電脳くおりあ

Anyone can say anything about anything...by Tim Berners-Lee

2023年の三つの衝撃

2023-12-31 12:13:51 | 政治・経済・社会
 2023年に私に起こった精神的な三大事件は、ChatGPTの登場、エマニュエル・トッド著『我々はどこから来て、今どこにいるのか?』(上下巻)の読了、そして柄谷行人が前年末に「バーグルエン哲学・文化賞」を受賞し、その後すぐに『力と交換様式』が出版されたことだ。

 ChatGPTについては、意識がないのに言葉を話せるという事実に驚いた。生成AIが身近になり、誰でも使えるようになったことも衝撃的だった。その後、今井むつみと秋田喜美の共著で『言語の本質』という本が出た。AIでは記号の身体接地問題が解決できないと指摘されていたが、むしろ接地していないにもかかわらず、会話ができるということに驚いた。『言語の本質』は良い本で、改めて言語と意識について考えるのが面白くなってくる。勿論、それだけでなく、AIをめぐっては、世界の競争と戦いも起こる可能性さえあると思われる。AIは、人間の味方になるのか、それとも敵となるのか、いろいろ考えさせられた1年だった。

 トッドについては、彼の家族類型論で現在の世界の構造が説明できるところがすごい。直系家族型である日本、ドイツ、韓国、ノルウェーなどが現代社会における似た特性を持っている。『我々はどこから来て、今どこにいるのか?』(下巻)では、わざわざ第16章に「直系家族型社会──ドイツと日本」という1章を設けて、ドイツと日本を比較している。それによれば、現在、日本とドイツは人口減少に対する対策で苦慮している。ドイツは移民の活用を検討しているが、日本は内向きの姿勢を取り、高度経済成長から一転して脱成長に直面しているという。確かに、ドイツと日本の今後がどうなるのか、またどうあるべきかを考える必要があると思った。

 最後に、柄谷行人は、宗教の力と本質について教えてくれた。世界的に認められ、英語で読まれ評価される日本人の思想家がいるということに、私は誇りを感じている。マルクスの再評価が盛んに議論されている中、柄谷行人はマルクスをどのように超えるかについて一貫して考えてきた。受賞の報を聞いて、読んでいなかった、『世界史の構造』、『帝国の構造』を直ぐに読んだ。そして、その他の本も、読み返してみた。彼の思考は私に考える基準を教えてくれたように思う。。トッドの家族論と共通する点もあり、フランスと日本の思想家の最先端の考え方が興味深い。

 実は、年末になった、またブログを始めようと思ったのは、これら3つのテーマについていろいろ考えていて、その気持ちが強くなったからだ。つまり、インプットだけでなく、個人的なアウトプッもやってみるべきだと思うようになった。ウクライナ問題、パレスチナ・イスラエル問題、さらにグローバルサウスの内戦や飢餓問題など、エマニュエル・トッドによれば、「第三次世界対戦はもう始まっている」という状況になっている。目に見える戦争だけでなく、目には見えないところで、いくつかの陣営ができ、目に見えない戦争が始まっていると思われる。

紙の年賀状を終了すると書いた2024年の年賀状

2023-12-25 17:07:14 | 日記
 年賀状については、今年を最後にするつもりだ。そのために、その旨、2024年の年賀状に書いた。私も時代の流れに合わせて、紙の年賀状は、もう終わにしてもいいと思ったからだ。勿論、日本人の人間関係から難しい問題もありそうだが、その点は、割り切ることにした。

 折しも、郵便料金の改訂のニュースが流れてきた。かなりの値上げになっている。しかし、これだけ値上げしても、直ぐに、赤字に成ってしまうそうだ。つまり、システムとして、手紙やハガキの配達というのは、非常に非効率的な仕事なのだということだと思う。ある意味では、インターネットとスマホの普及のせいでもあるが、物流の経費がいちばんの理由だろう。人件費の高騰、あるいは、人不足だ。固定電話が使われなくなり、電話ボックスもほとんどなくなってしまった。多分、駅には、どこかにまだ残っているものあるようだが。それと同じように、紙の通信はこれから、変わっていくものと思われる。

 ダンバー数という概念がある。ダンバー数は、イギリスの社会人類学者であるロビン・ダンバーが、1992年に発表した論文「The Social Brain Hypothesis」の中で提唱した概念である。ダンバーは、平均的な人間の脳の大きさを計算し、霊長類の結果から推定することによって、人間が円滑に安定して維持できる関係は150人程度であると提案した。そして、ダンバー数は、新石器時代の村落におけるコミュニティの人数や、軍隊における中隊の人数、効率よく仕事ができる組織の人数、などが150人程度であることから、人間の脳の構造と関係があるとされている。私の年賀状は、多いときは250枚だったが、今では100枚余になっている。まあ、私の人間関係もダンバー数に合っていることになる。

 人によっては、年賀状がなくなるというのは寂しいことだと思うかもしれないが、スマホ時代の私たちは、多分、スマホを通じて同じような数の人間関係をつくっていると思われる。最も、SNSのフォロー数を増やそうとしている人は、果てしない野望を持っているうようだが、このブログは私の覚書のようなものなので、ダンバー数ぐらいでとしよう。実際、しばらく(とても長いが)、投稿していなかったにもかかわらず、1週間のアクセス数はそのぐらいはあった。これからは、残り少ない人生を有意義に過ごしていきたい。まず、ブログから。