第37回フジサンケイクラシック最終日、単独首位でスタートした出た石川遼は4バーディー3ボギーの70で回り、通算12アンダーで2位に6ストロークの差をつけて今季3勝目をあげた。これでツアー通算4勝目。賞金2200万円を獲得して、今期賞金ランキングのトップに立った。私は久しぶりに、テレビで石川遼の姿を見た。赤と白のウエアを着こなし、とても落ち着いたプレーだった。とても、17歳とは思えないプレーであり、試合後のインタビューだった。ジャンボ・尾崎が登場した時より、格好いいような気がした。
一方、女子ゴルフは、23歳の諸見里しのぶが今季5勝目をあげて、賞金を今期1億円にのせた。女子の方は、宮里藍や横峯さくらの若手がツアーを盛り上げ、男子ツアーより、人気が高く、それは当然賞金に反映している。日本の女子ゴルフツアーは、アメリカの女子ツアーより、賞金はいいくらいで、韓国の選手たちもかなり日本で活躍している。日本の男子ツアーは、アメリカツアーと比べると1桁以上の違いがある。それだけ、日本ツアーとアメリカ-ツアーの力の差があると言ってもいいかもしれない。
しかし、日本の男子ツアーにも、石川遼に続く若手の選手がもっと増えてくると、もっと面白くなり、活性化するに違いない。青木功、ジャンボ・尾崎、中島常幸らが作っていた、日本の男子ツアーの黄金時代は、やはり、彼らの個性に支えられていたと思う。スポーツには、スターがいなければならない。スターがいて、そして、そのスターのライバルが現れ、苦労しながらも最終的にはスターは勝たなければならないのだ。今のところ、石川遼のライバルは先輩たちだが、同世代や自分より年下のライバルが現れてきて、本当に石川遼の輝きが増してくる。
初日は、片山晋呉、丸山茂樹と一緒にまわり、彼らよりスコアがよく、4位だった。2日目からは、常に首位を守り、最終日では、2位に2打差のスタートだったが、終わってみれば6打差をつけて優勝していた。私は、最終15ホール目から石川のプレーを見た。昨年見た石川とはまったく別人だと思った。とにかく、安心して見ていられた。逆に、石川を追うべき2位以下の選手たちがあまりにあっけなく、ボギーをたたいていたが、彼らのフォームや仕草を見ていると、そうなってしまうのが当然のように、何となくぎこちなく、不安定な印象だった。失礼かもしれないが、石川と同じ組で回っていた久保谷健一と武藤俊憲は、本当に脇役という感じだった。
私たちは、スポーツを観戦している時、スターに感情移入しながら見ている。つまり、そうした感情移入できるようなスターがいないと、スポーツを見ていても楽しくない。私たちには、ミラーニューロンがあり、スポーツ選手の動きを自分の動きとしてイメージして見ている。つまり、脳の中では、あたかも自分がそうした動きをしているかのように思って見ているのだ。私たちは、石川遼のティーショットを見ながら、できるだけ遠くまで飛ばそうと思って、彼のスイングを追っている。また、絶対に入れるつもりで、パターを動かし、ボールの行方を目で追う。そして、入った時に、快感を覚える。あたかも、自分がそれをやっているかのように。
これは、政治家たちの姿を見ている時もそうかもしれない。自民党の小泉純一郎が首相だった時、多分私たちの多くは、スターを眺めるように、彼の行動や言葉を、眺め、聞いていた。彼が、「自民党をぶっ壊す」と言った時、私たちは、自民党に総裁であるにも関わらず、彼に喝采を送った。「政権交代でしか、実現できない日本がある」というスローガンを掲げて、その言葉だけで、実際に政権交代をさせてしまった、民主党の鳩山由紀夫が、小泉純一郎に代わるスターになれるかどうかは不明だが、可能性がないわけではない。そして、おそらく、国民は、いい悪いは別にして、おそらく鳩山にスターであることを期待しているに違いないと思われる。スターになることが悪いことではない。どんなスターになるかが、問題だ。
しかし、もちろん、政治はゴルフとはまったく違った世界である。よりよい政策とそれを実現できる力があればいい。スターなどいらないと言えば言える。鳩山政権の成立は今月の16日が予定されているが、今、着実に人事が決まりつつある。それだけを見ていると、自民党の党と政府人事と比べて、とても充実しているように見える。確かに彼らは、今まで野党にあり、政府自民党を批判していたので、より鋭く見えるのかもしれない。いずれにしても、現在の政治経済構造が直面している問題は、1人前の与党の政策のせいだけで生み出されたわけではない。むしろ、彼らがやろうとしたことがあまりにも中途半端だったという側面もあった。そのことよくよく理解して、自分たちの一挙手一投足が、今、最も注目されているのだと言うことしっかりと自覚して、日本を変えてもらいたいものだ。