5月28日、ヨシ原で虫探しをしたときにアリを採集してきました。その検索をしてみたので、記録のために残しておきます。
採集してきたのはこんなアリです。検索には「日本産アリ類図鑑」(朝倉書店、2014)に載っている検索表を用いました。実際に検索してみると、ヤマアリ亜科ケアリ属のトビイロケアリになりました。その過程を写真で確かめておこうと思います。
①腹柄は1節からなる;腹部末端の背板は単純で、微小な刺の列はない;頭盾前縁側方に小突起はない
②腹柄節は小さく、側方から見て丘部の幅は狭い;腹部第1節と第2節の間はくびれない;腹部第1節の背板と腹板は融合していない;腹部末端に刺針をもたない
③腹部末端は円錐形で丸く開口し、多くの属ではその周囲が毛で取り囲まれる ヤマアリ亜科
④胸部に突起や刺はない;腹柄節に突起や刺はない
⑤大腮は通常の三角形状
⑥触角は12節からなる
⑦中胸気門は背面もしくはごく背方寄りに位置する
⑧前伸腹節の気門はほぼ円形
⑨前胸は短い
⑩複眼は頭部側面の後方よりに位置する;前・中胸背面には軟毛や剛毛が不規則に乱立する
⑪頭部後縁は直線状かわずかにへこむ;大腮に7歯以上の歯を具える ケアリ属
⑫体は褐色から黒褐色;小腮鬚は長く、頭部と胸部の関節部に達する ケアリ亜属
⑬触角柄節に多数の立毛がある
⑭前伸腹節後側縁の中央部付近に立毛はない;1本の触角柄節の外縁に見える立毛は、触角鞭節の屈曲方向から見て25本以下;腹柄節は高く薄い;胸部は頭部とほぼ同色
⑮全体的に暗褐色(胸部は頭部・腹部に比べて多少淡色になる場合は多い);腹柄節の頂部はより鈍角的で前縁は角ばる;触角柄節の長さは頭幅とほぼ同じ トビイロケアリ
検索は①~⑮までの手順になります。この15個の検索項目を調べて、トビイロケアリであることを確かめていきます。ただし、順番に見ていくと、同じ写真を何度も出さないといけないので、写真ごとにまとめて見ていきたいと思います。
まず、最初は横から写したものです。体長はImageJの折れ線近似で測定して、3.4mmになりました。図鑑によると、2.5~3.5mmなので範囲には入っています。この写真からは腹柄が1節でできていて、腹柄節が薄いこと、腹部第1節と第2節の間がくびれていないこと、それに体色が褐色であることなどを見ていきます。ほぼ書いてある通りだと思われます。
次は腹部末端の写真です。末端には火山の噴火口のような穴があき、周囲に毛が生えています(写真にはうまく写っていないのですが)。①の背板についてはこの写真ではよく分かりませんが、この項目はクビレハリアリ亜科を除外するための項目なので、たぶん、大丈夫でしょう。
次は頭部です。①の頭楯前縁には特に異常は見られません。また、大腮は三角形状で、複眼は頭部のやや後方に位置しています。さらに、頭部後縁(白矢印)は平らかやや凹んでいます。⑮の触角柄節の長さはImageJを使って測定してみました。頭部の幅1に対して触角柄節の長さは1.06になり、ほぼ同じになりました。
これは側面を拡大したものです。⑦の中胸気門は背面に並んでいます。⑩と⑭は共に立毛に関するものですが、書かれている通りだと思われます。
触角は数えてみると12節になりました。
大腮の歯は黒矢印で示した6個はすぐに分かりました。白矢印の2か所にはたぶん、歯があるのではと思うのですが、よく分かりません。⑪にはほかの項目もあるため、とりあえず、この項目はOKとしました。
これは頭部を腹側から写したものです。小腮鬚は長く、確かに頭部の胸部の関節部に届きそうです。
次は触角柄節の立毛に関してです。立毛に関しては以前も立毛の定義が分からなくて苦労しました。その時の記事を引用すると、Wilson (1955)の定義では「立毛とは鞭節を含む面内で見て、柄節の前面にあって、表面から45度以上の角度で生えている毛」となっています。今回は立毛の出る方向については気にしないで、鞭節側から見て立毛と考えられる毛を数えてみました。写真のように16本数えることができました。たぶん、25本よりは少ないことは確かでしょう。ということでこの項目もOKとしました。なお、この写真を撮るのにだいぶ苦労しました。これは生物顕微鏡で撮影したものですが、いつも撮るように対物レンズの周囲から照明しただけでははっきりしなかったので、少しだけ透過照明も加えて撮影しました。
最後は前伸腹節と腹柄節を撮ったものです。深度合成を用いたのですが、写す枚数が少なく、腹柄節があまりはっきりとは写りませんでした。それでも、前伸腹節気門はやや丸いこと、腹柄節が前後対称ではなく前側が少し丸みを帯び、黒矢印のところで角張っているように見えなくはないという感じがします。
ということで、今回のアリはトビイロケアリではないかと思われます。図鑑によると、草地から林内にかけて最も普通にみられる種だそうです。
採集してきたのはこんなアリです。検索には「日本産アリ類図鑑」(朝倉書店、2014)に載っている検索表を用いました。実際に検索してみると、ヤマアリ亜科ケアリ属のトビイロケアリになりました。その過程を写真で確かめておこうと思います。
①腹柄は1節からなる;腹部末端の背板は単純で、微小な刺の列はない;頭盾前縁側方に小突起はない
②腹柄節は小さく、側方から見て丘部の幅は狭い;腹部第1節と第2節の間はくびれない;腹部第1節の背板と腹板は融合していない;腹部末端に刺針をもたない
③腹部末端は円錐形で丸く開口し、多くの属ではその周囲が毛で取り囲まれる ヤマアリ亜科
④胸部に突起や刺はない;腹柄節に突起や刺はない
⑤大腮は通常の三角形状
⑥触角は12節からなる
⑦中胸気門は背面もしくはごく背方寄りに位置する
⑧前伸腹節の気門はほぼ円形
⑨前胸は短い
⑩複眼は頭部側面の後方よりに位置する;前・中胸背面には軟毛や剛毛が不規則に乱立する
⑪頭部後縁は直線状かわずかにへこむ;大腮に7歯以上の歯を具える ケアリ属
⑫体は褐色から黒褐色;小腮鬚は長く、頭部と胸部の関節部に達する ケアリ亜属
⑬触角柄節に多数の立毛がある
⑭前伸腹節後側縁の中央部付近に立毛はない;1本の触角柄節の外縁に見える立毛は、触角鞭節の屈曲方向から見て25本以下;腹柄節は高く薄い;胸部は頭部とほぼ同色
⑮全体的に暗褐色(胸部は頭部・腹部に比べて多少淡色になる場合は多い);腹柄節の頂部はより鈍角的で前縁は角ばる;触角柄節の長さは頭幅とほぼ同じ トビイロケアリ
検索は①~⑮までの手順になります。この15個の検索項目を調べて、トビイロケアリであることを確かめていきます。ただし、順番に見ていくと、同じ写真を何度も出さないといけないので、写真ごとにまとめて見ていきたいと思います。
まず、最初は横から写したものです。体長はImageJの折れ線近似で測定して、3.4mmになりました。図鑑によると、2.5~3.5mmなので範囲には入っています。この写真からは腹柄が1節でできていて、腹柄節が薄いこと、腹部第1節と第2節の間がくびれていないこと、それに体色が褐色であることなどを見ていきます。ほぼ書いてある通りだと思われます。
次は腹部末端の写真です。末端には火山の噴火口のような穴があき、周囲に毛が生えています(写真にはうまく写っていないのですが)。①の背板についてはこの写真ではよく分かりませんが、この項目はクビレハリアリ亜科を除外するための項目なので、たぶん、大丈夫でしょう。
次は頭部です。①の頭楯前縁には特に異常は見られません。また、大腮は三角形状で、複眼は頭部のやや後方に位置しています。さらに、頭部後縁(白矢印)は平らかやや凹んでいます。⑮の触角柄節の長さはImageJを使って測定してみました。頭部の幅1に対して触角柄節の長さは1.06になり、ほぼ同じになりました。
これは側面を拡大したものです。⑦の中胸気門は背面に並んでいます。⑩と⑭は共に立毛に関するものですが、書かれている通りだと思われます。
触角は数えてみると12節になりました。
大腮の歯は黒矢印で示した6個はすぐに分かりました。白矢印の2か所にはたぶん、歯があるのではと思うのですが、よく分かりません。⑪にはほかの項目もあるため、とりあえず、この項目はOKとしました。
これは頭部を腹側から写したものです。小腮鬚は長く、確かに頭部の胸部の関節部に届きそうです。
次は触角柄節の立毛に関してです。立毛に関しては以前も立毛の定義が分からなくて苦労しました。その時の記事を引用すると、Wilson (1955)の定義では「立毛とは鞭節を含む面内で見て、柄節の前面にあって、表面から45度以上の角度で生えている毛」となっています。今回は立毛の出る方向については気にしないで、鞭節側から見て立毛と考えられる毛を数えてみました。写真のように16本数えることができました。たぶん、25本よりは少ないことは確かでしょう。ということでこの項目もOKとしました。なお、この写真を撮るのにだいぶ苦労しました。これは生物顕微鏡で撮影したものですが、いつも撮るように対物レンズの周囲から照明しただけでははっきりしなかったので、少しだけ透過照明も加えて撮影しました。
最後は前伸腹節と腹柄節を撮ったものです。深度合成を用いたのですが、写す枚数が少なく、腹柄節があまりはっきりとは写りませんでした。それでも、前伸腹節気門はやや丸いこと、腹柄節が前後対称ではなく前側が少し丸みを帯び、黒矢印のところで角張っているように見えなくはないという感じがします。
ということで、今回のアリはトビイロケアリではないかと思われます。図鑑によると、草地から林内にかけて最も普通にみられる種だそうです。
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