詩３５８「僕はしみ」

僕は地面のしみでして。
生まれた時も死ぬ時も。
誰も知ることは無いのです。
僕も知ることは無いのです。
僕が見るものは。
空と時々靴の底でして。
あまり退屈することも無く。
下から見上げることと。
上から見下ろすことの。
どちらが楽しいかなあ。
などということを時々は。
考えたりもするのです。
僕の夢は旅でして。
偶然出会った鳩から聞いた。
５丁目の公園の。
気前のいいパンおじさんを。
ひと目見てみたいなぁ。
と本気でもなく思ったりもするのです。
空を眺めていると毎日が新鮮で。
有為も無為も無く。
あなたにあいたくなるのです。
いつ死ぬかなんて。
死んだらどこへ行くのかなんて。
知ることも悟ることもしたくない。
僕は地面のしみなのです。

赤い雲を見ましたか

五十嵐大介 『リトル・フォレスト』

森と沢と畑に囲まれた農的暮らしが主人公の不思議なマンガ。こういうのなんていうんだろう。スローフードならぬスローマンガ？いいなぁ。夢だなぁ。エゴマの葉っぱ食べてみたい。
ゆっくりじっくり読んでほしい。おすすめです。

油彩R－３

詩３５７「僕らはふたりで自由なんだ」

耳の奥が痛いくらいの。
寒い寒い夜の夜中に。
ひとり葛湯を飲みながら。
ふたりで飲む葛湯を。
妄想してる。

胸がすうっと冷え込むくらいの。
少し寒い夕方に。
橙に染まる空を見上げながら。
ふたりで見る夕焼けを。
妄想してる。

涼しさが頭の天辺に気持ちいい。
秋の高い空の下。
掘り起こしては現れる土の中の幼虫を摘み上げながら。
ふたりでする収穫を。
妄想してる。

肌に染み入る細かい空気を感じる。
もうすぐ夜明けのまだ暗いベランダで。
一匹で鳴く虫の声を聞きながら。
ふたりで聴く音楽を。
妄想してる。

僕は自由だどこへも行ける。
ひとりで自由だ何でもできる。
僕らは自由だどこへも行ける。
ふたりで自由だ何でもできる。

この角度宝物

藤原新也 『空から恥が降る』

藤原新也のホームページを見て、これは面白いなと思った。ウェブならではの規制のない物言いに加えて藤原新也の言論であるということ。この本は２００１年のページ開設からのものをまとめた本なので世界貿易センターへのテロからアフガニスタン爆撃までの過程の批判などを歯に衣着せぬ言い方で思いっきり書いている。その他のニュース、時事問題についても何ものも恐れずに書いているのが気持ちいい。世間の波に流されない意見として今どきとても貴重だと思います。全部が全部共感はできないけどね。
「リトルボーイ」「ファットマン」「デージー・カッター」そして「ピースキーパー」。どれも吐き気をもよおす名前（にアメリカがした）だが、忘れてはいけない。

油彩R－２

詩３５６「ロックンロール」

古くて鮮やかな
ロックンロールを聴きながら
世間のことや
自分のことを
ひとつひとつ
忘れていきたいな
からっぽに
とうめいに
残ったたましいだけで
つくりだす
つくりだす
好きだけが残ってる
好き以外はどうでもいい
あれ以外はどうでもいい

僕はあそこに行きたい