏡をかけ、生真面目な事務員のように見えた。
その女性は口を使った奉仕に励む僕について、当然湧くであろう疑問を男たちにぶつけた。「いったいこの子は何」とか「なんで全裸で縛られてるの」とか「そんなことさせて大丈夫なの」とか。
その言い方も極めて事務的だった。訊ねながらちらちらと、あるいはじっと僕の顔に視線を当てていた。
「この子の体、ところどころに痣があるみたいだけど、これもあなたたちのしわざ?」
「そりゃ、アニキだ」と男たちのひとりがミヤジマを指して言った。
レザースーツの女性は男たちと同じくらいの背丈だったけど、胸の膨らみやウエストのくびれなど、露わなボディラインでひと目で女性と分かる、すらりとしたスタイルの持ち主だった。壁にたてかけてあるコルク銃を手に取って、しげしげと眺めている。
口の中の性器がパンパンに膨らんで、猛々しい亀頭が喉の奥に当たった。僕は頭を少し引いて舌と口内に溜まった精液で摩擦をかけた。ウッと呻いて男が射精した。口の中に溜められる精液の量には限度がある。射精されるたびに僕は少しずつ精液を飲み下し、口内に保つ精液を一定にしていた。
後ろで待っていた男がズボンのチャックを下げて性器を出したので、僕は溜まらなくなって叫んだ。「待って。お願い。少し休ませてくだ・・・・・・」精液が喉をくだって、むせてしまった。
際限なく続く奉仕は悪夢そのものだった。体力的にきつく、もう限界だった。口周りの筋肉が弛んでしまった。
「いいよ、休ませてやる。ただし、吊すけどな」とミヤジマが言った。それから女の人に向かって、「あんた、こいつを的にして撃ってみたら。射撃、得意なんだろ?」
「そうね。おもしろそうだわ」
レザースーツの女の人は、無表情のまま応じた。
背中の高い位置で両腕を縛った縄と、それとは別に胸の周りをぐるぐる二重三重巻きに縛りつけた縄と、この二本の縄がどう絡み合い、つながっているのかは分からないけれど、そのどちらかの、あるいは両方の縄が梁を通して、全裸の僕をつま先立ちにした。
ミヤジマが最初に僕を射的の的にしたときと同じ体勢だった。ただ口奉仕のせいで疲れ切っているので、さっきみたいにはしっかり立てていない。
いや、さっきもじつは銃を向けられた途端、膝ががくがく震えて、ふらついていた。恐怖に直面して、きちんと朝礼のように起立するなんて、どだい無理な相談だ。それに加えて、今の僕は長々と口奉仕させられたせいで心身ともにクタクタだった。
おちんちん丸出しの僕の正面にレザースーツの女の人がいて、ミヤジマが使用したのと同じコルク銃を受け取った。どこを狙うつもりかと男たちに訊ねられ、生真面目な事務員は少し考えてから、「ぶらぶら揺れる金玉を撃ってみたいな」と答えた。
そいつは素敵だな、と男たちはおもしろがった。
おちんちんの袋をあの特別な威力のコルク銃で撃たれる。そう思うと頭の中が真っ白になった。
「でも、おちんちんが邪魔ね。テープで貼り付けてくれない?」
無言のまま男たちは僕のおちんちんを摘まみ上げると、下腹部にぺたりと押しつけ、ガムテープで貼り付けた。
「ありがと。これで狙いやすくなったわ。ぶら下がってるから狙いやすい」
レザースーツをまとった銀縁眼鏡の女事務員は片膝をついてコルク銃を構えた。
射撃距離はミヤジマよりも長く、壁際に接した位置だった。それでもスタッフ仕様であるコルク銃の威力を考えれば、大して気休めにならない。どうせ射撃の腕を見せびらかしたいだけなのだろう。
緊縛された裸身がこれから受けるであろう甚大な痛みに備えて、強張っている。
あのミヤジマですら、おちんちんの袋は狙わなかった。それなのに、この事務員もどきはあっさり的にすると宣言した。ぶら下がっているから狙いやすいという、ただそれだけの理由で。
女の人だからその痛みを理解できないのかもしれない。男が女の人特有の痛みを理解できないように。
ともあれ、この女性もまた、これまで全裸でいるしかない僕がたくさん遭遇してきた、思いやりのない、他者の置かれた状況を想像しようともしない人種だった。もしかすると僕の窮地を救ってくれるかもしれない、などと一瞬でも期待した自分の愚かさに、うんざりしてくる。
全裸で梁につながれ、おちんちんにテープを貼られておちんちんの袋を無防備に垂らし、今しも陰嚢を撃たれようというところなのに、なぜ、「うんざりしてくる」などと思えるほど気持ちに余裕があったのだろう。それは、どうせまもなく僕は自失するだろうと覚悟していたからだ。あのコルク弾がスタッフ専用銃の威力をもって陰嚢を直撃したら、間違いなくその痛みは限度を超える。それをミヤジマの時みたいに五十発も浴びたら、かなりの高確率で僕は気を失うだろう。そのような状況では、むしろ気を失うほうが断然幸せなのだ。どうせ逃れられないのだから。次の一発を受けるたびに頭のてっぺんがキーンとするほどの激痛で意識が戻ってしまうだろうけど。
「動かないで」と、レザースーツの女スナイパーに鋭い語調で注意される。
早く気を失いますように。そう願って目をつむる。
一発目、コルク弾はおちんちんの袋の下部すれすれを通過した。
続けて二発目。やはり同じ箇所にヒュンと風圧を感じた。
三発目、四発目。コルク弾はほとんどいつも同じ箇所を通過し、おちんちんの袋をかすめるだけだった。
「なんだよ、一発も当たらねえじゃねえか。下手くそだな、おめえは」
ミヤジマにからかわれても、女の人は無視した。銃口にコルク弾を詰め、片膝をつけ、構えて撃つ。この動作を淡々と繰り返した。
発射した弾は二十発を超えた。しかし一発として陰嚢を直撃しなかった。それどころいつもおちんちんの袋の底をかすめて小さく揺らすだけで、気を食いしばって構える僕は、一度も苦痛に見舞われなかった。
男たちが呆れて、手本を見せてやるから銃を寄こせと迫っても、女の人は首を横に振って拒んだ。そして黙って射撃を続けた。
あいかわらずコルク弾はおちんちんの袋の真下を通過した。
「見てらんねえな。そろそろ時間だから、おれ、行くからよ」
アタッシュケースを手に取ったミヤジマが段ばしごに向かいながら、五人の男たちに言った。夏祭りスタッフ用の法被を肩に引っ掛けていた。僕がステージの舞台裏で最初に会った時に着ていたのと同じ法被、リキシさんから奪った法被だった。
「行ってらっしゃい。ところで、このガキ、どうします?」
「ああ、お前たちの好きにしていい。こいつは後ろの穴がゴムみたいに広がる」
男たちが歓声を上げた。
ミヤジマは段ばしごをのぼって鉄板を押し上げると、地上に出て行った。
奇声を発して男たちが梁につながれた全裸の僕に群がった。小手高手に縛られている僕の体にあちこちに手が伸びる。とりあえず梁から外そうとしているらしい。
まったく男たちの性欲には恐れを抱かされる。僕は彼らを少なくとも一人二回は射精させたはずなのに、もう新たな欲望に火を付けている。
Y美の母親であるおば様の性欲も相当に強く、僕はよくへとへとになるまで奉仕させられたけれど、それでもそこには僕を奉仕におのずと誘導する優しさのようなものが感じられた。でも男たちは違う。
ただ性欲に突き動かされた本能が暴力的に僕を従わせようとするだけだ。
「やだ、やめて、堪忍して」
泣き叫ぶ僕を男たちはむしろ喜んだ。何人もがいっせいに梁から僕を解こうとするのだけど、手がぶつかり合っているようで、ひとりでするよりもずっと手間取っている。
口でならいくらでも精一杯努めるから、硬くなった性器をお尻に入れるのだけはやめて、と嗚咽しながら訴えても、男たちは荒い呼吸を繰り返すばかりだった。
乳首を舐められる。僕のふたつの乳首を、ふたりの男がそれぞれ競い合うかのように、舐めている。
もうひとりの男は、吊された僕の腰をがっちりと押さえている。
「お願いだから、お尻だけはやめて」
太い指をかけられて、ぐいとお尻の穴を広げられた僕は、恐怖で泣き叫んだ。
突然、ひとりの男が股間を押さえてくず折れた。続けて右の乳首を舐めていた男も苦悶の表情を浮かべて膝をついた。レザースーツの女の人が銃口を男たちに向けていた。三発目のコルク弾が男の股間を直撃した。呻き声とともに膝をつく。
確実に的を仕留めている。
「このアマ、何しやがんだ」
激怒した男たちがいっせいに女の人に襲いかかった。女の人はコルク銃を置くと、すっと立ち上がって、男たちを迎えた。
信じられない光景だった。全身黒のレザースーツをまとった女の人は、驚きの跳躍と身のこなしで五人の男を一人残らず倒した。三分にも満たない出来事だった。
呆然とする僕に女の人が近づいてきた。僕の下腹部に貼られたガムテープを勢いよく外す。おちんちんがぽとりと垂れた。ヒュン、と声を上げてしまった僕を見て、彼女は当惑の表情を浮かべた。
縄をほどき、緊縛されていた僕の裸身を自由にしてくれた。縄の圧迫から解放された腕をさすりながら、僕は訊いた。
「この人たち、死んでないよね?」
「当たり前でしょ。こんな奴らでも殺したら面倒だからね。気絶してるだけだよ」
後ろに束ねていた髪をほどきながら、女の人が言った。ばさりと艶やかな黒髪が肩先に流れた。続けて銀縁の眼鏡を外し、足元に落とすと、ブーツの踵で踏みつけて粉々にした。驚く僕に「もう使わないから」と答える。伊達眼鏡だったようだ。
僕は改めて女の人の顔を見た。薄暗い事務所で一日じゅうデスクワークする、これといって趣味もなく、これまでの恋愛経験はすべて架空の相手という事務員の印象は一変した。ずばり美形だと思った。きりっとした鼻梁で、目と眉のあいだに広めの間隔があった。格別に目が小さいわけでもないのに、そう見えるのは、二つの目尻がやや垂れているからだった。それがこの女の人の顔を忘れがたいものにしていた。
「個性的な顔立ちなんですね」美しい人を前にすると、僕はなんでも思ったことを正直に言ってしまう。そういう悪癖があった。
「失礼な子ね。助けてもらっといて、いきなりそれはないでしょ」
「ごめんなさい」僕は両手でおちんちんを隠したまま、ぺこりと頭を下げた。「おちんちんの袋を狙うなんて言うから、危険な人だと思って、すごく怖かったんだけど、途中で僕の味方になってくれる人かもって気づいたの」
「あれはね、仕方ないのよ。わざと外すにしても体に当たらないようにするには、あの部分を的にするのが一番いいと思ったから」と、はにかみながら弁解する。
実際、彼女の撃ったコルク弾はすべておちんちんの袋の下部をかするようにして通過した。太股にも当たらなかった。すごい射撃の腕だと思った。
「それにしてもガムテープでわざわざおちんちんを留めさせるなんて・・・・・・」僕はなんだか急に恥ずかしくなってきた。
「だってほんとに邪魔だったんだもん。それより早くここを出ましょう。彼らが意識を取り戻す前にね」
そうだった。のんびりしている時間はない。
バキッ、と硬い物の折れる音がした。
レザースーツの女の人が天井の鉄板に続く段ばしごに蹴りを入れて破壊したのだった。壁際の棚はビスで固定されていて容易に動かせないから、段ばしごが破壊されたら、天井から抜け出すのは相当に難しい。
次に女の人は自分が入ってきた地下室のドアを開けて、僕に机を運び出す手伝いをさせた。彼女はその机を閉めたドアの前に置いた。狭い通路に運び出した机が収まって、中からドアを開けられなくなった。
気絶した男たちを部屋に閉じ込めた彼女は、密閉空間ではないから男たちが酸欠で死ぬ心配はないと言った。
部屋の外には蛍光灯に照らされた幅の狭い長い廊下が続き、右側に錆びた鉄製のドアが等間隔に並んでいた。女の人のレザースーツに蛍光灯の弱々しい光が反射し、筋肉質の体をほのかに浮かび上がらせる。剥き出しのコンクリートの床が足の裏に冷たい。しかもところどころにコンクリートの破片のようなものが散らばっていた。
廊下の一番奥のドアをあけ、レザースーツの女の人が中に入った。一見、普通に歩いているようだけど、彼女は相当な歩行速度だった。距離がいつのまにか広がっている。裸足ながらせっせと歩を進めていた僕は、ほとんど駆け足になって閉まりかかったドアの向こう側へ一糸まとわぬ裸身を滑り込ませた。
そこには上へ続く階段があった。
口をすぼめて吸いながら器用に裏スジをペロペロして、何度も何度も射精させては、
精液を飲み干すナオスくんのフェラテクに驚きました。
なぜこれ程フェラが上手なんでしょうか?
過去にもうすでに 男性に徹底的に調教されているのでしょうか 。
ショタコンには堪らないお話ですね。
最後のエピソードと思って、つい過激になってしまいました。
許していただければと思います。ストーリーの展開上、必要なエピソードということで。
なぜかこの物語に出てくる男性ってナオスくんで性処理したがりますよね。
そうですね。ノンケなんですけどね。
M的性質の発展可能性のひとつと思っていただければ幸いです。